児童養護施設の子ども・里子のみなさん、進学をあきらめないで!給付奨学金と修学支援の道

配信日: 2021.07.29

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児童養護施設の子ども・里子のみなさん、進学をあきらめないで!給付奨学金と修学支援の道
進路を考える上では、経済的な準備も必要になります。そのため、児童養護施設の子どもや里子などは経済的な事情から、高校卒業後の進学をあきらめていないでしょうか。
 
進学が可能になる給付奨学金や修学支援の制度を知り、経済的な困難が理由で進学をあきらめずにすむ方法を紹介します。
岩永真理

執筆者:岩永真理(いわなが まり)

一級ファイナンシャル・プランニング技能士

CFP®
ロングステイ・アドバイザー、住宅ローンアドバイザー、一般財団法人女性労働協会 認定講師。IFPコンフォート代表
横浜市出身、早稲田大学卒業。大手金融機関に入行後、ルクセンブルグ赴任等を含め10年超勤務。結婚後は夫の転勤に伴い、ロンドン・上海・ニューヨーク・シンガポールに通算15年以上在住。ロンドンでは、現地の小学生に日本文化を伝えるボランティア活動を展開。
CFP®として独立後は、個別相談・セミナー講師・執筆などを行う。
幅広い世代のライフプランに基づく資産運用、リタイアメントプラン、国際結婚のカップルの相談など多数。グローバルな視点からの柔軟な提案を心掛けている。
3キン(金融・年金・税金)の知識の有無が人生の岐路を左右すると考え、学校教育でこれらの知識が身につく社会になることを提唱している。
ホームページ:http://www.iwanaga-mari-fp.jp/

給付奨学金とは?

日本学生支援機構の奨学金には、返す必要がない「給付奨学金」があります。
 
■支援の対象になる学校
一定の要件を満たした大学、短期大学、高等専門学校(4年・5年)、専門学校に通う学生が支援を受けることができます。対象校は文部科学省のホームページ(※1)で調べることができます。
 
■給付要件
家計基準と学力基準があります。
 

家計基準

主に両親や面倒を見てくれている親戚など(生計維持者)の世帯の収入が一定以下であることが基準ですが、児童養護施設の子どもや里子については、本人自身が生計維持者とみなされて本人の収入が基準となります。
 
生計維持者の世帯収入によって、支援を受けられる金額が変わります。
 
児童施設の子どもや里子は、本人の収入によって判断されますので、仮に高校生でアルバイトをしていたとしても、最も多く支援を受けられる第Ⅰ区分といわれるケースが該当することが多いでしょう。その際の本人の年収の目安は、270万円以下(第Ⅰ区分・住民税非課税)になります。
 

学力基準

進学先で学ぶ意欲があることが条件です。成績だけで判断せず、レポートなどで学ぶ意欲が確認できれば対象になります。ただし、進学後にしっかり学習しないと支援が打ち切られることもあります。
 
■給付額
もし、給付額以上の金額が必要な場合は、卒業後に利子をつけて返すタイプの奨学金(貸与型奨学金・第二種)を併用もできます。
 
借りられる金額は、月額2万円から12万円まで1万円刻みで借りるか、または入学時増額制度(入学金の分を4月のみ多く借りることができる制度)を利用する場合は1回のみで上限は50万円です。
 


 
■申し込みの手順
高校3年生の4月に、通っている学校の先生に、進学をする際に給付奨学金を利用したい旨を伝えて、給付奨学金の申込書(案内書)をもらいます。
 
申込書(案内書)に従って、必要な書類を学校へ提出し、同時にインターネット(スカラネットと呼ばれる)で日本学生支援機構へ申し込みをします。
 
支援の対象になったら、10月頃に日本学生支援機構(以下「機構」)から学校などを通じて採用通知が届きます。進学後に機構へ進学届を提出し、奨学金の支給が開始されます。
 

修学支援制度とは?

給付奨学金が利用できる場合には、進学校の授業料の減免、つまり割引が利用できる仕組みもあります。
 
■適用される学校
給付奨学金の対象校と同様の文部科学省の対象機関のみですので、事前に確認しておく必要があります。現段階では、大学・短大の98%、高等専門学校は100%、専門学校の73%が対象機関になっています。
 
■授業料と入学金の減額金額(年額)
 


 
■申し込みの手順
給付奨学金の採用候補者決定通知を大学等へ提出します。併せて授業料等減免の申請を大学等へ行います。
 

最大の注意点とは?

注意しなくてはならない最も重要なことは、10月に給付型奨学生としての採用が決まっても、奨学金の給付は4月または5月から、毎月本人の口座に振り込まれるということです。
 
授業料の減額等も、大学によって扱いが異なりますが、入学前に大学等へ入学金等をいったん納付して、入学後に減免が確定した後に、減免相当額が還付される場合もあります。
 
つまり、入学前に入学金や前期授業料などの金額が必要になることも考えられます。また、受験料や受験校までの交通費などの受験費用も用意する必要があります。
 
入学前の費用の準備については、拙コラム「大学等進学を決めたら必要な入学前の費用、どう準備するの?」を参考にしてください。
 

まとめ

授業料や入学金は減免されるので、経済的負担は少なくなりますが、完全に無料になるわけではない場合が多いので、大学独自の奨学金や自治体、民間団体等による奨学金制度を併用することができれば、さらに負担を軽くできるでしょう。
 
そうすれば、給付奨学金を生活費や住宅費として活用できます。そうできない場合でも、利子をつけて返す貸与型奨学金を借りれば、進学することは不可能ではありません。
 
ただし、借りすぎには注意が必要ですので、日本学生支援機構(※2)の進学資金シミュレーターなどで学費と生活費を試算して、必要以上に借りない意識を持っておくことも大切です。
 
出典
(※1)文部科学省「支援の対象となる大学・短大・高専・専門学校一覧」

(※2)日本学生支援機構ホームページ

 
執筆者:岩永真理
一級ファイナンシャル・プランニング技能士

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