長年住んでいる賃貸で「風呂場をリフォームする代わりに家賃を1万円上げてもいい?」と大家さんにお願いされました。リフォームを断って住み続けても問題ないのでしょうか?

配信日:
この記事は約 4 分で読めます。
長年住んでいる賃貸で「風呂場をリフォームする代わりに家賃を1万円上げてもいい?」と大家さんにお願いされました。リフォームを断って住み続けても問題ないのでしょうか?
長年暮らしている賃貸住宅で、大家さんから「浴室を新しくする代わりに家賃を月1万円上げたい」と提案されても、今の浴室に不満がなければ受け入れたくないこともあるでしょう。
 
浴室を新しくするだけの任意のグレードアップであれば、大家さんから提案された条件に必ず同意しなければならないわけではありません。ただし、水漏れや設備の故障など、建物を使用するために必要な修繕の場合は別です。また、リフォームへの同意とは別に、大家さんには一定の条件で家賃の増額を請求できる制度があります。
FINANCIAL FIELD編集部

ファイナンシャルプランナー

FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。

編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。

FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。

このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。

私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。

単なる設備のグレードアップなら提案を断れる場合がある

国土交通省の令和4年の資料(民間賃貸住宅に関する相談対応事例集)によると、全国の消費生活センターなどには、「賃貸住宅」に関する相談が年間約3万〜4万件も寄せられています。
 
相談の現場で日頃よく受ける内容(複数回答)を同資料内で調べてみると、以下のような項目が上位を占めています。

・修繕・改善に関する相談:28.8%
・家賃(賃料や滞納など)に関する相談:15.9%

「お風呂リフォーム」や「家賃の引き上げ」は、多くの人が直面している代表的な賃貸トラブルと言えるでしょう。
 
さて、今回のケースを考えてみます。
 
たとえば、現在の風呂場は問題なく使えているものの、大家さんが「古く見えるので最新のユニットバスへ交換したい。代わりに家賃を8万円から9万円にしたい」と提案したとします。
 
このような場合、「新しい浴室+家賃1万円増」という新しい条件について、借主が必ず受け入れなければならないわけではありません。
 
賃貸借契約は貸主と借主の合意を基本としているため、単なるグレードアップを理由に契約内容の変更へ同意を求められたのであれば、「今の設備で構わないので、現在の条件で住み続けたい」と伝えることはできます。
 
国土交通省は、賃貸借契約書のひな型である「賃貸住宅標準契約書」の解説で、民間賃貸住宅の契約は貸主と借主の合意を基本とするものだと説明しています。
 
「リフォームを断ったから、来月すぐ出ていってください」と単純に退去させられるわけでもありません。通常の建物賃貸借では、貸主による更新拒絶や解約にも借地借家法上の要件があります。
 
ただし、自分の契約が定期借家契約である場合などは扱いが異なるため、契約書を確認しましょう。
 

水漏れなど必要な修繕なら工事そのものを拒めないことがある

注意したいのは、「リフォーム」という言葉でも、実際には「必要な修繕」であるケースです。
 
民法では、賃貸人は賃貸物を使用するために必要な修繕をする義務を負います。また、賃貸物の保存に必要な行為を貸主が行おうとするとき、借主は原則として拒むことができません(第606条)。
 
たとえば浴槽から水漏れしている、給排水管が劣化して階下への漏水が心配される、浴室の壁が腐食して危険な状態にある、といったケースです。
 
こうした工事まで「古い風呂のままでいいから絶対に入室させない」と拒み続けるのは難しい場合があります。
 
したがって、大家さんから提案されたら、「これは設備を新しくするためのリフォームですか。それとも故障や劣化を直すために必要な修繕ですか」と聞きましょう。
 
必要な修繕なら工事には協力しつつ、「工事をしたから必ず家賃1万円アップ」という話とは分けて考えることが重要です。
 

家賃の増額請求はリフォームへの同意とは別に問題になる

「リフォームを断れば家賃も絶対に上がらない」とは限らない点にも注意が必要です。
 
借地借家法32条では、土地・建物への税負担の変化、物件価格や経済事情の変動、近隣の同種物件の家賃などと比べて現在の家賃が不相当になった場合、貸主または借主が将来に向かって家賃の増減を請求できるとしています。
 
つまり、周辺の同じような物件が月10万円なのに、自分だけ長年6万円で借りている、といった事情があれば、大家さんが家賃増額を請求する余地があります。
 
ただし、大家さんが「来月から1万円上げます」と言えば、直ちにその金額で確定するわけではありません。
 
増額について話し合いがまとまらない場合、借主は増額を正当とする裁判が確定するまでは「相当と認める額」の家賃を支払えばよいと借地借家法に定められています。ただし、最終的に増額が認められ、支払額が不足していれば、差額に年1割の利息を付けて支払う必要があります(第32条2項)。
 
そのため、増額請求を完全に無視したりするのは避けましょう。
 

まとめ

現在の浴室が問題なく使えており、大家さんから「新しくする代わりに家賃を1万円上げたい」と任意の条件変更を提案されたのであれば、その条件へ必ず同意しなければならないわけではありません。
 
「今のままで構わないのでリフォームも家賃増額も希望しません」と伝えることは可能です。
 
一方、水漏れや設備故障など建物の使用・保存に必要な工事であれば、工事そのものを拒めない場合があります。また、リフォームとは別に、現在の家賃が周辺相場などと比べて不相当なら、大家さんが借地借家法に基づいて増額を請求することもできます。
 
大家さんから提案を受けたら、「工事は必要な修繕なのか」「家賃1万円の根拠は何か」を分けて確認しましょう。長年住んでいるほど契約条件と現在の相場に差が出やすいため、書面で条件を確認してから返答することが大切です。
 

出典

国土交通省 民間賃貸住宅に関する相談対応事例集(再改訂版)
e-Gov 法令検索 民法
e-Gov 法令検索 借地借家法
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

  • line
  • hatebu

LINE