更新日: 2021.07.25 教育ローン
入学前に利用可能な大学進学費用の貸付制度って?
特に合格時に支払う入学金等は数十万円必要です。これらの項目を洗い出し早めに対策をたてましょう。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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目次
入学前の資金不足には、奨学金は利用できない
大学生の約3人に1人が利用している日本学生支援機構の奨学金は、高校3年の春に予約申し込みできます。ただし、実際に奨学金が振り込まれるのは、貸与型・給付型とも入学後ですので、入学前の資金不足には奨学金は利用できません。
そのため、入学前の資金不足は、教育ローンで賄うのが一般的です。教育ローンには銀行など民間金融機関の教育ローンと日本政策金融公庫の「国の教育ローン」があります。一般的に「国の教育ローン」のほうが有利な点が多いので、まずは「国の教育ローン」を検討しましょう。
「国の教育ローン」
扶養する子どもの人数に応じた世帯年収の上限が設けられています。子ども1人につき350万円(留学資金などは450万円)まで一括して借り入れることができます。返済期間は15年以内です。金利は固定金利1.66%(保証料別)となっています(2021年7月執筆時点)。
ひとり親家庭は金利、返済期間、保証料が優遇されているのが特徴です。自治体の中には利子を補充するところもあります。
資金が必要な2~3ヶ月前から申し込むことができ、融資決定後のキャンセルも自由です。申し込みから融資まで最短で20日かかりますので、受験が決まったら申し込んでおくとよいでしょう。
一般に私立大学では合格発表後1~2週間以内に、初年度納付金のうち、最小限「入学金および前期分学費」を支払う必要があります。合格後に「国の教育ローン」を申し込んだのでは納付期限に間に合いません。
(出典:日本政策金融公庫「教育一般貸付(国の教育ローン)」(※1))
労働金庫の「入学時必要資金融資」
低所得を理由に「国の教育ローン」を利用できない方が検討したいのが、労働金庫(ろうきん)の「入学時必要資金融資」(有利子)です。入学前の入学金・授業料を融資します。融資の返済は進学後に振り込まれる「入学時特別増額貸与奨学金」から一括返済されます。
したがって、日本学生支援機構の「入学時特別増額貸与奨学金」の採用候補者が利用できます。申込時に選択した金額まで借り入れが可能ですので、申込時に最高額の50万円を選んでおくとよいでしょう。
労働金庫に開設した本人名義の普通預金口座から、労働金庫が本人名義で学校に直接振り込みます。採用候補者の決定通知は10月下旬以降になります。場合によっては。11月以降合格発表がある総合型選抜の入学金等に間に合わない可能性がありますので、留意しましょう。
なお、採用候補者であっても、「国の教育ローン」が利用できる場合は、「入学時特別増額貸与奨学金」は利用できません。
(出典:全国労働金庫協会「その他 ろうきんの生活応援融資制度」(※2))
社会福祉協議会の生活福祉資金「教育支援資金」
低所得世帯を対象とした貸付制度(無利子)です。同種の貸付制度(例:母子父子寡婦福祉資金)がある場合は他の貸付制度の利用が優先されます。「教育支援資金」には、就学支度費と教育支援費があります。就学支度費は50万円以内、教育支援費は月額6.5万円(大学の場合)となっています。
なお、特に必要と認める場合は限度額の1.5倍まで借り入れることができます。
(出典:東京都社会福祉協議会「生活福祉資金貸付事業」(※3))
市区町村の母子父子寡婦福祉資金
ひとり親家庭のための貸付制度(無利子)です。教育資金としては、「就学支度資金」と「修学資金」があります。私立大学自宅外生の場合、就学支度資金は59万円以内、修学資金は月額14万6000円以内となっています。
ひとり親家庭に人気の高い貸付制度ですが、申し込みから融資まで1ヶ月以上かかったり、合格が確認できてからでないと申し込みを受け付けなかったりする自治体があるなど、自治体によって運用や寄り添う姿勢に大きな差があり、使い勝手がよいとは決していえません。
(出典:東京都福祉保健局「母子福祉資金・父子寡婦福祉資金の貸付け」(※4))
自治体の融資あっせん制度
自治体の中には住民サービスとして大学等の入学準備金が必要な方に金融機関を通じて資金を借りられるようあっせんしています。その際の利子は自治体が補助しますので、実質無利子で利用できます。お住まいの市区町村に制度があるか調べてみましょう。
まとめ
経済的に厳しいご家庭の場合、借り入れの手段は限られています。まずは、行政に相談してみることをおすすめします。福祉資金を利用する場合、審査および交付に時間がかかります。最低でも1ヶ月以上は覚悟しましょう。高校3年になったら早めに相談にいきましょう。
出典
(※1)日本政策金融公庫「教育一般貸付(国の教育ローン)」
(※2)全国労働金庫協会「その他 ろうきんの生活応援融資制度」
(※3)東京都社会福祉協議会「生活福祉資金貸付事業」
(※4)東京都福祉保健局「母子福祉資金・父子寡婦福祉資金の貸付け」
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。