更新日: 2020.03.19 その他暮らし

申請すれば費用負担が軽減!? 自立支援医療制度を知っていますか?

執筆者 : 馬場愛梨

申請すれば費用負担が軽減!? 自立支援医療制度を知っていますか?
「自立支援医療」という制度をご存じでしょうか。心身に障害のある方などがそれを取り除く、あるいは軽減させるための治療を受ける場合、特別に医療費の自己負担を軽くするという国の制度です。詳しく解説します。
馬場愛梨

執筆者:馬場愛梨(ばばえり)

ばばえりFP事務所 代表

自身が過去に「貧困女子」状態でつらい思いをしたことから、お金について猛勉強。銀行・保険・不動産などお金にまつわる業界での勤務を経て、独立。

過去の自分のような、お金や仕事で悩みを抱えつつ毎日がんばる人の良き相談相手となれるよう日々邁進中。むずかしいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えする仕事をしています。平成元年生まれの大阪人。

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自立支援医療制度とは? どんな人が受けられる?

一般的に、病院で治療を受けた場合の医療費は、健康保険で最大「3割負担」で済みます。それが、この自立支援医療の対象になると「1割負担」に軽減されます。
次の3パターンのいずれかにあてはまる方が対象です。
 
■1.精神疾患で通院している(精神通院医療)
たとえば以下のような症状のある方が対象になります。※「通院」が対象なので、「入院」は含まれません。
 
・統合失調症
・うつ病、躁うつ病などの気分障害
・薬物などの精神作用物質による急性中毒またはその依存症
・PTSDなどのストレス関連障害や、パニック障害などの不安障害
・知的障害、心理的発達の障害
・アルツハイマー病型認知症、血管性認知症
・てんかん
など
 
■2.身体障害を軽減するための治療を受ける(更生医療)
身体に負っている障害を除去したり軽減したり、手術などの治療によって確実に効果が期待できるものに対して支援を受けられます。
 
例えば、次のような場合です。
・視覚障害……白内障治療のための水晶体摘出手術、網膜剝離の手術など
・聴覚障害……外字性難聴治療のための形成術など
・言語障害……口蓋裂等治療のための形成術など
・手足が不自由……関節形成術、肢装着のための切断端形成術など
・内臓等に関する障害……心臓にペースメーカーを埋め込む手術など
 
■3.子ども(18歳未満)が身体障害を軽減するための治療を受ける(育成医療)
対象者が児童になりますが、先述の例と同じように、視覚、聴覚、手足など身体に関する障害を改善するための治療で自立支援医療が受けられます。
 
まだ障害になっていなくても、医療を行わないと将来障害を残すと認められる疾患がある場合にも適用されます。
 
これらの方に対しては1割負担になるだけではなく、さらに、所得に応じて自己負担の上限額が定められています。以下の表にまとめました。


費用が高額かつ長期間にわたる「重度かつ継続」と判断された場合は、一定以上の所得がある方でも自己負担は月2万円までに収まります。現状、精神疾患で通院する方はほとんどが「重度かつ継続」とされているようです。

自立支援医療はどうすれば受けられる?

自立支援医療の対象となるには申請が必要です。お住まいの市区町村の窓口(障害福祉課や保健福祉課が担当する場合が多い)に必要な書類を用意して提出します。
 
必要な書類は、窓口においてある自立支援医療支給認定申請書、担当医師の診断書、住民税の課税証明書など所得が確認できるもの、健康保険証やマイナンバーがわかるもの、などです。
 
自治体によって多少違いがあるようですので、事前に提出先の窓口か地域の精神保健福祉センターで確認していくのが確実です。
 
申請が認められれば、「自立支援医療受給者証」が交付されます。毎月の自己負担上限額が設定されている方は、「自己負担上限額管理票」も受け取ります。それらを自治体指定の医療機関で提示することで、費用負担を軽減できます。
 
ちなみに「自立支援医療受給者証」は有効期限が1年のため、継続する場合は毎年更新が必要です。

制度を正しく理解しよう

この制度は、心身に障害を抱える方にとって費用負担を軽減してもらえるありがたい制度である一方、申請制のため、対象になるはずの方でも制度の存在自体を知らない場合はその恩恵を受けることができません。
 
国の社会保障としていろいろな制度が用意されてはいるのですが、このように対象者自らが申し出る必要のあるものが多くありますので、知らずにいると損をしてしまいます。万が一のことが起きても難局を乗り越えられるよう、少しずつでも制度への理解を深めたいものです。
 
(出典)
厚生労働省「自立支援医療」

「自立支援医療(精神通院医療)について」

「自立支援医療における利用者負担の基本的な枠組み」
 
執筆者:馬場愛梨
ばばえりFP事務所 代表

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