3年ぶりの“空き家の実家”で、隣人に「お宅の庭木を切ったので手入れ代15万円」と請求されました。業者に頼めば「5万円」で向こうが勝手に切ったのに、払う必要ありますか? 2023年に変わったルールとは
ここでは、となりの人が自分で枝を切ってよい場合の決まりと、15万円のうち払う義務が生じる範囲を整理します。空き家を放置した場合の税の負担もあわせて確認しましょう。
2級ファイナンシャルプランナー技能士
隣人が自分で切ってよいのは3つの場合だけ
令和5年4月1日に施行された改正民法では、境界を越えてきた枝について、木の持ち主に切らせるという原則は変わっていません。法務省の資料では、隣地の所有者が自分で切り取れる場面を、次の3つに限っています。
・木の持ち主に切るよう催告したが、相当の期間内に切らないとき
・木の持ち主を知ることができず、またはその所在を知ることができないとき
・急迫の事情があるとき
この「相当の期間」は、事案によるが基本的には2週間程度とされています。
今回のケースで問題になるのは、催告があったかどうかです。隣人が請求書を届けられた以上、実家の持ち主が誰かは把握していたことになり、所有者が分からない場合には当たりません。
台風で折れそうといった事情もないなら、催告なしに切った行為は3つのどれにも当てはまらないと考えられます。
払うとしても「越境した枝を切る費用」まで
枝を切った費用そのものは、木の持ち主に請求できると考えられます。枝がとなりの土地の所有権を侵していること、本来は木の持ち主が負う切除の義務を隣人が肩代わりしたことが理由です。
ただし、請求できるのは越境した枝を切り取るために必要な範囲にとどまります。庭木全体の形を整える剪定(せんてい)や、越境していない側の枝を落とす作業は、この範囲から外れます。
・15万円-5万円=10万円(同じ作業を自分で頼んだ場合との差)
同じ作業に5万円の見積もりが取れるなら、必要な費用として説明がつくのは、その水準までです。まず請求の内訳を出してもらい、どの枝をどこまで切ったのかを確かめましょう。越境していない部分まで切られていた場合には、その分を逆に隣人に求めることもできます。
とはいえ、枝が越境していたのは事実です。全額を断って話がこじれると、調停や訴訟の費用のほうが大きくなりかねません。内訳を確かめ、越境部分にあたる額で折り合うのが現実的でしょう。
空き家のままにすると固定資産税が上がる
今回の請求は、庭の手入れが3年止まっていたことがきっかけです。空き家をこのまま置いておくと、次は税の形で負担が来ます。
住宅の敷地には、固定資産税の課税標準を減らす住宅用地特例があります。国土交通省の資料によると、200平方メートルまでの小規模住宅用地は6分の1に減額される仕組みです。
しかし、令和5年12月13日に施行された改正空家法では、適切な管理がされず、放置すれば特定空家になるおそれが大きい家が管理不全空家とされ、市区町村長から勧告を受けると、この特例から外れます。これまでの実家の固定資産税が3万円の場合、
・3万円×6=18万円(特例が外れたあとの土地の固定資産税)
単純に計算して年18万円です。庭木の手入れ代よりも重い負担でしょう。
まとめ
越境した枝を隣人が自分で切ることができるのは、所有者に催告しても切らないとき、所有者が誰なのかや所在が分からないとき、急迫の事情があるときの3つに限られます。
今回のように催告のないまま切られた場合、請求の根拠は弱くなります。払うとしても、越境した枝を切り取るのに必要な費用までです。
まずは内訳を出してもらい、自分で業者に頼んだ見積もりと突き合わせるとよいでしょう。あわせて空き家の庭木を年に何回手入れするか決めておけば、請求と税の両方を避けられます。
出典
法務省 民法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目について
国土交通省 空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)について
執筆者 : 高橋祐太
2級ファイナンシャルプランナー技能士
