更新日: 2020.05.24 その他暮らし

増え続ける自然災害、命と財産を守るため、防災への意識を強く持ちましょう。

増え続ける自然災害、命と財産を守るため、防災への意識を強く持ちましょう。
これまでは、台風や地震などの自然災害に対して、予想外の被害が出たときには、「想定外」、「数十年の一度」という表現を使い、天災で仕方がないと見る傾向がありました。
 
しかし、最近の環境の変化は、大型台風が常態化し、豪雨による川の氾濫や崖崩れが頻繁に起こっています。自分の命と財産を守るため、防災に対する意識を強く持つことが必要です。
 
黒木達也

執筆者:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

河川の氾濫は常態化しつつある

2019年10月に日本を襲った台風19号は、日本各地に甚大な被害をもたらしました。長野県では千曲川、茨城県では那珂川、福島県では阿武隈川など、比較的大きな河川が氾濫しただけでなく、各地で中小の河川も氾濫、予想を超える被害をもたらしました。
 
特に被害が予測される地域で、河川の氾濫が起きてしまいました。たまたま東京の東部を流れている江戸川や荒川は、堤防などが強固であったため、何とか氾濫することなく被害は抑えられましたが、海面下の地域も多く氾濫すれば甚大な被害が予想されました。
 
これまで一級河川などは強固な堤防が整備されてきましたが、どちらかというと中小河川は、予算が少ないために十分な保全ができていたとはいえません。これまでも中小河川の氾濫は何度もありましたが、地域が限定されているために、あまり大きな話題とはなりませんでした。
 
ところが、2019年の災害は、中小河川だけではなく大きな河川にも及び、今後確実に起こると思われ、甚大な被害を及ぼす可能性があります。一方で堤防の強化などのこれらを手当てする予算が、とても潤沢とは思えない状態が続いています。

大規模な宅地開発が崖崩れを誘発

河川の氾濫と同様に、大雨の影響で増えているのが崖崩れです。日本は平地が少ないために山間部との境界付近に多くの宅地が造成されてきました。首都圏だけでなく、地方の中核都市でも、こうした地域で宅地造成が進められました。
 
例えば首都圏の川崎市や横浜市には、新しく開発された地域などで、崖の下や崖の上に多くの住宅がつくられています。
 
特に土地利用に関する規制が緩やかだったために、開発業者などが危険な土地を比較的安く購入し、住宅建設を進めてきました。住宅購入者も多少のリスクは覚悟の上で、通勤に便利で比較的安い物件を購入してきました。
 
ところが最近では、予想を超える大雨が降ると、このような土地は、実にもろいことがはっきりしてきました。広島県や福岡県、北海道などで、ここ数年に起こった崖崩れも、こうした危険地域でした。
 
神奈川県逗子市でも、朝の通学途中の道で高校生が突然崖崩れに見舞われ被害に遭う、といった悲しい事故も起こっています。
 
ある程度以上の雨が降ると災害が予測できるため、主要な道路などは「通行止め」などの措置をとり、被害を極力防ぐことができますが、住宅の場合は、住民は避難できても、住宅は被災し多額の損害が発生することになります。

危険地域の指定は行っているが

国土交通省や都道府県では、川の氾濫や崖崩れが起こりやすい地域のハザードマップを作製し、「危険ゾーン」の指定を行って注意を喚起しています。それを見れば、河川ではどこが氾濫しやすいか、崖崩れがどの地域で起きやすいかは理解できます。
 
しかし、そうした指定がされる地域に限って、河川の場合は、交通や商業の集積地だったりする傾向があります。また崖付近の地区では、「地価が下落する」と困るからといって、危険ゾーン(「土砂災害特別警戒区域」)の指定回避に動く住民もかなりいます。
 
国や地方自治体も、災害の規模がより大きくなっていても、巨額の予算を投じてインフラを整備することは難しくなっています。特にコロナ禍に見舞われ財政が苦しくなっているなかで、防災への投資だけでなく、他の老朽化したインフラ整備にも予算を振り向ける必要があるからです。
 
そのため自治体は災害を契機に、災害危険地域から比較的平坦で安全な地域への移転を促す方向に転換しつつあります。その背景には、日本各地で人口減少が進み、比較的安全な地域でも空きスペースが増えている背景があり、防災上の観点からも、危険地帯に住むことを避ける意味でも、この動きは強まると思われます

社会インフラ整備と安全な土地探し

自然災害に対処するため、安全性の高い地域への居住を目指すことは必要ですが、社会インフラの整備にも目を配る必要がありそうです。
 
例えば水道事業は小規模な自治体単位で行っているため、水道管の老朽化は深刻です。広域化の推進や料金値上げは避けられないといえます。さらにこれまで利用できた公共施設を閉鎖・縮小する動きも加速しています。
 
東京23区でさえも、小中学校の統廃合が進んでいます。人口減が進む地域を中心に、地方自治体の財政危機が深刻化しているためです。
 
さらに今後起こるであろう巨大地震に対する備えも必要になります。個人のレベルでも、居住地域の地盤がどの程度か、あるいは居住地域の建物が耐震・耐火構造になっているか、数多くの問題をチェックする必要があります。
 
そのため、結果として「住めない街」「住みにくい街」が多くなることも考えられます。多くの条件をクリアした「住みよい街」は、それほど多くはありません。しかし少しでも条件を満たしたより安全な地域に、多くの人が居住できるようにする努力は今後必要になります。
 
自然災害に強いだけでなく、社会インフラの整備の進んだ地域に人口が集積することで安定した居住空間ができ、効果的な街づくりも実現できます。あまりにも設計図のない従来の街づくりを反省し、今後「住みやすい街」をつくっていく必要があります。
 
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト


 

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