15歳以下の子どもって、扶養控除は受けられないの? その2
配信日: 2020.04.17
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。
ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。
FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。
2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。
現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。
早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。
サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow
児童手当の所得制限限度額について
児童手当には所得制限限度額という規定があります。
これを簡単に解説すると、前年末の「扶養親族の数」*1に応じて所得制限限度額を設け、それを超える人に対しては、児童手当を減額して、児童の年齢にかかわらず、児童1人当たり月5000円とするというものです。
*1 「扶養親族の数」には15歳以下の児童も含まれます。
所得制限限度額(平成24年6月分の手当より)
所得制限限度額は、手当を受け取る人の前年(1月~5月分の手当の場合は前々年)12月31日時点での税法上の扶養親族などの数(注)に応じて設定されており、具体的には表1のとおりです。
【表1】
(内閣府ホームページ「児童手当制度のご案内」より筆者が作成)
「収入額の目安」は、給与収入のみで計算していますので、ご注意ください。
(注)
1.所得税法に規定する老人控除対象配偶者または老人扶養親族がいる方の限度額(所得額ベース)は、上記の額に当該老人控除対象配偶者または老人扶養親族1人につき6万円を加算した額。
2.扶養親族数の数が6人以上の場合の限度額(所得額ベース)は、5人を超えた1人につき38万円(扶養親族等が老人控除対象配偶者または老人扶養親族であるときは44万円)を加算した額。
※児童を養育している方の所得が上記の額以上の場合、法律の附則に基づく特例給付(児童1人当たり月額一律5000円)を支給します。
※内閣府ホームページより引用
所得制限限度額を超えた人の場合は?
それでは、所得制限限度額を超えた人の場合は、どちらが得だったのでしょうか?
所得制限限度額を超えた人の前提を次の通りとします。
専業主婦世帯で扶養親族は妻、子ども2人の計3人
世帯主年収は1000万円(扶養親族3人の場合の所得制限限度額は年間所得金額736万円=年間収入960万円)
1.児童手当の支給金額合計
0~15歳(16年間) 5000円×12ヶ月×16年=96万円
2.年少扶養控除による節税効果
38万円*1×30%*2=11.4万円
11.4万円×16年=182.4万円
*1 年少扶養控除に関する所得控除額
*2 世帯主年収が1000万円の場合、課税所得金額は330万円から695万円となるので、所得税率は20%。これに住民税の税率10%を加えて、節税効果を30%とした。
年少扶養控除があったとしたら得られたであろう節税効果が約182万円に対し、児童手当に切り替わったために子ども1人当たり86万円も減少して、96万円の児童手当しかもらえないことになります。
まとめ 年収1000万円前後からその以上の収入のある人への増税傾向
2回に分けて児童手当と年少扶養控除の廃止の関係を見てきました。
扶養親族の数にもよりますが、年収900万円超から1000万円を分岐点として、それ以下の世帯には「減税」、それ以上の世帯には「増税」が、この数年来の制度改正の傾向として見られます(児童手当は税金ではありませんが、生活補助という観点から、ここでは所得控除に準ずるものとして考えています)。
●2010年のこども手当の創設と2011年からの年少扶養控除の廃止
●年収1195万円の給与所得世帯は、配偶者控除・配偶者特別控除を受けられなくなった
●給与所得控除額減、基礎控除増の税制改正により、年収850万円超の給与所得者は増税になる
これだけ挙げてみると、年収1000万円前後からそれ以上の収入のある人が不利になっているという印象を受けます。年収1000万円前後の給与所得者は住宅ローンや子どもの教育費で家計の苦しい人たちが多く、この増税傾向を疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
[出典]
厚生労働省「児童手当Q&A」
内閣府ホームページ「児童手当制度のご案内」
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー