更新日: 2022.07.12 その他ローン
「ツケ払い」の次は「先払い買い取り」……名称が変わっても、どちらも『借金』
「現金を手にしたい、でも、借金はイヤ」という人のなかには利用したことがある方もいらっしゃるかもしれません。しかしこの方法、法外な手数料を支払うことになり、さらに生活に困窮する事態を招きました。形式が売買であっても、実態が貸し付けであれば、業者は貸金業法の制限を受けます。貸金業の登録を受けずに貸金業を営む業者は、違法なヤミ金です。
令和3年6月16日、消費者庁・金融庁・警察庁が、いわゆるツケ払い(または後払い)現金化について、注意喚起をする資料を公表しました。
さらに、また新たな貸付手法「先払い買い取り」現金化について、令和4年3月、金融庁・消費者庁・警察庁・財務局・日本貸金業協会が注意喚起を公表しています。
だまされないために、その手口を知っておきましょう。
執筆者:林智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。
新たな手法、「先払い買い取り」とは?
特徴としては、「キャンセルありきの取引である」ということです。そして、そのキャンセル料が高額であることです。実際に商品の発送をしなくても、つまり、売る商品がなくても、利用者はすぐに現金を手にすることができます。
具体的な取引は、
(1) 利用者は、商品画像を送って業者に買い取りを依頼します(実際には商品を売買しない前提)。
(2) 商品の先払代金として、業者が利用者にお金を渡します。
(3) 商品発送の期限が来たら、発送のキャンセルとして、キャンセル料と前払いの買取代金の返還額を業者に払います。
利用者は業者からお金を受け取りますが、高額なキャンセル料が発生する前提です。お金のやり取りを見れば、『利用者から業者にキャンセル料を支払う』取引が残ります。
そのため、業者は利用者の収入(代金を支払うことができるかどうか)を見ます。もとから買い取るつもりはないので、商品は関係がありません。それどころか、送る画像がない時は、業者から画像の提供をされることもあります。業者の目的はキャンセル料なので、商品売買の体を成している必要があるからです。
多重債務や個人情報が悪用される危険
商品買い取りの体を成していますが、業者が欲しいのは違約金(キャンセル料)です。
依頼者も、とにかくすぐに現金を手にしたいからと、何も考えずに業者に依頼しますが、期限には高額なキャンセル料を支払わなければなりません。その分をどこからか借り入れする必要が出てきます。これでは、多重債務まっしぐらです。
それだけではありません。取引する際に相手に伝えた個人情報を悪用される、例えばインターネット上でさらされる恐れがあります。また、そのほかのトラブルや犯罪に巻き込まれる危険性もあります。
そもそも、この取引は安全なのでしょうか。金融庁ホームページの「商品の買取りをうたって高額な違約金を請求する悪質な業者にご注意ください!」では、以下のように明記しています。
『商品売買を装っていても、その経済的な実態が貸付けであり、業として行う場合には、貸金業に該当するおそれ(※)があります。
(※)個別具体的な実態を踏まえて判断する必要があります。貸金業登録を受けずに貸金業を営む者は、違法なヤミ金融業者(罰則の対象)です。(10年以下の懲役、もしくは3000万円以下の罰金、または、その併料(貸金業法第47条第2号))』
(一部抜粋:金融庁 商品の買取りをうたって高額な違約金を 請求する悪質な業者にご注意ください!)
生活の立て直しを考える
お金に困ったら、目先のことにとらわれず、まずは公共機関に相談しましょう。生活困窮者自立支援制度により、自分の力で生活を立て直すことができるようになるために、一人ひとりに合った計画を立て、金銭面で必要な支援をしつつ、就労支援を行う場合もあります。生活困窮者自立支援制度については、お住まいの都道府県や指定都市に問い合わせてみましょう。
また、「利用している融資がヤミ金かも」と思ったら、消費者ホットライン、警察総合相談、お住まい都道府県・市区町村の窓口へ相談してください。
貸金業登録がされている業者かどうかは、金融庁ホームページの「登録貸金業者情報検索サービス」で確認できます。活用しましょう。
出典
金融庁 商品の買取りをうたって高額な違約金を請求する悪質な業者にご注意ください! ~いわゆる「先払い買取」現金化に要注意~
金融庁 貸金業法のキホン
金融庁 登録貸金業者情報検索サービス
厚生労働省 生活困窮者自立支援制度
厚生労働省 お金、仕事、住宅など、生活に関するお悩みはこちらの窓口にご相談ください。/自立相談支援機関 相談窓口一覧(令和4年6月1日現在)
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者