男性の育休は少子化を止める!?

配信日: 2020.02.27

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男性の育休は少子化を止める!?
現環境大臣(2020年1月現在)の育休が話題になっていますが、ちまたでは賛否両論あるようです。当初、大臣は「育休を取得しない」と言っていましたが、国家公務員の男性の育児休業義務化も踏まえてのトップの判断ということになったのでしょう。
 
このように、育児休業を男性が取得するのは、日本ではまだまだ勇気が必要です。大臣の場合には、労働者ではありませんから給料もちゃんと払われる、という点でも通常の労働者とは論点は異なります。
 
ただ、働き方改革の施行を目前に控え、企業と男性の意識改革が必要になってくる点では同様です。今後会社としてやっておくべきこと、やってはいけないことを考えてみます。
 
當舎緑

執筆者:當舎緑(とうしゃ みどり)

社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。女2人男1人の3児の母でもある。
 

もはや誰でも問題を追及できる時代

2019年6月に育休復帰後の男性職員の異動について、その妻がSNSにアップし、炎上し、会社の株価が一時的に下がったことを覚えている方もいらっしゃると思います。
 
会社の言い分としては、育休前に「異動」を判断し、関西への異動を内示する前に、男性が育休に入ってしまったため、育休すぐに内示が出てしまったとのことで、「もともと決まっていたこと」というスタンスを貫きました。ただ、育休から復帰し、マイホームも取得していた男性はその内示に従うことができず、有給も2週間程度取ったのみで退職してしまったという内容です。
 
今はどんな小さな会社でも「うちには関係ない」と言えない時代です。アットホームにやっているから、言わなくてもわかっている、というのは言い訳になりません。大会社では、説明会を開き、ホームページ上などでも情報は開示しているなど、対策を採っていたとしても、労働者数が多いために行き違いが大きくなりがちです。
 
たとえ労働者の一方的な言い分だとしても、SNSに個人的にアップするのを会社が止めることはできません。誰でもすぐにSNSで会社を追求できるからこそ、対応を間違えれば、会社の信用問題に発展しやすいといえます。

建前と本音が異なっていないか点検を

日本では、2019年に生まれた赤ちゃんは86万4000人と、一気に90万人を大きく割り込んだそうです。想定されていた減り方よりも、少子化が猛スピードで進んでいるのがわかります。
 
現首相(2020年1月現在)が1億総活躍時代をうたい、厚生労働省では、両立支援のためにいろいろな制度のある企業を「くるみん」「プラチナくるみん」制度で認定しているくらいです。しかし、認定されている企業が問題を起こしていることからも、日本では企業の建前と本音はまだまだ一致していない、ということがわかります。
 
建前と異なる実態をSNSにアップされた場合には、あっという間に企業のイメージダウンです。ちなみに「くるみん」の認定基準は10個ありますが、実際として書類上の要件が合致していれば認定される傾向にあります。
 
制度導入で「育児目的休暇の導入」「ノー残業デーの導入」「女性労働者の育児休業取得率を80%以上にする」などの計画を定めているのであれば、目標と実質についてしっかりと一致しているのか、労働者との希望についてもしっかりと把握しておくべきです。
 
就業規則では、「育児休業を取得できる」「労働者に必要があれば異動を命じることができる」など、労働基準法など法律に遵守した規定が定められているでしょう。
 
この中には、記載されているものの、実態はまったく関係ないという実情の項目もあるかもしれません。ただ、労働者は就業規則をしっかりと把握している方は少ないものです。「わかっているはず」ではなく、「わかってもらう」ための手間を惜しんでは問題が大きくなりがちです。

少子化を止めることが企業のメリットとなる!?

厚生労働省は、1月24日に2020年度の公的年金の受給額を19年度比で0.2%引き上げると発表しています。
 
夫婦2人のモデル世帯では458円増え、2年連続のプラス改定となりましたが、給付額を抑制する「マクロ経済スライド」も初めて2年連続で発動されます。賃金や物価の伸びより年金額の増加を抑えて、将来世代の給付に備えるとなっていますが、このまま少子化が進めば、年金額で生活できない方が増え、購買意欲ももちろん増えないでしょう。
 
日本は女性が眠れていない国のひとつだそうです。経済協力開発機構(OECD)によると、1日7時間15分と、平均より1時間以上短いのだそうです。その理由は、子育てと家事の負担が大きいことです。
 
女性の負担を軽くすることが、少子化を止めることになると考えられます。将来の現役世代を増やすことが購買層を増やし、年金を下支えさせるという、企業にとって将来のメリットはあなどれません。
 
今は、会社に休暇を申請するのも、退職する意思を伝えるのもチャットで伝えるような労働者はたくさんいます。一定以上の年代にとっては「何ごとか」と思われるかもしれませんが、そういう労働者もいる以上、それを考慮した応対方法で労働者に誠実に対応することが企業を守ります。
 
男性の育休も「昔はそんな理由で休めなかった」「休まれると困る」と言わず、「どうしたら取得できるのか」「どうしたら働き続けてくれるのか」と意識転換させてみましょう。人材不足だからこそ、労働者を長く働かせられるかどうかが、会社を発展させるポイントとなってくるのではないでしょうか。
 
執筆者:當舎緑
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。


 

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