生活保護世帯の子どもは大学に進学できないのでしょうか?
配信日: 2017.10.21 更新日: 2020.04.07
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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大学等に進学するには「世帯分離」をする必要がある
高校では、「生業扶助」として、授業料、交通費、学用品費が給付されます。大学や専門学校については、生活保護を利用しながら進学することは、現在の運用上は認められていません。公共職業訓練については、生活保護を利用しながら就労に向けて技術等を身に付けるために職業訓練校に通うことができます。大学等に進学する場合は、生活保護を利用している親の世帯から、子どもを切り離す「世帯分離」をする必要があります。「世帯分離」といっても、別居する必要はなく、そのまま同居を継続することができます。
世帯分離するとどうなるの?
世帯分離すると、子どもの分の「生活扶助」などが減らされます。東京23区の母子3人世帯の場合、「生活扶助」と「住宅扶助」の合計約5万円が減額になります。別世帯になった子どもは医療扶助の利用ができなくなります。
子どもは、国民健康保険(国保)にも加入することになりますので保険料の負担も増えます。子どもは、自分の学費や生活費も工面しなければならなくなります。
なお、国保の保険料が払えない場合は、保険料の軽減・減免(免除)措置や医療機関独自の助成制度として「無料低額診療事業」がありますので、知っておくと良いでしょう。
後者は、生活困難な方が経済的な理由によって、必要な医療サービスを受ける機会が制限されることのないよう、医療保険加入の有無、国籍は問わず、一定期間、無料又は低額な料金で診療を行うものです。事業を行っている医療機関は都道府県のホームページで公開されています。
ただし、仮に診療費の自己負担が無料になっても薬代はかかりますので注意してください。20歳になると国民年金に加入しなければなりませんが、国民年金保険料が納められない場合は、「学生納付特例」を申請しましょう。国民年金保険料の納付が猶予されます。
受験料や入学金の工面の方法は?
生活保護費は収入があると減額されます。「借入れ」も収入となります。
ただし、保護の実施機関に事前の承認を得ることを条件に、子どもが大学や専門学校等に入学するための入学金、教材費、授業料などの就学資金に充てるための借入れを、収入認定の除外扱いとしています。借入先としては、日本学生支援機構の奨学金、母子・寡婦福祉資金、生活福祉資金の修学資金などがあります。
なお、18歳満期の学資保険の保有は認められていますので、入学金等に利用できます。
進学後の学費や生活費の工面は?
基本的には、日本学生支援機構の奨学金やアルバイトで賄います。まず、借入れの前に大学独自の給付型奨学金を検討しましょう。国立大学であれば家族が生活保護を受けていると授業料が免除になります。、日本学生支援機構の奨学金には、もらう給付型の奨学金と借りる貸与型の奨学金があります。
貸与型の奨学金には、無利子の第一種奨学金と有利子の第二種奨学金があります。高校3年生の春に予約できますので予約しておきましょう。生活保護世帯の生徒であれば、給付型奨学金や第一種奨学金が利用できます。併用もできます。
大学進学に給付金、厚労省検討へ
厚生労働省は、生活保護受給世帯から大学に進学した子どもに対する給付金創設を検討しています。また、子どもが大学生になると家賃相当の保護費「住宅扶助」がカットされるのを廃止する方向で検討しています。
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。