更新日: 2020.02.07 その他暮らし
後悔しない賃貸物件探しのポイント(3) 物件情報と内覧のチェックポイント
今回は、物件情報の見方についてより詳しく考え、実際に内覧するまでのチェックポイントについてお伝えします。
執筆者:西山広高(にしやま ひろたか)
ファイナンシャル・プランナー(CFP®)、上級相続診断士、宅地建物取引士、宅建マイスター、西山ライフデザイン代表取締役
http://www.nishiyama-ld.com/
「円満な相続のための対策」「家計の見直し」「資産形成・運用アドバイス」のほか、不動産・お金の知識と大手建設会社での勤務経験を活かし、「マイホーム取得などの不動産仲介」「不動産活用」について、ご相談者の立場に立ったアドバイスを行っている。
西山ライフデザイン株式会社 HP
http://www.nishiyama-ld.com/
物件情報を細かくチェック
インターネットや不動産業者店頭の物件情報には、前回お伝えした「最寄り駅と駅までの徒歩距離」のほか、さまざまな情報が記載されています。それぞれの項目についてどんなところをチェックすべきか考えていきます。
■築年数、構造
物件情報にはその物件の築年数、構造が記載されています。一般的に鉄筋コンクリート造、鉄骨造は「マンション」、木造は「アパート」と表記されます。30年以内に70%の確率で大地震が発生するといわれています。いつ来るかわからない災害です。建物は耐震性が高いに越したことはありません。
今の建築基準法で求められている耐震基準は、昭和56年に定められたものです。それよりも前に建った建物は「旧耐震基準」といわれ、耐震補強を施さない限り震度6程度の地震で倒壊するリスクがあるともいわれます。
■方角(向き)
物件情報には方角、あるいは主な開口方向(大きな窓がある方向)が記載されています(時々記載がない物件もあります。ない場合には事前に問い合わせて確認しておきましょう)。
一般的には「南向き」が理想とされ、人気があり家賃も高めです。一方、「北向き」は日が入らないため敬遠されがちです。「東向き」は午前中しか日が入らないと考えられ、「西向き」は西日が差し込みまぶしく、特に夏は暑いなどといわれます。
しかし、日常の生活が夜、寝に帰るだけであれば、日当たりは気にしないという方もいます。南向きは暑すぎるという方や、西日が入るほうが明るくて良い、という方もいます。人それぞれに価値観の違いがありますので、ご自身の生活リズムがどのようになるかも合わせて考えておきましょう。
開口方向が南向きであることを確認しても、実際に物件を見に行くと窓のすぐそばに隣の家が迫り、期待したほど日が当たらない物件もあります。現地の確認は重要です。
■階数
セキュリティー面を考えると、2階以上を希望される方が多いです。2階以上のほうが日当たりの良いことも多いでしょう。一方で、エレベーターのついていない物件では、家具・家電を運び込む際に2階以上だと苦労することもあり、1階のほうが便利です。家賃は上層階が高いことが多いです。
■間取り、面積
間取りや面積ついても人それぞれです。当然、面積が大きいほうが家賃も高くなります。筆者自身、過去に20平方メートル程度の1Kの部屋に住んでいたことがありました。部屋は3歩歩けば部屋の中の全てのものに手が届くくらいの狭さでしたが、掃除も楽でしたし、むしろ便利だったように感じます。
■収納
収納はあるに越したことはありませんが、収納がほとんどない部屋もあります。そんな場合は、ベッドの下などを収納に使うなどのような工夫ができれば、少しは収納スペースが確保できます。収納が十分にある部屋のほうが家賃も高めですが、工夫しだいである程度カバーできることもあるでしょう。
■水回り(キッチン、風呂、トイレ)
自炊することを考えている方は、コンロの口数などもチェックポイントです。一人暮らしでも2、3食分作り、冷蔵・冷凍と電子レンジを活用したほうが、食費を抑えられる場合があります。築年数が古い物件などでは、コンロがついておらず、自分で持ち込まなければならない物件もあります。
築浅(築年数が浅い)の物件では「風呂・トイレ別」の物件が増えてきましたが、風呂とトイレが一体のタイプも少なくありません。ウォシュレットを付けたい場合などはコンセントがあるかどうかも重要です。風呂・トイレ一体の場合、コンセントに水がかかってしまう恐れがあることから、コンセントがない場合が多いです。
コンロやウォシュレットがついていない物件と、ついている物件では当然家賃も違うのですが、これらは購入してもそれぞれ2万円程度で購入できます。住む期間を考えれば、購入したほうが割安ということもあり、あまりこだわらなくても良いかもしれません。
風呂に関しても、ほとんどシャワーしか使わない方や近くのスポーツクラブに入会して毎日スポーツクラブの風呂に入る、という方もいます。人によって重要視する項目はまちまちです。
現地で確認すること
不動産物件に足を運んで内部を見ることを「内見」「内覧」と言います。物件を絞ったら、不動産業者に連絡して「内覧」します。内覧時にチェックすべき主な項目をチェックしておきましょう。
■物件情報を持参する
事前にインターネットで候補に挙げた物件を内覧するときには、必ず物件情報をプリントアウトして持っていきましょう。時々間取りなどがネットに掲載しているものと違うこともあります。自分が重要視しているポイントについて間違いがないかを見て確認します。
また、方位を確認するためのコンパス(最近はスマホのアプリなどもあります)や、メジャーなども持っていくと良いでしょう。あらかじめ家具や家電などを置くスペースやカーテンを吊る窓のサイズなどを図っておけば、別途かかる費用などを考える際に役立ちます。
■携帯電話・ネット環境
最近、多くの一人暮らしの方は固定電話を使いません。通信手段は携帯電話がメインですが、電波状況はよく確認しておかないと後悔します。使っている携帯電話やWi-Fiなどを持ち込んで確認するほうが良いでしょう。光回線が使えるかどうかなども、人によっては重要になると思います。
■コンセント
案外、見落としがちなのはコンセントの位置。最近はテレビだけでなく、パソコンやWi-Fiを使う方が多くなっています。部屋の中に家具とともにこれらの機器を設置する場所を想定し、その近くにコンセントがあるかどうか確認しておきましょう。コンセントの位置で、家具の配置に制約ができてしまうことも珍しくありません。
■防音性、断熱性
物件によっては外の音や隣の音が聞こえたりすることもあります。これは、一概に構造だけの問題ではなく、個々の物件の防音性能によるところが大きいと考えられます。
サッシや隣との間の壁の断熱性能や防音性能は、物件情報からは読み取ることが困難です。築年数の古い物件は新しい物件に比べ、これらの性能で劣るケースが多く、その分家賃も安めだといえます。
周辺環境の確認
前回、駅からの距離の項目でもお伝えした通り、周辺環境は必ず現地へ行って確認しましょう。日常の買い物や通勤通学経路、騒音や振動などについては、現地を見ないとわかりません。
また、現地へ行くときは歩いていくようにしましょう。ある程度はGoogle Mapなどを活用できます。遠くから東京へ出てくる方は、何度も足を運ぶ機会はないかもしれません。しかし、不動産に関していえば、物件や周辺の環境を自分自身で歩いて確認しないことはリスクが高いといえます。
不動産業者によっては車で直接現地に案内されるケースもありますが、それだと周辺環境を確認できません。
駅までの距離とその道のり。夜遅くに帰宅する場合などは、経路の明るさや人通りなども確認しておきたいところです。普段買い物するためのスーパーマーケットやコンビニなど、生活利便施設へのアクセスの確認もしたほうが良いでしょう。
また、近くに学校があり、前面道路が通学路になっている場所などでは、土曜日も朝早くから子どもたちの声が聞こえるようなところもあります。近所に交通量の多い通りや、電車が通っているところもあります。そんなことも気にしながらチェックしましょう。
何度も内見する機会はない
本来であれば、どこに住むかを決める際はいくつかの物件を内覧し、周辺環境、内部の状況確認なども行うのが王道です。しかし、特に2月、3月は物件の回転が速く、人気の物件は空室になる前に次の入居申し込みが入ってしまうことも珍しくありません。
物件を見に行っても、その日のうちに他の人から申し込みが入ってしまうこともあります。不動産の申し込みは早い者勝ち。審査の結果しだいではありますが、「入居申込書」を大家さんが確認した順に決まっていきます。何度も内見をする機会はないと考えておいたほうが良いでしょう。
そのためにも家賃や物件に求める条件の、優先順位を整理しておく必要があります。
まとめ
地理感のないところで不動産探しをするのはなかなか難しいと思います。
気に入った物件をいくつか見つけたら、希望エリア周辺の不動産業者に連絡を取り、案内してもらうと良いでしょう。親身に相談に乗ってくれる不動産屋さんを探すために、すでにそのエリア周辺に住んでいる先輩や知り合いに頼るのも良いかもしれません。
それぞれのエリアの不動産業者は、周辺環境も熟知しています。一方で、この時期の不動産業者は、1人のお客さんにあまり時間を掛けてはいられません。何度も内覧を希望する人、なかなか決められない人は後回しにされてしまう恐れもあります。
不動産に100点満点の物件はめったにありません。特に2月、3月は迷っている時間はあまりありません。自分の希望に優先順位をつけ、気に入ったらすぐに申し込めるような準備と心構えをしておく必要があります。良心的な不動産に出合うことも重要ですが、この時期の不動産探しは自分自身の準備が重要です。
執筆者:西山広高
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役