新幹線「グランクラス」に、デッキに溢れた“自由席の立ち客”が侵入! チラチラ見られ「気持ち悪い」「何のためのグランクラス?」SNS投稿に「助け合いが大事」の意見も…2倍近い運賃なのに我慢する必要はある?
しかし、ゆったりした座席が魅力の「グランクラス」チケットを買ったのに、デッキに溢れた自由席の立ち客からチラチラと見られ、まったく落ち着かなかったという経験談がネット上に出ているようです。
お盆や年末年始などの繁忙期に新幹線が混雑する中、SNS上では「立ち客と指定席客」の構図で論争が起きています。新幹線の乗車ルールと支払っている対価の観点から見ると、どのように整理できるのでしょうか。
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント
新幹線の座席で必要なのは「助け合い」か「対価」か?
「新幹線のグランクラスに乗っていたら、デッキにいる自由席の立ち客にずっと中を覗き込まれて気分が悪かった」
「高いお金を払っているのに、なぜあんなにジロジロ見られなければならないのか」
といった内容の書き込みが、先日SNS上で大きな話題となりました。
このような投稿に対し、「ルール違反なのだから車掌に言うべき」という声が集まる一方で、「混んでいる時くらい我慢する、席を譲るなど助け合いが大事なのでは?」という意見も寄せられました。
指定席やグランクラスなど、対価を払って買った席を「助け合い」精神で譲る必要はあるのでしょうか。
「グランクラス」に乗るため、乗客が支払っている金額を確認してみましょう。ここでは上越新幹線で「長岡駅」から「東京駅」まで乗車した場合の正規料金(通常期・大人片道)を参考とします。
普通車自由席:8800円(乗車券5060円+特急料金3740円)
グランクラス:1万6140円(乗車券5060円+特急料金3740円+グランクラス料金7340円)
その差額は「7340円」となり、グランクラスは自由席の約2倍に近い金額となります。
グランクラスの乗客は、「単に目的地に着くこと」だけでなく、「静かな空間と上質な座席、そこに確実に座れる権利」に対してこの対価を支払っており、ビジネスの疲れを癒やすための必要経費として自腹を切っている方も多いと思われます。
これほどの金額差がある以上、「かわいそうだから立ち席の人に譲る」という選択は、心理的な意味でも取りづらいでしょう。在来線のような通常の列車の座席を、立っている老人や妊婦に譲るというような行為とは意味が異なります。
「グランクラスのデッキ」は、自由席の乗客は立入禁止
そもそも「自由席のチケットしか持っていない乗客が、グランクラスのデッキに立つ」こと自体が、本来はルール違反です。新幹線で自由席が満席の場合、自由席特急券を持った乗客が「普通車指定席」のデッキや通路に立つことは、混雑状況によって車掌の裁量で認められるケースがあります。
また、「立席特急券」という、全席指定席の特急や新幹線が満席の際、数量限定で発売される「座席を使わず、デッキや通路で立って乗車するため」の特急券も存在します。
しかし、グリーン車やグランクラスについては「(デッキ・通路を含む)車両内に立ち入るためには、特別車両券の購入・所持が必要になる」というルールが、JRの旅客営業規則に定められています。
そのため本来は、グランクラスに有効な特別車両券を持っていない乗客は、混雑時であってもグランクラスのデッキに立つことは許可されていません。今回話題になったように、グランクラスのデッキに自由席の立ち客がいたのであれば、立ち客のほうがルール違反・マナー違反の状態にあります。
ルール上、席を譲る必要はない。揉めた場合は車掌を呼ぶべき
結論として、グランクラスなど「特別車両券」を購入・所持して着席している乗客は、自由席の立ち客に席を譲る必要はありません。規則上、何の問題もない正当な権利だといえます。
「助け合い」という言葉は美しいですが、それはあくまで対等な条件や、予期せぬ緊急事態(急病人が出た等)において発揮されるべきものです。
筆者の感覚では、在来線の共用座席に座っている乗客が、(列車に乗車するために同じ金額を負担している)目の前に立っている妊婦などに席を譲る行為であればそれは「助け合い」の範疇だと思います。
一方でグランクラスのような特別料金を支払って得た座席においてまで席を譲ってしまうのは、「助け合い」とは全く別の行為であり、座席を譲る人も譲られる人もルール違反を犯している状態にする、不適切な行動だと考えます。
もし新幹線の車内でこのような状況に遭遇し、不快な思いをした場合は、直接注意してトラブルになるのを避けるため、電車の運営会社の乗務員に状況を伝え、必要な対応を求めるのがよいでしょう。
まとめ
新幹線を利用するには乗車券に加え、座席種別に応じた特急券や特別車両券が必要です。自由席特急券だけを持つ乗客は、たとえデッキであっても原則としてグランクラスの車両を利用できません。
グランクラスの乗客が自由席の立ち客に席を譲ってしまえば、それは「助け合い」の範囲を超えて、席を譲る人と譲られる人の両者がルール違反の状態になる、不適切な行為になってしまいます。
特別座席に座る権利を巡って乗車中のトラブルが発生しそうな場合は、速やかに車掌を呼ぶなどして、ルールに則った対応をしましょう。
出典
JR東日本 旅客営業規則
執筆者 : 山田圭佑
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント

