高齢の父が「もう契約してきた」と高額な買い物の書類を見せてきました。父は少し認知症がではじめているのですが、本人の署名後は取り消せないのでしょうか?

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高齢の父が「もう契約してきた」と高額な買い物の書類を見せてきました。父は少し認知症がではじめているのですが、本人の署名後は取り消せないのでしょうか?
高齢の父が高額な契約書へ署名していても、「署名済みだから絶対に取り消せない」とは限りません。契約した時点で、父が商品の内容や価格、支払いによって生じる結果を理解できないほど判断能力を失っていた場合、その契約自体が無効になる可能性があります。
 
また、訪問販売や電話勧誘販売などではクーリング・オフを利用できることもあります。ただし、認知症の診断があるだけで自動的に無効になるわけではありません。まず契約書と契約した経緯を確認し、早めに販売会社や消費生活センターへ相談しましょう。
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認知症でも署名しただけで契約が必ず有効になるわけではない

民法では、法律行為をした時に「意思能力」がなかった場合、その法律行為は無効になると定めています(第3条の2)。
 
意思能力とは、簡単にいえば、自分が何を契約し、その結果どのような負担が生じるのかを理解して判断する能力です。
 
たとえば、50万円の商品を買う契約なのに、父が「無料でもらえる物だと思った」「毎月いくら支払うのか理解していなかった」など、契約の意味を理解できない状態だった場合は、意思能力がなかったとして契約の無効を主張できる可能性があります。
 
一方、「軽度の認知症と診断されている」という事実だけで、すべての契約が無効になるわけではありません。認知症でも、簡単な買い物なら十分理解して判断できる人もいます。
 
さらに、契約内容によって求められる判断能力も変わります。数百円の日用品を買うことと、何百万円もの金融商品やリフォーム契約を結ぶことでは、理解しなければならない内容が違います。
 
消費者庁も、認知機能が低下した高齢者の契約では、後から家族が問題に気づいても、契約時点で判断能力が不十分だったことの証明が難しいケースがあるとしています。
 
また、同庁によれば、認知症等の高齢者(※)の消費生活相談件数は、近年毎年8,000件台で推移(2023年3月までの登録分)しており、相談における平均契約購入金額や平均既支払額が高齢者全体よりも高額になっていることから、「認知症等の高齢者の消費者被害はより深刻であるといえます」としています。
 
※認知症等の高齢者:トラブルの当事者が65歳以上で、精神障害や知的障害、認知症等の加齢に伴う疾病等、何らかの理由によって十分な判断ができない状態であると消費生活センター等が判断した高齢者
 

訪問販売などなら認知症とは別にクーリング・オフできる場合がある

契約の取り消しを考えるときは、「どこで、どのように契約したか」も重要です。
 
たとえば事業者が自宅を訪問して勧誘した訪問販売なら、原則として法律で定められた書面を受け取った日から8日以内はクーリング・オフができます。
 
電話勧誘販売などにも同様の制度があります。この場合は、「父に認知症があり意思能力がなかった」と証明できなくても、クーリング・オフの条件を満たせば契約を解除できる可能性があります。
 
反対に、父が自分から店舗へ行って商品を選び、その場で購入した一般的な店頭販売には、原則としてクーリング・オフ制度はありません。そのため、契約書を見つけたら、契約日、販売方法、商品名、金額、支払方法を確認しましょう。
 
なお、販売員から「今日だけ安い」「家族へ相談すると買えなくなる」などと、事実とは違う説明をされたといった事情があれば、特定商取引法による「意思表示の取消し」ができる可能性があります。
 

契約時の父の状態が分かる資料を早めに残す

高額な契約で意思能力を争う可能性があるなら、時間がたつ前に資料を集めましょう。
 
契約書だけでなく、父が契約した日の状況をメモします。そのころ医療機関を受診していたなら、診断時期や症状も確認します。
 
たとえば契約日の前後に「金額の計算ができなくなっていた」「同じ質問を何度もしていた」「家族の名前や日付が分からない状態だった」などの事情があれば、判断材料になる可能性があります。
 
販売会社へ連絡する際は、感情的に「認知症の老人に売るなんて詐欺だ」と決めつけるより、「契約時に内容を理解できる状態ではなかった可能性があります。契約経緯を確認したいです」と伝えたほうが話を進めやすいでしょう。
 
解決しない場合は消費者ホットライン「188」へ相談できます。
 
また、今後も高額な契約を繰り返す心配があるなら、成年後見制度を検討する方法もあります。家庭裁判所が後見開始を決定した場合、成年被後見人が自分で行った法律行為は、日常生活に関するものを除いて取り消すことができます。
 
ただし、後から成年後見制度を利用しただけで、過去の契約が自動的に取り消されるわけではありません。今回の契約については、契約当時の状態を別に確認する必要があります。
 

まとめ

父が高額商品の契約書へ署名していても、その時点で契約の意味や結果を理解できる意思能力がなかったのであれば、契約が無効になる可能性があります。
 
ただし、認知症があるだけで自動的に契約を取り消せるわけではありません。重要なのは契約した時点での父の判断能力です。
 
また、訪問販売や電話勧誘販売などなら、意思能力の問題とは別にクーリング・オフを利用できる場合があります。
 
契約書を見つけたら放置せず、契約日、販売方法、金額、父の当時の状態を確認してください。数日違うだけでクーリング・オフ期限を過ぎる場合もあります。早めに販売会社と消費生活センターへ相談することが、被害を広げないための最も重要な対応です。
 

出典

e-Gov 法令検索 民法
消費者庁 令和5年版消費者白書目次 第1部 第2章 第2節 (3)高齢者の性質と消費者トラブルとの関連
消費者庁 特定商取引法ガイド 特定商取引法とは
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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