入院したら「個室しか空いていません」差額ベッド代は支払わなければならないの?
配信日: 2019.12.05 更新日: 2019.12.10
中でも比較的金額が大きくなりやすい支出として「差額ベッド代」とがあります。いったい、いくらくらいの支出になるのでしょうか? 今回は入院時に多額の支出負担となりやすい差額ベッド代について解説します。
執筆者:菊原浩司(きくはらこうじ)
FPオフィス Conserve&Investment代表
2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級
製造業の品質・コスト・納期管理業務を経験し、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルを重視したコンサルタント業務を行っています。
特に人生で最も高額な買い物である不動産と各種保険は人生の資金計画に大きな影響を与えます。
資金計画やリスク管理の乱れは最終的に老後貧困・老後破たんとして表れます。
独立系ファイナンシャルプランナーとして顧客利益を最優先し、資金計画改善のお手伝いをしていきます。
「差額ベッド代とは?」
差額ベッド代は通称であり、正式には「特別療養環境室料」といいます。入院の際、一定の基準を超える病室を自らの意思で利用した場合に病院側から請求されることになります。
差額ベッド代を請求される病室の基準とは、
・1人~4人部屋
・面積が1人当たり6.4平方メートル以上
・カーテンやパーテーションなどで入院患者ごとにプライバシーを確保する設備がある
・個人用の収納設備や照明に椅子や小机などが設置されている
となります。
基本的に入室する人数が少なく利用できる設備が多い病室ほど差額ベッド代は高額になります。
厚生労働省によれば、差額ベッド代の平均額は1日当たり6188円ですが、金額分布が不均一という特徴があります。部屋ごとの差額ベッド代の内訳を見ますと1人部屋は日額7837円ですが、2人部屋では日額3119円に急落し、3人部屋(日額2798円)や4人部屋(日額2440円)と大差ない金額となります。
差額ベッド代の特徴として自らの意思で利用した場合、健康保険の適用範囲外で高額療養費制度を利用することもできないので、全額が自己負担となります。また、医療費控除の対象外の支出となるため、所得税の減免措置も受けることができません。金額以上に多くの負担となる支出なのが差額ベッド代なのです。
「差額ベッド代への対処法とは?」
差額ベッド代は自らや家族の意思で一定の設備を有する1人~4人部屋を入院した場合に支払う必要があります。
治療のために個室が必要である場合や、大部屋の病室が満員で差額ベッド代のかかる病室しか利用できないなどの病院側の都合である場合は、差額ベッド代を支払う必要はありません。
ただし、大部屋が利用できない場合でも差額ベッド代の仕組みの説明を受け、利用を同意した場合は差額ベッド代を支払う必要があります。
どのような場合に差額ベッド代が発生するかを把握しておくことで、もし差額ベッド代の生じる病室の利用が本意に沿わないのであれば支払わないという方法も選択することができるようになります。
「まとめ」
入院は日数が増えると差額ベッド代などによる費用負担が徐々に増加していくのに加え、就業不能による収入減少の影響が大きくなっていきます。
差額ベッド代は一定の規模・設備を有する病室に自分や家族の意思で利用する場合に生じる支出です。けがや病気の状況や同意の有無によっては支払わずに利用できる場合もありますので、条件をよく把握して希望に沿った利用を行えるように心掛けましょう。
出典
厚生労働省「平成30年7月20日 事務連絡 疑義解釈資料の送付について(その6)」
厚生労働省「第401回中央社会保険医療協議会 主な選定療養に係る報告状況」
執筆者:菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表