更新日: 2019.09.24 子育て
「大学無償化」うちの子の成績でも申し込める?学生の学力の基準とは
適用を受けるには「家計基準」と「学力基準」の両方を満たす必要があります。家計基準には、「所得基準」(参考『2020年4月から始まる大学の無償化制度。世帯年収が400万円前後なら、場合によっては、その対象になるかもしれない。』)と、現金や預貯金、有価証券の合計額が一定の金額未満(生計維持者が2人:2000万円未満、生計維持者1人:1250万円未満)という「資産基準」があります。
また、「学力基準」は、学生の成績や学習意欲を要件としています。
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
高等教育の修学支援新制度における「学力基準」
授業料などの減免と給付奨学金を受ける場合、たとえ経済的な問題で大学などへの進学が困難だとしても、成績が悪ければ認められません。そのため、一定の「学力基準」が設けられています。
〇予約採用(高校3年生:入学前年度)
高校2年次(申込時)までの評定平均値が、
(1)3.5以上…進路指導等において学習意欲を見る。
(2)3.5未満…レポート又は面談により学習意欲を確認する。
※文部科学省「支援措置の対象となる学生等の認定要件について」より
予約採用における基準は、大学などの高等教育機関に入学する前、つまり、高校3年生などに適用される基準です。授業料等減免制度は大学などに進学した後に申請するため、予約採用における基準は給付奨学金のみを対象にしています。
ポイントは、申込時、つまり高校2年次の評定平均値が基準になっている点です。原則、評定平均値が3.5以上となっていますが、高等教育の修学支援新制度の創設により、要件が緩和され、必ずしも3.5以上必要というわけではなくなりました。
評定平均値が3.5未満でも、「レポートや面談」により「学習意欲」が確認できればよいとなっています。
わかりやすくいうと、推薦入試のようなイメージになるでしょうか。通っている高校の先生と面談し、また、小論文などのレポートを書くことで、大学などへ進学した後の学業に対する意欲や将来の目的などといった人生設計が確認できれば認められる可能性があります。
〇在学採用(大学1年生:入学年の4月)
(1)から(4)までのいずれかに該当すること。
(1)高校の評定平均値が3.5以上であること。
(2)入学試験の成績が入学者の上位1/2以上であること。
(3)高卒認定試験の合格者であること。
(4)学修計画書の提出を求め、学修の意欲や目的、将来の人生設計等が確認できること。
※文部科学省「支援措置の対象となる学生等の認定要件について」より
在学採用は、大学などの高等教育機関にすでに進学している学生が、授業料等減免制度や給付奨学金の申し込みを行い、認定を受けることをいいます。注意点としては、申請の時期が入学した後の4月になっているため、入学後速やかに申請する必要があることです。
学力基準を見てみると、予約採用における学力基準と同等の要件だけでなく、入学試験で上位1/2以上の成績を取った学生や高卒認定試験の合格者に対しての要件も認められるようになっています。
このように、高等教育の修学支援新制度では、在学者に対する要件が新たに加わっていることも特徴のひとつといえます。
それでは、在学2年目以降の学力基準はどのようになっているのでしょうか。授業料等減免制度と給付奨学金は、一度支給されれば、その後、自動的に継続できるというわけではありません。在学2年目以降も継続的に利用したい場合は、毎年、認定を受ける必要があります。
〇在学採用(大学2~4年生:毎年4月)
(1)か(2)のいずれかに該当すること。
(1)在学する大学等における学業成績について、GPA(平均成績)等が上位1/2以上であること。
(2)次のいずれにも該当すること。
・修得単位数が標準単位数以上であること。
・学修計画書の提出を求め、学修の意欲や目的、将来の人生設計等が確認できること。
※文部科学省「支援措置の対象となる学生等の認定要件について」より
上記、(1)、(2)のいずれかに該当することが必要ですが、仮に、これを満たせない場合は、支援が打ち切られることがあります。
〔警告を連続して受けた場合の打ち切り要件〕
(1)・(2)・(3)のいずれかに該当した場合は「警告」が発せられ、警告を連続して受けた場合は「打ち切り」に。
(1)修得単位数が標準の6割以下の場合
(2)GPA(平均成績)等が下位1/4の場合
(3)出席率が8割以下など学習意欲が低いと大学等が判断した場合
※文部科学省「支援対象者の要件(個人要件)等」より
〔ただちに打ち切られる要件〕
(1)から(4)のいずれかに該当した場合は、支援が「ただちに打ち切り」に。
(1)退学・停学の処分を受けた場合
(2)修業年限で卒業できないことが確定した場合
(3)修得単位数が標準の5割以下の場合
(4)出席率が5割以下など学習意欲が著しく低いと大学等が判断した場合
なお、その態様が著しく不良であり、懲戒による退学処分など相応の理由がある場合には支援した額が徴収されることがある。
※文部科学省「支援対象者の要件(個人要件)等」より
高等教育の修学支援新制度では、大学などの進学費用や学生生活費が無償で支給されます。このため、学業がおろそかになった場合、最終的に支給が打ち切られ、場合によっては支給額の返還を求められることがあります。
まとめ
高等教育の修学支援新制度を利用するには、「家計基準」だけでなく「学力基準」も満たす必要があります。
傾向としては、家計基準も、学力基準も、要件が緩和されてはいますが、特に、学力基準において、学業成績が著しく悪い場合、支援が打ち切られることになるため、入学後の学生生活をいかに過ごすかを事前に考えておく必要があります。
現実的には、大学などに通いながら、アルバイトをする時間も相当程度確保する必要が出てくるため、学業とお金のバランスをどのように取るかが、入学後の大きな課題になってくるでしょう。
保護者はもちろん、高校や大学の先生と相談のうえ、資金計画や学生生活の見通しを立てるよう心がけるようにしましょう。
出典:※文部科学省「支援措置の対象となる学生等の認定要件について」
文部科学省「支援対象者の要件(個人要件)等」
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)