8年間住んだ賃貸マンションの退去時に、原状回復費用「15万円」を請求されて困惑…。夫は「長く住んだのだから仕方ない」と言いますが、本当に全額負担しなければならないのでしょうか?
そこで今回の記事では、賃貸マンションで8年住んだ後に退去する際、原状回復費用に15万円を請求されたケースを例に考えていきます。
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
原状回復は「入居時の新品状態に戻すこと」ではない
まず大前提として、賃貸住宅における原状回復とは、借主が部屋を入居時とまったく同じ新品同様の状態に戻すことではありません。通常の使用によって生じた損耗や経年劣化は除かれます。
特に賃貸住宅において避けることのできない経年劣化や通常使用による損耗の修繕費用は、賃料に含まれるものとされています。
8年間住んだとするなら相応に建物や設備が古くなっているはずですが、それら自然に古くなった部分や劣化した部分のすべてを借主が負担しなければならないわけではないのです。
例えば、日焼けによる畳や床の変色、自然に生じた壁紙の色あせ、家具を置いたことによる自然なへこみやヤケなどは、基本的には貸主側の負担となるのです。
8年住んでいるなら、経年劣化は考慮される
では、自然な損耗や経年劣化以外の部分、すなわち故意や過失による部分は全額借主が原状回復費用として負担しなければならないのでしょうか。
例えば、故意や過失によって壁や床に物をひっかけたり落としたりしたことで生じた、通常損耗や経年劣化を超えた傷やへこみなどです。
とはいえ、仮に賃借人が原状回復義務を負うような場合においても、経過年数は考慮されることになります。特に今回の事例のように8年間住んでいた場合であればこの点は重要になります。
具体的にいうと、設備ごとに耐用年数が定められ、耐用年数を経過すると1円になるように経年劣化が考慮されます。
例えば壁紙、いわゆるクロスについては、国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、6年で残存価値が1円になるとされています。そのため、8年経過している時点においては、とうに残存価値はなくなっているため1円となります。
ただし、故意や過失による傷がなければ、耐用年数を過ぎていても継続使用の場合は一定の範囲で請求が認められることもあるので注意が必要です。
これらの前提を踏まえ、8年住んで原状回復費用が15万円と考えると、一度不動産会社へ確認が必要といえるでしょう。
特約があればすべて有効ではない
退去費用でよく問題になるのが、ハウスクリーニング代やクロス張替え費用の特約です。契約書に「退去時のクリーニング費用含め原状回復費用は全額借主負担」と書かれている場合、一定の範囲で有効です。
ただし、特約の内容に原状回復の範囲を超える修繕や設備のグレードアップなどが含まれている場合は、そのすべてが有効と認められるとは限りません。
まとめ
退去時の原状回復費用は、経年劣化などが考慮されるため、一般的には入居期間が長いほど借主の負担が抑えられる傾向があります。ただし、8年間住んで原状回復費用が15万円かかった場合でも、その金額が高いか妥当かは、契約内容や部屋の状態、費用の内訳などによって異なります。
もし、不安な点や納得がいかない点があるのであれば、不動産会社に説明を求めて明細をもらい、そのうえで弁護士や消費生活センター、その他自治体の運営する相談窓口などへ相談することをおすすめいたします。
出典
国土交通省住宅局参事官 「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に関する参考資料
執筆者 : 柘植輝
行政書士
