子どもの習い事に年間費用をまとめて払った直後、転勤が決まりました。ほとんど通えなくても、支払い済みのお金は返してもらえないのでしょうか?
返金できるかは、英会話教室や学習塾など法律上の「特定継続的役務」に当たるか、一般的なスポーツ・音楽教室なのか、契約書にどのような中途解約規定があるかで変わります。転勤が決まったら、まず年間契約の解約条件を確認しましょう。
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
英会話や学習塾などは法律上途中で解約できる場合がある
習い事の中には、特定商取引法の「特定継続的役務」に該当するものがあります。
代表的なのは一定の内容・条件を満たす語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室などです。対象となるサービスについては、原則として、契約期間が2ヶ月を超え、契約総額が5万円を超える場合に特定継続的役務の対象になります。
契約したばかりなら、まずはクーリング・オフを確認しましょう。特定継続的役務に該当する契約では、法律で定められた契約書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、原則としてクーリング・オフできます。すでに一部の授業を受けていても、その分の料金や違約金を支払う必要はなく、支払済みのお金は返還されます。
一方、8日を過ぎた後でも、特定継続的役務に当たれば、契約期間中なら理由を問わず中途解約できます。ただし、クーリング・オフとは異なり、すでに受けた授業の料金や法律で認められた範囲の解約費用を精算する必要があります。
そのため、「転勤は自己都合だから一切返金しません」と必ず言えるわけではありません。
では、クーリング・オフ期間を過ぎて中途解約する場合、返金額はどのように決まるのでしょうか。
たとえば対象となる学習塾を年間36万円で契約し、3万円分の授業を受けた直後に中途解約したとします。
特定商取引法では、学習塾がサービス開始後の中途解約時に請求できる金額について、すでに提供した授業の対価に加え、「2万円または1ヶ月分の授業料相当額のどちらか低い額」までという上限が設けられています。
この例では、1ヶ月分の授業料相当額は3万円なので、解約時に加算できる上限は、より低い2万円です。したがって、支払済みの36万円から、受講済みの3万円と解約費用2万円を差し引いた31万円が返金される計算になります。
語学教室の場合も、提供済みサービス代に加えて、「5万円または契約残額の20%のどちらか低い額」までと上限があります。
つまり、法律の対象になる習い事では「年払いしたから残り11か月分も全部没収」とはならない可能性があります。
スポーツや音楽など対象外の習い事は契約規約を確認する
一方、すべての習い事が特定商取引法の中途解約ルールの対象ではありません。
たとえば一般的なピアノ教室、スイミング、サッカー教室、ダンススクールなどは、通常、特定継続的役務として指定されているサービスには含まれません。
ただし、特定継続的役務に当たらない習い事でも、訪問販売や電話勧誘販売など別の取引類型に該当すれば、クーリング・オフが認められる場合があります。一方、自ら教室へ出向いて申し込んだ通常の契約などでは、法律上のクーリング・オフ制度が当然に適用されるわけではありません。
この場合は、まず入会時にもらった規約や申込書を確認します。
「年度途中の退会は、退会希望月の前月10日までに申請」「年会費は返金しない」「年間授業料の未受講分は月割りで返金する」など、教室ごとにルールが決められていることがあります。
転勤や病気など、やむを得ない事情に限って返金を認める教室も考えられます。「規約に返金不可と書いてあるから絶対に一円も戻らない」とも限りません。
消費者契約法第9条では、契約解除に伴う違約金などについて、同種の契約で事業者に生じる「平均的な損害」を超える部分は無効になるとされています。
ただし、実際にどの金額が平均的な損害を超えるかは個別判断になります。
転勤が決まった時点ですぐ解約の連絡をする
返金を希望するなら、「どうせ来月から行けないから」と何か月も放置しないことが重要です。教室によっては、退会手続きをした翌月末まで料金が発生するルールがあります。
たとえば10月から転勤することが8月に分かったなら、8月のうちに連絡しましょう。その際、「年間24万円のうち、利用済みの授業はいくらで、解約手数料はいくら、返金額はいくらになりますか」と内訳を書面で出してもらうと分かりやすくなります。
教材など関連商品をまとめて購入している場合は、授業料と教材費を分けて確認してください。特定継続的役務に伴って購入した教材では、本体契約とあわせて中途解約できる場合もあり、使用状況などによって精算方法が変わります。
また、全国展開している教室なら、転居先の教室へ移籍できる場合もあります。
子ども本人が続けたがっているなら、返金だけでなく「転勤先の教室へ残り期間を移せないか」も相談してみましょう。
事業者と話し合っても、未受講分を一切返金しない理由が分からない場合は、消費者ホットライン「188」へ相談できます。
まとめ
習い事の年間費用を先払いした直後に転勤しても、未受講分が必ずすべて返金されないわけではありません。
語学教室や学習塾など一定の「特定継続的役務」に該当する契約では、契約直後ならクーリング・オフができる場合があります。また、その期間を過ぎても契約期間中は理由を問わず中途解約でき、事業者が請求できる金額にも法律上の上限があります。
一方、スポーツや音楽など対象外の習い事では、教室の退会・返金規定が重要になります。
まず契約書を確認し、転勤が決まった時点ですぐ教室へ連絡しましょう。「払った金額」「受講済みの金額」「解約費用」「返金額」を分けて確認すると判断しやすくなります。全国展開の教室なら転居先への移籍も含めて相談すれば、支払った年間費用を無駄にせずに済む可能性があります。
出典
消費者庁 特定商取引法ガイド 特定継続的役務提供
消費者庁 消費者契約法 逐条解説
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
