「タッチパネル式の薬局」で苦戦する老人に、店員の「みんな自分でやってますよ」の冷たい一言…SNSでは「人員削減のしわ寄せなのに」の同情と「甘やかすな」の賛否―“高齢者がメイン顧客”なら経営面でも悪手?
今回SNSで賛否を呼んだのは、薬局のタッチパネルで困っていた高齢女性に対する店員の一言です。本記事では投稿の内容と反応を紹介したうえで、セルフ化が進む背景と、操作が苦手な人を取りこぼさない仕組みを考えます。
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目次
タッチパネルの操作に戸惑う高齢者は少なくない
総務省が2026年5月に公表した「令和7年通信利用動向調査の結果」では、インターネットを利用している人の割合は13~69歳の各年齢層で9割を上回る一方、70~79歳では71.9%、80歳以上では37.1%にとどまっています(図表1)。
同じ調査で、スマートフォンによるインターネット利用の割合を見ると、60~69歳の80.9%に対し、70~79歳は55.1%、80歳以上は21.7%です。
図表1
総務省 令和7年通信利用動向調査の結果より筆者作成
画面をタッチして受付や会計を済ませる操作は、スマートフォンに慣れた人なら難しくないでしょう。ただ、普段デジタル機器に触れる機会が少ない世代が、初めて見る画面を前に手が止まってしまうのも無理はないかもしれません。
SNSで話題になった薬局での出来事と寄せられた反応
話題の発端は、2026年8月にX(旧Twitter)に投稿された薬局での出来事です。
受付がタッチパネル式の薬局で、操作に困っていた高齢の女性がしばらく自力で試したのちに店員へ助けを求めたところ、「自分でやってくださいよ、みんなやってますよ」と突き放されたといいます。
見かねた投稿者が代わりに受付を済ませると、その店員が謝りに来たというのが投稿のあらましです。
この投稿には、店員の対応への批判が多く寄せられました。「自分が同じ対応をされたら、その店にはもう行かない」といった意見に加え、「機械を導入して人員を減らした体制の問題で、しわ寄せが利用者に向かっている」という指摘が代表的です。
一方で、店員側に理解を示す声も少なくありません。「一度手伝うと、次からは試そうともせずに店員を呼ぶようになる」「何度説明しても覚えない人もいる」など、現場の疲弊を踏まえて甘やかすべきではないとする意見です。
セルフレジやタッチパネルが増える背景は人手不足と人件費の上昇
店側がセルフ化を進める背景には、人手不足があります。
厚生労働省の労働経済動向調査(令和8年5月調査)によれば、労働者が「不足」と答えた事業所の割合から「過剰」と答えた割合を引いた労働者過不足判断D.I.は、正社員等で+47ポイント、パートタイム労働者で+27ポイントと、不足が続いている状況です。
人件費も上昇傾向です。
地域別最低賃金の全国加重平均は、平成28年度の823円から令和7年度には1121円へと、9年間で298円上がりました(図表2)。さらに、2026年7月に示された令和8年度の改定の目安どおりに引き上げられれば、全国加重平均は1176円になります。
図表2
厚生労働省 令和8年度地域別最低賃金額改定の目安についてより筆者作成
国も、こうした企業の省力化を後押しする立場です。中小企業庁の「中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)」は、人手不足に悩む中小企業を対象に、券売機や自動精算機といった「店舗・施設向けセルフ対応型機器」などの導入費用の2分の1を補助する制度です。
セルフ化は、人手不足と人件費上昇への対応策として広がっているといえるでしょう。
苦手な人へのフォローがなければ顧客を取りこぼすことに
セルフ化で人件費を抑えられたとしても、操作できずに帰ってしまう人が出れば、その分の売上は失われます。
特に薬局は、高齢の利用者が多い業態です。厚生労働省がまとめた令和5年度の国民医療費の概況を見ると、薬局調剤医療費8兆4563億円のうち、65歳以上が占める割合は54.4%です。
人口1人当たりでは、65歳未満の4万3800円に対し、65歳以上は12万7000円と約2.9倍の開きがあります。
つまり、薬局にとって高齢者は主要な顧客であり、タッチパネルが苦手な人を突き放す対応は経営面から見て得策とはいえません。もっとも、人件費を減らせなければ店が続かず、結果的に地域の利用者が困る側面も否定できないでしょう。
筆者は、セルフ化そのものが悪いのではなく、苦手な人へのフォローをどう組み込むかが問われていると考えます。
操作が苦手な人も取りこぼさない仕組みづくりを
セルフレジやタッチパネル式の受付は、人手不足と人件費の上昇が続くなかで、今後も広がっていくと考えられます。
ただ、年代によってデジタル機器への慣れに差がある以上、全員に同じ操作を求めるだけでは顧客を取りこぼしかねません。
有人の窓口を一部残す、初めての人には店員が横について案内するといった仕組みがあれば、苦手な人も安心して利用できるでしょう。効率化と利用者への配慮を両立させる工夫が求められます。
出典
総務省 令和7年通信利用動向調査の結果
厚生労働省 労働経済動向調査(令和8(2026)年5月)の概況
厚生労働省 令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について
厚生労働省 令和5(2023)年度 国民医療費の概況
執筆者 : 金子賢司
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