雇用保険未加入で失業…そんな場合に残された、セーフティネットとは?
配信日: 2020.04.25
とはいえ、一部の会社においては違法と分かっていながらも、雇用保険に加入していないケースも見受けられます。
万一、自分が勤めている会社が雇用保険に未加入であった場合には、どのようなセーフティネットが残されているのでしょうか?
執筆者:飯田道子(いいだ みちこ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト
金融機関勤務を経て96年FP資格を取得。各種相談業務やセミナー講師、執筆活動などをおこなっています。
どの金融機関にも属さない独立系FPです。
2つのセーフティネットについて
雇用保険未加入なんてあり得ないと思っていても、自分の働いている会社が加入していなかったという話を耳にすることがあります。まず確認してほしいのは給与明細書。雇用保険分が差し引かれているのかを確認してみましょう。
雇用保険未加入という最悪な事態に陥っていた場合、失業保険を受給できませんが、国では「求職者支援制度」と「生活困窮者自立支援制度」という、2つのセーフティネットを用意しています。これらの制度はどのような制度なのか、具体的に確認していきたいと思います。
求職者支援制度とはどんな制度?
この制度は、雇用保険を受給できない求職者が対象となる制度のことです。雇用保険未加入だった場合はもちろんのこと、保険の加入期間が足りず雇用保険の給付を受けられなかった場合、雇用保険の受給が終了した人、学卒未就職者や自営廃業者も対象となる制度です。
支援内容としては、無料の職業訓練(求職者支援訓練ともいう)を実施し、本人の収入、世帯収入および資産要件等、一定の支給要件を満たす場合は、職業訓練の受講を容易にするための給付金を支給します。
これとともに、ハローワークが中心となってきめ細やかな就職支援を実施することにより、早期の「就職」を実現するための制度と位置づけられています。
簡単にいうと、就職・転職しやすいように、手に職をつけるための制度であるということです。基本、現金で給付される訳ではないので、あくまでも仕事を得るためのものです。
また、求職者支援訓練を受ける場合の認定基準や給付金の支給要件や支給額等は、審議会での議論および所要の手続きを経て定められているため、誰もが訓練を受けられる訳でもありません。
この支援制度で扱っている分野は多岐にわたっており、IT、介護福祉、医療事務、営業・販売・事務、デザイン、他となっています。そのときにマッチした内容がプログラムとして提供されていますし、開校される地域によっても違いがあります。
生活困窮者自立支援制度とはどんな制度?
この制度で行われるのは、下記の7つです。
(1)自立相談支援事業……個人のニーズにあった自立に向けた支援プランを作成してくれる。
(2)住居確保給付金の支給……一定の資産収入等に関する要件を満たしていて、離職などにより住居を失った、失うおそれの高い場合、就職に向けた活動をするなどを条件に、一定期間、家賃相当額を支給してくれる。
(3)就職準備支援事業……一定の資産収入等に関する要件を満たしていて、他とコミュニケーションがうまく取れない等が理由で就労が困難な場合、6ヶ月から1年の間、就労に向けた支援や就労機会の提供を行ってくれる。
(4)家計相談支援事業……相談者が自ら家計を管理できるよう、状況に応じた支援計画の作成、相談支援、関係機関へのつなぎ、必要に応じて貸付のあっせん等を行い、早期の生活再生を支援してくれる。
(5)就労訓練事業……個人にあった作業機会を提供、および個別の就労支援プログラムに基づいて一般就労に向けた就労訓練事業を行う。柔軟な働き方による就労の場を提供してくれる。
(6)生活困窮世帯の子供の学習支援……一定の資産収入等に関する要件を満たしている場合、子供の学習支援、日常的な生活習慣、仲間との居場所づくり、進学に関する支援、高校進学者の中退防止に関する支援等、子供と保護者の双方に必要な支援を行ってくれる。
(7)一時生活支援事業……住居がない、ネットカフェ等の不安定な住居形態にあるような人に対して、一定期間、宿泊場所や衣食を提供してくれる。また、退所後の生活に向けて、就労支援などの自立支援も行ってくれる。
家族構成や資産状況によって利用できる制度、必要となる制度は違ってきますが、生活を立て直すための支援は整っているといえるのではないでしょうか。相談窓口は地域ごとに設けられています。
万一のときには厚生労働省の「自立相談支援機関 相談窓口一覧」(※)にてご確認ください。
仕事を失ってしまうと、パニックになってしまうのは仕方ありません。しかしながら、決して国は見捨てている訳ではありません。クヨクヨせずに、1日も早く生活が立て直せるよう、素早く行動していきましょう。
(※)厚生労働省 自立相談支援機関 相談窓口一覧(令和2年1月1日現在)
執筆者:飯田道子
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト