観光や交通・宿泊などの産業を支援できて、おトクなメリットもある……。それって、「Go To トラベル事業」だけなの?

配信日: 2020.12.04

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観光や交通・宿泊などの産業を支援できて、おトクなメリットもある……。それって、「Go To トラベル事業」だけなの?
「Go To トラベル事業」をめぐる混乱が続いています。制度運用上の問題が次々と発生したり、抜け道や意外な盲点、あるいは使い勝手の悪さなどもいろいろと指摘される状況です。
 
もともと半年間程度の時限的な景気対策の1つですが、制度設計に練り上げ不足な点が目立っていますね。
上野慎一

執筆者:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

Go To トラベル事業のおさらい

この事業の概要を改めておさらいしておくと【図表1】のとおりです。

給付上限額は、宿泊旅行で1泊2万円、日帰り旅行で1万円です。なお、2020年11月17日から1回の旅行での期間は7泊分までに制限されました。
 
第1弾の開始直前に東京都発着が除外され、それによるキャンセル料への方針がコロコロ変わりました。第2弾から始まった地域共通クーポンでも、実施初日までに対象施設に届かないケースが続出したようです。
 
また、割当配分された予算枠が僅少になった旅行業者が支援(給付)内容を独自に縮小する動きを始めたら、慌てて予算を追加配分したようなドタバタもありました。
 
さらに、合宿形式の運転免許取得なども制度の対象になると見解を示していたのに、批判の声が高まると突如対象外にしたのも混乱の1つでしょう。
 
半年間程度の時限的な制度なので、制度設計や運用指針が精度を欠くのは仕方ないのかもしれません。しかし予算額は約1兆3500億円と巨額です。まるで、巨大なビルを粗雑な設計に基づき簡素なプレハブ造りで急ごしらえしたような印象さえ感じられます。
 

「お先にトクだ値スペシャル」とは

コロナ禍とこれによるヒトの移動(インバウンドも含めて)の大きな制約などの影響は、観光だけではなく交通や宿泊などの産業にも大打撃となっています。
 
そしてGo To トラベル事業に頼るだけではなく、独自の制度やキャンペーンで急減した需要の回復をはかろうとする動きも見られます。
 
その1つがJR東日本の「お先にトクだ値スペシャル(乗車券つき)」です。片道の乗車券と指定席特急券が50%割引となるセット商品(※1)で、その概要は次のとおりです。
 
◇制限など
同社「えきねっと会員」になる必要があり、対象の列車・席数・区間も限定される
 
◇対象列車
JR東日本の新幹線および一部特急列車
 
◇設定期間
2020年8月20日から2021年3月31日乗車分まで
(一部区間は、開始日が2020年11月1日)
 
◇発売期間
乗車日1ヶ月前の午前10時00分から乗車日20日前の午前1時40分まで
 
上記のほかにも通常の切符に比べて制限(※2)があって、利用する場合はいろいろと注意が必要です。新幹線は、事前にICカードを登録する「チケットレス乗車」形式だけという、時流にも合ったやり方になっています。
 
何よりも、新幹線や特急が半額になるのはインパクトがとても大きいです。例えば、東京駅から新青森駅へは正規料金(大人)1万7470円のところが8730円に。通常の片道料金で往復できてしまいます。筆者も実際に利用してみましたが、使い勝手も問題なく、大きなおトク度を実感できました。
 

Go To トラベル事業と比べてみると……

Go To トラベル事業は、上限内ならば50%の支援(給付)が受けられます。ただし割引自体は35%で、残りの15%分は地域共通クーポンですが、こちらの使い勝手も決してよくありません。特に電子クーポンは当日の15時(日帰りは12時)にならないと発行されず、そもそもスマホなどを持ち歩かないと利用できないのです。
 
紙クーポンが事前に手元に届いていれば当日に現地ですぐに利用できるのと比べて、使いやすさのギャップが大きすぎます。しかも、紙か電子かは旅行業者や予約形態によって決まり、利用者は選択できません。
 
こうした状況を踏まえると、ご紹介したような割引キャンペーンを利用して往復の交通費はダイレクトに50%割引を受けて、宿泊はGo To トラベル事業で手配するという“合わせ技”のほうが、トータルでのおトク度合いや使い勝手が優れている場合もありそうです。
 

まとめ

例示したもの以外にも、JR系各社などで(内容に差はありますが)期間限定の割引キャンペーンを実施しています。
 
「自助・共助・公助、そして絆」~こんなスローガンで新内閣はスタートしました。「公助」の一種であるGo To トラベル事業だけではなく、コロナ禍の大きな被害者である産業でこのような「自助」の努力も行われています。
 
コロナ禍で大打撃を受けた観光や交通・宿泊などの産業を、合わせ技も駆使して「共助」し、人びとの「絆」も強まっていけば、それがベストでしょう。
 
[出典]
(※1)JR東日本「えきねっと」~「『お先にトクだ値スペシャル(乗車券つき)』とは」
(※2)上記(※1)の中の「お申込み前に必ずお読みください。詳しくはこちら」をクリック
 
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士


 

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