引っ越し当日、業者から「トラックを家の前まで入れられないので追加料金がかかります」と言われました。見積もり時に説明がなくても、その場で払う必要があるのでしょうか?
しかし、見積書にない追加料金だから必ず払う、または必ず払わなくてよい、と一律には判断できません。
現在の標準引越運送約款では、見積額を超えるように修正できるのは、荷送人側の責任によって見積額を計算する前提に変化が生じた場合に限るというルールがあります。まず追加作業の理由と料金の内訳を確認しましょう。
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トラックが入れないと「横持ち」など追加作業が必要になることがある
住宅前の道が狭く、大型トラックが近くまで入れない場合、離れた場所にトラックを停め、家とトラックの間を小型車などで何度も運ぶことがあります。
こうした作業は一般に「横持ち」などと呼ばれ、通常の搬出・搬入より人員や時間、車両が余計に必要になる場合があります。そのため、条件によって追加費用そのものが発生することは不自然ではありません。
たとえば、見積もり時に利用者が「家の前まで4トントラックが入れます」と説明していたものの、実際には車両が進入できず、小型車を追加で用意することになったとします。
見積額を計算した前提が利用者側の説明によって変わったのであれば、追加料金が認められる可能性があります。また、見積もり後に道路工事が始まり、利用者がその事実を知っていたのに伝えていなかったケースなども、事情を確認する必要があります。
業者の見積もりミスなら追加料金を当然に払うとは限らない
反対に、業者が事前に自宅へ訪問して見積もりを行い、道路状況も確認していたのに、当日になって「やはりこのトラックでは入れません」と言われた場合は話が違います。
2025年4月施行の標準引越運送約款では、見積もり後に内容の変更が生じ、実際の運賃・料金が見積額を超える場合、荷送人の責任による事情で見積額算出の基礎に変化が生じたときに限り、実際の料金へ修正するとしています(第19条4項2号)。
つまり、利用者側(荷送人)に原因がなく、単に業者が道路幅を見誤ったというだけなら、「当日追加作業が必要になったから全額払ってください」と当然に増額できるとは限りません。
もっとも、実際に適用される約款が標準引越運送約款ではなく、国土交通大臣の認可を受けた事業者独自の約款である場合もあります。そのため、まず見積時や契約時に提示された「約款」と「見積書」を確認しましょう。
見積書には、運賃等の合計額や内訳、作業内容などが記載されます。追加料金を求められたら、「見積書のどの条件が変わり、この金額になったのですか」と聞くことがポイントです。
その場で言われた金額を確認せず支払わない
国民生活センターは「引越サービス」に関する相談件数の推移を公表しています。2023年度は2128件、2024年度は2344件、2025年度は2703件と年々増加傾向にあります。2026年度は5月31日時点で390件と、前年ペース(前年同期317件)を上回っています。
こうした背景の中で、同センターは、引っ越しの追加料金に関するトラブルへ注意を呼びかけています。実際に、見積もり時にエアコン作業の追加費用を説明されず、引っ越し当日になって請求されたという相談事例も紹介されています。
当日に追加料金を求められたら、作業を始める前に金額と理由を書面やメールで確認しましょう。たとえば「小型車追加1台1万円」「作業員追加2人1万5000円」など、何にいくらかかるのかを明確にしてもらいます。
自分が伝えるべき情報を伝えていなかったなら、追加料金について話し合います。一方、訪問見積もりで業者自身が道路を確認していたなら、その点を指摘して再検討を求めましょう。
引っ越し当日は荷物を運ばなければならず、利用者側が弱い立場になりがちです。それでも「今払わなければ作業しない」と急かされた場合、領収書や請求書を必ず受け取り、後で争えるよう記録を残してください。
納得できないまま高額料金を請求された場合は、消費者ホットライン「188」へ相談できます。
まとめ
トラックが家の前へ入れず、追加車両や人員が必要になれば、追加料金が発生すること自体はあります。ただし、当日提示された金額を無条件で払わなければならないわけではありません。
現在の標準引越運送約款では、見積額を超える修正は、荷送人側の責任によって料金計算の前提が変わった場合に限るというルールがあります。業者が事前に道路を確認していたのに見誤っただけなら、追加料金の根拠を確認するべきでしょう。
逆に、利用者が道路事情を伝えていなかったなど、自分側に原因がある場合は追加費用を負担する可能性があります。
引っ越し当日に揉めないためには、見積もり時に「トラックは家の前まで入れますか」「横持ち費用が発生する可能性はありますか」と確認しておくのが有効です。
当日請求された場合も、金額ではなく「なぜ見積もりから条件が変わったのか」を確認してから対応しましょう。
出典
国土交通省 標準引越運送約款(平成二年運輸省告示第五百七十七号)
独立行政法人国民生活センター 引越サービス(各種相談の件数や傾向)
独立行政法人国民生活センター 引越トラブルにご注意(発表情報)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
