「日本はいま好景気」って本当? 景気拡大は戦後最長の可能性も、家計では実感しにくいワケ
今回は、いざなみ景気との比較や足元の経済指標から、なぜ「景気拡大」とされていても私たちが好景気を実感しにくいのかを見ていきます。
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目次
「いざなみ景気」は73ヶ月続いた戦後最長の景気拡大
内閣府の景気基準日付では、2002年1月を「谷」、2008年2月を「山」とする景気拡大局面が73ヶ月続きました。これが一般に「いざなみ景気」と呼ばれる期間です。それ以前の戦後最長だった「いざなぎ景気」の57ヶ月を上回ったことから、この名称で呼ばれるようになりました。
当時は輸出や設備投資などが景気をけん引し、大企業を中心に企業業績が改善しました。
ところが、景気拡大がこれほど長かったにもかかわらず、賃金や個人消費の伸びは限定的でした。そのため、当時も「実感なき景気回復」と表現されることがありました。
現在の状況には、このいざなみ景気と似た面があります。
2026年7月まで続けば景気拡大は「74ヶ月」
内閣府が2026年9月7日に公表した7月分の景気動向指数では、景気の現状を示すCI一致指数が前月から上昇し、基調判断は「改善」とされています。現在、内閣府が正式に設定している直近の景気の「谷」は2020年5月です。景気の谷と山は、一致指数を構成する経済指標などをもとに、景気動向指数研究会での議論を経て設定されます。
仮に2020年5月を谷として、その後2026年7月まで景気拡大が続いていたと判断されれば、その期間は74ヶ月です。いざなみ景気の73ヶ月を1ヶ月上回る計算になり、「戦後最長」となる可能性があります。
ただし、現時点で戦後最長の景気拡大が正式に確定したわけではありません。最終的な景気の山・谷については、今後の内閣府の判断を待つ必要があります。
企業は好調でも「生活が楽になった」とは限らない
では、景気がこれほど長く拡大している可能性があるのに、なぜ「好景気」という実感が乏しいのでしょうか。一つの理由は、企業の好調さと家計の豊かさが必ずしも同時に改善するわけではないためです。
内閣府の2026年7月の月例経済報告では、日本経済について「緩やかに回復している」と判断しています。
企業収益にも改善の動きがあり、2026年1~3月期の経常利益(金融業・保険業を除く全産業)は前年同期比14.6%増でした。雇用情勢についても、2026年7月の完全失業率(季節調整値)は2.4%となっています。数字だけを見ると、景気は決して悪いとはいえません。
しかし、企業が利益を増やしても、それがすぐにすべての労働者の給与に反映されるわけではありません。
「給料が増えた」より「物価が上がった」と感じれば好景気は実感しにくい
家計にとって重要なのは、給与の額そのものよりも「その給与でどれだけ商品やサービスを買えるか」です。そのため重要になるのが、物価変動を考慮した「実質賃金」です。
名目上の給料が3%増えても、物価が3%以上上昇すれば、実際に買える物が増えたとは限りません。
特に、食品、電気・ガス料金、ガソリン代など、生活に欠かせない支出が増えれば、「給料は上がったのに生活は楽になっていない」と感じやすくなります。
厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、2026年7月の現金給与総額は前年同月比4.7%増、実質賃金は2.4%増でした。ただし、現金給与総額には賞与などの特別給与も含まれます。基本給などに相当する所定内給与の伸びは4.1%でした。
「74ヶ月続いた」ことは「74ヶ月ずっと好景気」という意味ではない
ここで注意したいのが、「景気拡大期間」という言葉の意味です。景気拡大とは、基本的には景気の谷から山に向かって経済活動が改善している期間を指します。
つまり、
「国民全員の収入が増えている」
「生活に余裕がある」
「消費が活発で誰もが好景気を感じている」
という意味ではありません。
今回の景気拡大は、経済活動が大きく落ち込んだコロナ禍の2020年5月を起点としています。非常に低い水準から経済活動が回復し、その後、大幅な景気後退と判断される局面に入らないまま緩やかな回復が長期間続けば、「強い好景気ではないのに景気拡大期間だけは長い」という状態も起こり得ます。
今後のポイントは「基本給が物価上昇を上回れるか」
現在の日本経済は、「バブル期のような強い好景気」というより、統計上は緩やかな景気回復が長く続いている状態と考えたほうが分かりやすいでしょう。今後、家計でも景気回復を実感できるようになるためには、企業収益の改善が継続的な賃上げにつながることが重要です。
特に、一時的な賞与ではなく基本給が上昇し、その伸びが物価上昇を安定して上回るかがポイントになります。
また、中東情勢などを背景に原油価格が上昇すれば、ガソリン代や電気・ガス料金などを通じて再び家計負担が増える可能性もあります。「戦後最長」という言葉だけを見て「日本はいま好景気だ」と判断するのではなく、実質賃金や物価、個人消費など、私たちの生活に近い数字も合わせて確認することが大切です。
まとめ
2020年5月を景気の谷として、その後2026年7月まで景気拡大が続いていたと判断されれば、拡大期間は74ヶ月となり、いざなみ景気の73ヶ月を超えて戦後最長となる可能性があります。
ただし、「景気拡大が長い=景気が非常に良い」という意味ではありません。
企業収益や雇用などの指標が改善していても、物価上昇によって家計の負担が増えれば、消費者は好景気を実感しにくくなります。いざなみ景気が「実感なき景気回復」といわれたように、今回も「企業や経済統計は改善しているのに、家計ではそれほど豊かさを感じない」というギャップがポイントになりそうです。
出典
内閣府 経済社会総合研究所「景気基準日付」
内閣府 経済社会総合研究所「景気動向指数 令和8(2026)年7月分速報」
内閣府「月例経済報告等に関する関係閣僚会議資料(令和8年7月)」
財務省「法人企業統計調査(令和8年1~3月期)」
総務省統計局「労働力調査(基本集計)2026年(令和8年)7月分」
厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和8年7月分結果速報」
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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