更新日: 2021.05.31 住宅ローン

住宅ローン控除額で損をしないために、気を付けておくべきこと

住宅ローン控除額で損をしないために、気を付けておくべきこと
住宅購入において住宅ローンを利用する場合は、一定の期間、住宅ローン控除の適用を受けることが可能です。契約した時期や入居時期、そして適用期間によって控除額の計算方法が異なりますが、なかには思っていたよりも還付される金額が少なくなるケースも見受けられます。
 
住宅ローン控除の仕組みをもう一度しっかりと理解し、控除額満額の還付を受けるためには、どのようなことに気をつけておく必要があるのかを知っておきましょう。
新井智美

執筆者:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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住宅ローン控除とは

住宅ローン控除とは、所定の要件を満たす住宅を購入し、さらに所定の要件を満たしたローンを組むと、住宅ローンの年末時点の残額の1%を所得税から控除することができる制度のことです。所得税から引き切れなかった部分は、上限までの範囲内で住民税から差し引くことができます。
 
(引用・一部抜粋:総務省「新築・購入等で住宅ローンを組む方・組んでいる方へ 個人住民税の住宅ローン控除がうけられる場合があります。」(※))
 

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住宅ローン控除の注意点

では、ここで住宅ローン控除の注意点についてしっかりと理解しておきましょう。
 

控除額は適用開始年分によって違う

住宅ローン控除は、期間が限定されている特例制度です。数年に一度、住宅ローン控除の適用期間を延長するか審議しており、特例の適用期間の延長だけでなく、控除額の上限や控除年数についても話し合われています。
 
そのため住宅ローン控除を適用する年分によっては、

・控除額の上限
・住宅ローン控除を受けることができる年数

以上のことが異なります。
 
過去に住宅ローン控除を適用された人と、自分が適用される金額が違うという可能性もあります。
 

控除額は住宅ローンの残高に比例している

住宅ローン控除の控除額は、住宅借入金の年末の残高に対して一定の割合(基本的には1%)を乗じた金額です。適用する年分の年末の残高に割合を乗じる計算ですので、年末時点のローン残高が少なくなれば、住宅ローン控除が適用される額も減額します。
 
また、住宅ローンの利息削減効果を得るために繰り上げ返済を行うと、住宅ローン控除の金額も減ることになります。繰り上げ返済を行う際には、金融機関に支払う利息と住宅ローン控除で還付される金額を比較しないと、状況によっては損をしてしまうことも考えられます。
 

還付される金額は納めた所得税が上限となる

所得税が還付されるのは、先に納めた所得税がある場合に限られます。住宅ローン控除は納税する所得税から差し引く税額控除の制度であることから、所得税の納税額が0円の場合であれば、還付される所得税は0円です。
 
会社員の場合は源泉徴収で先に税金を納めているため、確定申告で住宅ローン控除を適用することで税金が還付されます。
 
しかし、例えば自営業や不動産貸付業など、自身で確定申告を行い所得税を納めている場合は、住宅ローン控除が適用されることにより支払う金額は減少しても、原則として先に納めている所得税はないため、還付される金額は発生しません。
 
とはいえ、所得税から控除しきれなかった住宅ローン控除額は、住民税から差し引かれることになっているため、所得税の還付金額が0円であっても、確定申告で手続きを行いましょう。
 

適用1年目は確定申告をしなければいけない

会社員の場合住宅ローン控除は、会社の年末調整で手続きできますが、これは適用2年目以降に限られます。適用する1年目は必ず確定申告が必要であり、確定申告を行わなければ住宅ローン控除は受けられません。
 
また、2年目以降でも、何らかの理由で年末調整で住宅ローン控除の手続きが間に合わなかった場合は、確定申告により住宅ローン控除を受けることも可能です。その際に、対象年分の収入が確認できる書類(源泉徴収票など)に加え、税務署から送られてくる計算用紙と住宅ローンの残高証明書を用意し、確定申告の手続きを行うようにしてください。
 
(引用・一部抜粋:総務省「新築・購入等で住宅ローンを組む方・組んでいる方へ 個人住民税の住宅ローン控除がうけられる場合があります。」(※))
 

借り換えの際には注意が必要

住宅ローンの借換時には諸費用が発生しますので、その時のローン残高と比べ、借入額のほうが多くなることがあります。住宅ローンを借り換えた時の住宅ローン控除額は、以下のとおりです。
 

借り換え前と同じ金額もしくは少ない金額で借り換えたケース

借り換え後の住宅ローンの年末残高に対して、住宅ローン控除が適用となります。したがって、これまでと計算方法は変わりません。
 

借り換え前よりも大きい金額で借り換えたケース

借り換え前より大きな金額で借り換えたケースでは、住宅ローン控除適用額の計算方法は以下です。
 
新しいローンの年末残高 × 借り換え前のローンの残高 ÷ 新しいローンの借入額
 
例えば、借り換え前の住宅ローン残高が1500万円、借り換えの際の新しい住宅ローンの借入額が1700万円、そして借り換え後の新しい住宅ローンでの年末残高が1600万円だとすると、適用される住宅ローン控除額は、
 
1600万円 × 1500万円 ÷ 1700万円 = 約1400万
 
ということになります。
 

住宅ローン控除でよくある失敗

では、住宅ローン控除の適用の際に、起こりがちな失敗例をご紹介します。
 

住宅ローン控除の適用基準を満たす住宅でなかった

住宅ローンの適用要件を満たすには、延床面積の条件をクリアする必要があります。不動産業者がそもそも勘違いしている、微妙に面積が足りないなど、購入してから実は住宅ローン控除が使えなかったということがあります。
 
また、建築年月のチェックも大切です。建築年月が古い物件は住宅ローン控除が使えないケースがありますので、購入する前に住宅ローン控除の適用要件を満たす住宅かどうかを細かく確認するようにしましょう。
 

適用要件を満たさなくなってしまった

これは借り換えの際によくあるケースです。住宅ローン控除の適用要件として、利用している住宅ローンの借入期間が10年以上であるという項目があります。借換時に今よりも金利の低い住宅ローンに借り換え、毎月の返済額はそのままに設定したことで、借入期間が10年を満たさなくなってしまうということがあります。
 
もちろん、完済が早ければその分利息支払い分の削減効果も高くことから、有効な対策ではあります。しかし、借り換えをする検討する際は、事前に残りの住宅ローン控除の適用期間に受けることができる「控除額」と「利息削減額」を比較して、慎重に決めることが大切です。
 
(引用・一部抜粋:総務省「新築・購入等で住宅ローンを組む方・組んでいる方へ 個人住民税の住宅ローン控除がうけられる場合があります。」(※))
 

まとめ

住宅ローン控除額で損をしないために「建物の種類によって上限がある」ことや、「借りる人の所得税額と住民税額によって上限がある」ということをしっかりと理解しておくことが大切です。
 
さらに、11~13年目では控除額の計算方法が異なりますので、繰り上げ返済を行うほうがよい場合もあります。11~13年目の間に繰り上げ返済を行うのであれば、ローン残高が「(住宅取得等対価の額-消費税額)×2%÷3」を下回らない範囲で行うこともポイントです。
 
住宅ローン控除は最大で13年間使える減税制度です。最大限に利用することで数百万円単位での違いが生じることもありますので、ご紹介したポイントを理解して正しく活用しましょう。また、今後の制度改正における情報の収集も怠らないようにしましょう。
 
(※)総務省「新築・購入等で住宅ローンを組む方・組んでいる方へ 個人住民税の住宅ローン控除がうけられる場合があります。」
 
(引用・一部抜粋・参照)
国税庁「No.1213 住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」
 
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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