更新日: 2023.02.13 教育ローン
日本学生支援機構の第一種奨学金を借りる前に知っておきたいこと
誰でも無利子の第一種奨学金のほうを借りたいと思いますが、有利子の第二種奨学金と比べ選考基準が厳しく、さまざまな制限があります。
一方、第二種奨学金にはないメリットもあります。まとめて解説します。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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第二種奨学金との併用は最も家計基準が厳しい
第一種奨学金と第二種奨学金の両方の貸与を受けることを併用貸与といいます。
併用貸与の場合、学力基準は第一種奨学金と同じ「高等学校等における申込時までの全履修科目の評定平均値が、5段階評価で3.5以上」ですが、家計基準は第一種奨学金よりも厳しくなっています。
例えば、予約採用の場合、本人、親(1)(会社員)、親(2)(無収入)、中学生の4人家族の家計基準は、第二種奨学金が1100万円程度、第一種奨学金が747万円程度に対し、併用貸与は686万円程度と最も厳しくなっています。
第一種奨学金の特例
第一種奨学金については、次のA~Cのいずれかの条件に該当し、大学等へ進学後も優れた成績を修める見込みがある等として学校から推薦されれば、学力基準(3.5以上)を満たすものとして扱われます。また、 家計基準も満たすものとして扱われます。
A 生計維持者(原則父母)の住民税(市区町村民税所得割)が非課税(0円)である
B 生計維持者(原則父母)が生活保護を受給している
C 「社会的養護を必要とする人」である
貸与月額の制限
第二種奨学金は2万円~12万円(1万円単位)から自由に貸与月額を選択できます。一方、第一種奨学金は、進学先の学種、通学形態、国公私立の別により、選択できる貸与月額が決まります。
例えば、私立大学に自宅通学する場合、選択できる貸与月額は5.4万円、4万円、3万円、2万円の4つの貸与月額のいずれか1つです。
さらに、最高月額である5.4万円の利用は併用貸与の家計基準を満たしている必要があります。
給付奨学金との併用には制限がある
給付奨学金と第二種奨学金の併用には制限がありません。一方、給付奨学金と第一種奨学金の併用は、給付奨学金の支援区分等に応じて第一種奨学金の貸与月額が調整されます。
例えば、私立大学に自宅通学する場合、調整後の第一種奨学金の貸与月額は第I区分では0円、第II区分では0円、第III区分では2万1700円となります。
なお、生活保護(扶助の種類を問いません)を受けている生計維持者と同居している人および社会的養護を必要とする人で、児童養護施設等から通学する人は、第III区分が2万円または3万300円となります。
所得連動返還方式を選択した場合、保証制度の制限がある
第二種奨学金は返還方式として、「定額返還方式」しか選べません。第一種奨学金については、「所得連動返還方式」または「定額返還方式」のいずれか1つを申込時に選びます。
ただし、「所得連動返還方式」を選択した場合、保証制度は機関保証とする必要があります。また、減額返還制度は利用できません。
なお、機関保証制度とは、保証機関(公益財団法人日本国際教育支援協会)に保証を依頼し、連帯保証を受けてもらう制度です。保証を受けるためには一定の保証料の支払いが必要となります。
減額返還制度とは、傷病、経済困難等の事由により返還月額を減額すれば返還できる場合に、願い出により月々の返還額を2分の1または3分の1に減額し、適用期間に応じた分の返還期間を延長して返還する制度をいいます。
猶予年限特例
卒業後、返還が困難になった場合の救済措置として、本人からの願い出により、返還期限の猶予を認める「返還期限猶予制度」や一定期間、毎月の返還額を減額する「減額返還制度」があります。 いずれも、適用期間の制限があります。
一方、猶予年限特例とは、無利子奨学金(第一種奨学金)の貸与を受けた生徒の中で、申込時、特に家計状況の厳しい世帯の生徒の場合には、本人が卒業後に一定の収入を得るまでの間は、願い出により、特例として適用期間の制限なく返還期限猶予を受けることができる制度です。
出典
日本学生支援機構 ホームページ
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。