更新日: 2023.04.28 住宅ローン
住宅ローンの繰り上げ返済にメリットはある? 「控除期間内」「終了後」それぞれのケースを解説
また、金利動向も不透明感を増しており、住宅ローンの返済計画にも無視できない影響を及ぼす恐れがあります。
住宅ローン金利が上昇した場合、繰り上げ返済によって返済負担を抑えたり計画通りの返済を行うようにしたりしますが、繰り上げ返済にもメリット・デメリットが存在します。
繰り上げ返済のメリット・デメリットについて住宅ローン控除期間内に行う場合と控除終了後のそれぞれのタイミングで行うケースについて解説します。
執筆者:菊原浩司(きくはらこうじ)
FPオフィス Conserve&Investment代表
2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級
製造業の品質・コスト・納期管理業務を経験し、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルを重視したコンサルタント業務を行っています。
特に人生で最も高額な買い物である不動産と各種保険は人生の資金計画に大きな影響を与えます。
資金計画やリスク管理の乱れは最終的に老後貧困・老後破たんとして表れます。
独立系ファイナンシャルプランナーとして顧客利益を最優先し、資金計画改善のお手伝いをしていきます。
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目次
長期金利は国際情勢の影響を受けやすい状態
住宅ローンの金利には変動金利と固定金利があり、それぞれ算出基準となる金利が異なります。
変動金利は短期プライムレートを算出基準として半年ごとに金利が見直されます。一方、国債金利を算出基準とする長期金利は、上昇を続けるアメリカ国債との金利差拡大を抑えるため上昇局面に入っていました。
しかし、アメリカの大手銀行が相次いで破たんしたことから金融不安が広がり金利上昇のペースが鈍りだすといった不安定な状態が続いています。
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金利上昇局面では住宅ローンの残高・金利変動に注意
変動金利や5年・10年といった固定期間選択金利の場合、住宅ローン利用期間中に金利が上昇すると返済総額が増加しますが、この増加額は残高と返済期間が長いほど大きくなります。
変動金利の場合は、金利が上昇しても返済額の上昇を一定額にするという激変緩和措置がありますが、最終的な返済総額は変わりません。
近年、住宅ローン金利は低水準が続いていたことと不動産価格の上昇から住宅ローン借入残高が膨らんでいる家庭も多くあります。
金利が上昇に転じた場合、返済が滞るなど家計への大きな影響を与える恐れがあります。低金利で住宅ローンを利用している方ほど金利上昇リスクへの備えが重要です。
金利上昇対策には繰り上げ返済?
繰り上げ返済のメリットは、繰り上げ返済した金額分の利息支払が減少するため月々の返済負担が小さくなったり、当初の返済期間通りに完済できたりするようになります。
しかし、繰り上げ返済のタイミングによってはかえって損をしてしまったり、思いもよらぬリスクを招いてしまったりする恐れがあります。
住宅ローン控除期間内と終了後の繰り上げ返済する際のデメリットは?
まず、住宅ローン控除期間内に繰り上げ返済を行った場合。繰り上げ返済を行うと税額控除の算出根拠となる住宅ローンの借入残高が減少してしまうため、節税効果も小さくなってしまいます。
ひとたび繰り上げ返済を行ってしまうと節税効果は二度と戻らないためご自身の所得税・住民税の税負担増加額と住宅ローンの金利負担の軽減額を比較することが大切です。
この節税効果のデメリットは控除期間終了後には問題になりません。しかし、繰り上げ返済にはもう1つのデメリットが存在します。
それは、団信付きの住宅ローンを利用している場合、繰り上げ返済を行うと家計から現金が流出し、万が一の際に団信から支払われる保険金も減少してしまうため、生命保険としての効果が低下してしまうというデメリットです。
そのため、扶養している家族・親族がいる場合、家計を支えている方に万が一のことが生じた場合も遺族が生活を続けられるよう生命保険などで遺族の生活費を準備しておく必要があります。
繰り上げ返済によって生命保険効果が減少した場合、その減少分を補うために生命保険を追加したり取り崩した預貯金を再度形成したりする必要がありますが、対策完了までは生命保険が不足するリスクを抱えることになります。
このリスクが長期化しないよう繰り上げ返済前に対策を立てておくことをおすすめします。
まとめ
各国の金融政策や金融不安によって金利が変動しやすい状況となっています。
住宅ローンの金利が上昇した場合、変動金利や固定期間選択型で住宅ローンを利用している方は金利上昇によって返済総額が増加し当初定めた返済期間に完済できなくなったり、月々の返済負担が大きくなったりする恐れがあります。
金利上昇の影響は融資期間と残高が多いほど影響が大きくなるため、控除期間完了直後などで節税メリットが薄まるタイミングで検討してみるとよいでしょう。
しかし、完済が間近であったり健康状態に懸念がある場合は無理して繰り上げ返済を行ったりすると手持ちの現金が減少するデメリットのほうが目立ってきます。
住宅ローンには節税と生命保険といった側面もあります。繰り上げ返済は金利負担などを軽減させますが節税・生命保険効果を弱めます。繰り上げ返済のメリット・デメリットを比較・検討してから判断するようにしましょう。
執筆者:菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表
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