2020年の入学者から変わる奨学金制度。借りすぎには注意して!
配信日: 2019.09.07 更新日: 2021.06.22
進学資金に関する相談で多いのは、ひとり親世帯、弟妹がいる、病気で働けないなどの場合、子どもを進学させたいが、進学費用をどう工面したらよいかというものです。
こういった事情の場合、子ども本人も家庭の経済状況をなんとなく察していることが多いので、アルバイトをしながら進学するか、それとも就職して経済的に安心させてあげるかに悩むようです。親に負担をかけてまで進学することの意義が見いだせるかどうかにかかっています。
執筆者:黒澤佳子(くろさわよしこ)
CFP(R)認定者、中小企業診断士
アットハーモニーマネジメントオフィス代表
栃木県出身。横浜国立大学卒業後、銀行、IT企業、監査法人を経て独立。個別相談、セミナー講師、本やコラムの執筆等を行う。
自身の子育て経験を踏まえて、明日の子どもたちが希望を持って暮らせる社会の実現を願い、金融経済教育に取り組んでいる。
また女性の起業,事業承継を中心に経営サポートを行い、大学では経営学や消費生活論の講義を担当している。
奨学金はどれくらい借りれば良いの?
例えば、新制度を使って、実質無償化の恩恵を受けられる場合を考えます。新制度では、「高等教育の無償化」と称して、低所得世帯(住民税非課税世帯及びそれに準ずる世帯)に対し、授業料・入学金の減免と給付型奨学金の支給を併せて行えるようになっています。
仮に収入目安が270万円以下、住民税非課税の世帯で、給付型奨学金46万円(私立、年額)を受けられたとします。授業料減免枠では、入学金26万円、授業料70万円が上限となるので、学納金としてあと年間50万円が必要になります。
第一種奨学金を併用すると、最高年額約65万円まで貸与を受けることができますので、貸与総額4年間で約260万円を借り、これを15年間で返済すると、毎月の返済額は1万4400円です。
また自宅外(私立)の場合、同じ収入要件ですと、年間約91万円の給付が受けられますので、学納金としては年間5万円、プラス生活費が必要になります。生活費を月12万円とすると年間144万円、4年間では576万円です。
第一種奨学金を最高月額6万4000円まで借りても不足するため、第二種奨学金を月額6万円借りるとすると、4年間の貸与総額が約600万円となります。これを20年間で返済すると、毎月の返済額は2万6102円です。
借りすぎに注意! 返済時にわかる現実
ただし、奨学金は進学者本人が返済するということを忘れてはいけません。毎月の返済額2万6102円は、保護者の年代の感覚だとさほど多くないように感じるかもしれませんが、若手社会人にとっては厳しい金額です。
大卒初任給の平均額は男性20.8万円、女性20.4万円です(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」平成29年)。ここから税金と社会保険料などの控除があり、いわゆる手取りは15~16万円です。
奨学金を差し引くと、12~13万円程度で毎月の生活費を賄わなければならず、一人暮らしをするとなると、学生時代と違ってアルバイトができないため、非常にギリギリの生活になります。
また、20年の返済が完了するまでには、自分の子どもの教育費がかかる年代にさしかかるかもしれませんし、その前に、住宅ローンを組んで住宅を購入したいという時期が来るかもしれません。
当然のことながら、住宅ローンの審査時には他の債務状況もチェックされます。奨学金の残債がどれくらいあるか、延滞していないかどうかなどは審査されることになるでしょう。
執筆者:黒澤佳子
CFP(R)認定者、中小企業診断士