更新日: 2020.01.13 その他暮らし

「隠れ家賃?」引っ越し をする前に知っておきたいプロパンガスと都市ガスの違い

執筆者 : 横山琢哉

「隠れ家賃?」引っ越し をする前に知っておきたいプロパンガスと都市ガスの違い
ご承知のとおり、一般家庭で利用されるガスは主に「プロパンガス(LPガス)」と「都市ガス(一般ガス)」の2種類です。
 
都市ガスの賃貸住宅に住んでいた方がプロパンガスの物件に引っ越すと、同じようにガスを使ってもガス代が高くなることが多く、思わぬ負担になります。そのため、引っ越しをする場合は物件選びにあたり、その物件のガス供給方式がどちらなのかを意識しておくと良いです。
 
そこで、今回はプロパンガスと都市ガスの違いについて、料金の話を中心に解説します。
 
横山琢哉

執筆者:横山琢哉(よこやま たくや)

ファイナンシャルプランナー(日本FP協会 AFP認定者)
フリーランスライター

保険を得意ジャンルとするFP・フリーライター。
代理店時代、医療保険不要論に悩まされた結果、1本も保険を売らずに1年で辞めた経験を持つ。
FPとして、中立公正な立場から保険選びをサポートしています。

プロパンガスは都市ガスよりも料金が高い

都市ガスは、地中に埋設された「導管」(ガス管)から各戸にガスが供給される方式です。一方、プロパンガスは建物に設置したボンベから供給されます。
 
ガス供給方式を都市ガスにするためには、導管から建物にガスを引き込むための管(供給管)を設置することが必要です。本管が建物から離れていると工事にかかる費用の負担が大きいため、プロパンガスを選択する1つの要因になるようです。
 
両者の利用(需要家)件数は都市ガスが約2635万件、プロパンガスが約2450万件で、おおよそ半々です(平成27年度)。なお、この他に団地などで採用されている「簡易ガス」と呼ばれる方式もあり、約117万件が利用しています。
 
東京ガスでは以下の料金表に基づいて、各家庭における毎月のガス料金を算出しています(2019年12月の税込料金)。
 

 
一方、東京都渋谷区に本社を置くプロパンガス会社A社では消費量にかかわらず、基本料金(1500円)+従量料金(1立方メートルあたり440円)×使用量+消費税という算式で料金を計算します(標準料金)。
 
ただし、プロパンガスと都市ガスの料金を比較する場合はそれぞれ熱量が違うので、単純に単価で比較することはできません。
 
プロパンガスの熱量は1立方メートルあたり2万4000キロカロリーで、都市ガスは1万1000キロカロリーです。つまり、プロパンガスは都市ガスに対して約2.2倍の熱量があります。そのため、全く同じ条件であれば、毎月の消費量はプロパンガスのほうが少なくなるわけです。
 
以上のデータをもとに、両社の料金を単純計算で比較すると以下のようになります(東京ガスの料金については1円未満を四捨五入)。
 

 
両者を比較すると、プロパンガスのほうが大幅に高くなっています。すべてのケースでこのような結果になるわけではありませんが、同様の結果になることが多いでしょう。
 

プロパンガスの相場にはかなり開きがある

プロパンガスの料金は、ガス会社によってかなりの開きがあります。
 
一般社団法人日本エネルギー経済研究所 石油情報センターのウェブサイトに掲載されているデータから、東京都・埼玉県・神奈川県・千葉県における消費量ごとの料金を抜粋してまとめると、以下のようになります(2019年10月のデータ)。
 

 
最高値と最低値の差が2倍ほどあるのが一般的で、最も開きの大きい千葉県(5立方メートル)だと3倍以上にもなります。また、この表から、先述したA社の料金が決して相場と比べて高いわけではないことも分かります。
 
物件のガス供給方式が都市ガスからプロパンガスに変わることによって高くなる料金の差額は、いわば「隠れ家賃」とも言うべきものです。仮にガス料金が毎月3000円ほど高くなれば、家賃が3000円高い都市ガスの物件に住むのと変わらないからです。
 

賃貸住宅では、プロパンガスだとガス会社を自由に選びにくい

2017年4月から都市ガスの小売が完全自由化されましたが、プロパンガスはもともと自由にガス会社を選ぶことができます。
 
ただし賃貸住宅の場合、ガス会社を選べる立場にあるのはあくまで建物のオーナーです。また、ガス会社を変更するときはその建物全体で行う必要があるため、管理会社に相談しても、基本的に1人の入居者の意思だけではできないでしょう。
 
ガス会社の変更を難しくする理由の1つが、ガス会社とオーナーの間で結ばれていることの多い「無償貸与契約」というものです。
 
無償貸与契約とは、ガス会社が物件の給湯器やガスコンロなどの設備を無償で提供する代わり、契約期間を最低10~15年とし、途中で解約すると違約金が生じるようにするものです。
 
ガス会社は負担した費用を入居者のガス料金で回収します。プロパンガスの料金が都市ガスと比べて高いのは原料の価格ではなく、こうした不透明なコストが上乗せされていることがその理由と考えられるでしょう。
 
以上から、賃貸住宅を選ぶにあたって家賃を比較するときは、その物件がプロパンガスなのか都市ガスなのかも考慮して検討することをおすすめします。
 
[出典]
経済産業省 電力・ガス取引監視等委員会「電力及びガスの小売全面自由化について」
LPガス安全委員会「LPガスとは?」
東京ガス「ガス料金表(家庭用/業務用・工業用 共通)」
一般財団法人日本エネルギー経済研究所 石油情報センター
総務省 北海道管区行政評価局「液化石油ガスの取引適正化に関する調査」
 
執筆者:横山琢哉
ファイナンシャルプランナー(日本FP協会 AFP認定者)
フリーランスライター