更新日: 2023.09.21 その他ローン

50万円の臨時収入、奨学金の返済と資産運用をするのではどちらがよい?

50万円の臨時収入、奨学金の返済と資産運用をするのではどちらがよい?
臨時収入があったとき、その使い道はいろいろあるかと思います。例えば、奨学金の返済をしている人であれば、臨時収入を奨学金の返済にあてようか、それとも資産運用に回した方がよいか、悩んでいるのではないでしょうか? どちらを選択したらよいかを、この記事では考えてみます。
小山英斗

執筆者:小山英斗(こやま ひでと)

CFP(日本FP協会認定会員)

1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ

人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。

「未来が見えるね研究所」では、多くの人と多くの未来を一緒に描いていきたいと思います。
https://miraiken.amebaownd.com/

そもそも奨学金制度とは?

奨学金制度とは、学生が経済的な理由で進学をあきらめることがないように、資金となる奨学金の給付や貸与によって家庭の経済的負担を軽くし、進学の支援をするための制度です。奨学金制度は地方公共団体や大学、民間企業といったさまざまな団体で実施されています。
 
最も利用者の多い独立行政法人日本学生支援機構の奨学金制度では、令和3年度において、大学や大学院、高等専門学校といった高等教育機関に在籍している学生のおおむね3人に1人が利用しています。
 
奨学金は一般的に「給付型奨学金」と「貸与型奨学金」の2つに分類されます。
 
表1

給付型奨学金 返済の必要のないお金
貸与型奨学金 無利子または低金利で貸し出されるお金で、返済の必要がある

 
給付型では返済義務は生じませんが、貸与型の場合は借りているお金であるため、学校を卒業した後には返済義務が生じます。それでも、条件次第では無利子であったり、利息が付く場合でも低金利であったりと負担軽減が図られています。
 

日本学生支援機構の貸与型奨学金での平均貸与総額は?

日本学生支援機構の貸与型奨学金には「第一種奨学金(無利子)」と「第二種奨学金(有利子)」の2種類がありますが、2022年3月に貸与が終了した奨学生(大学/学部)の、1人当たりの平均貸与総額は表2のようになっています。
 
表2

第一種奨学金 216万円
第二種奨学金 337万円

(日本学生支援機構資料より)
 
なお、高等教育を終えた人の2種類の貸与型奨学金を合わせた平均借入額について、現在返還中(猶予制度利用や滞納中も含む)の人を対象に、労働者福祉中央協議会が2022年9月に実施した「奨学金や教育費負担に関するアンケート調査」で確認すると、借り入れ総額の平均は310万円となっています。また、借入総額が500万円以上の人も1割ほどいることが分かります。
 

臨時収入の使い道

貸与型奨学金を利用している場合、借りたお金は返済する必要があります。もし、臨時収入があった場合、貸与型奨学金の返済に充てることもできますが、場合によっては資産運用に回すことも考えられます。それぞれのメリットを比べてみましょう。
 

臨時収入を奨学金返済にあてるメリット

臨時収入を奨学金返済に充てることで、将来の返済負担を減らすことができます。日本学生支援機構の第二種奨学金の場合では、有利子で貸与された奨学金の残高に対して表3の貸与利率を乗じた利息も生じますので、利息分を含めた返済負担の軽減ができます。
 
表3

利率固定方式 0.905%
利率見直し方式 0.300%

(※令和5年3月に卒業した場合。利率見直し方式は、おおむね5年ごとに見直された利率が適用される)
 
例えば表4の条件で、臨時収入50万円を、奨学金の返済開始直後に繰り上げ返済にあてた場合、どのくらい将来の返済負担が軽減されるか試算してみます。
 
表4

利用している奨学金の種類 第二種奨学金
貸与額 300万円
返済期間 15年間
利率 0.905%(利率固定方式)

(筆者試算)
 
表5

臨時収入の50万円 返済総額 うち利息分 月々の返済回数
返済にあてなかった場合 320万9276円 20万9276円 180回
返済にあてた場合 314万3659円 14万3659円 149回
▲6万5617円 ▲6万5617円 ▲31回

(筆者試算)
 
上記の試算では、50万円を返済開始当初に貸与型奨学金の繰り上げ返済にあてることで、返済総額で約6万5000円の負担軽減となり、月々の返済回数も31回減るので、返済期間も約2年半短縮されることが分かります。
 
なお、繰り上げ返済は、返済のタイミングが早いほどその後の負担軽減効果が大きくなります。そのため、上記試算における繰り上げ返済のタイミングが遅ければ遅いほど、軽減される返済総額や返済回数の差は、上記試算結果より小さくなります。
 

臨時収入を資産運用に回すメリット

臨時収入を資産運用に回すことで、将来の資産が増えることが期待できます。
 
仮に運用利回りを年2%とします。これに50万円を投資して15年間運用した場合、税金を考慮しない元本+運用収益の合計は約67万2930円となります。運用収益は約17万2930円なので、この運用収益にかかる税金(20.315%)を考慮した税引き後利益は、約13万7800円となります。
 
貸与型奨学金返済の試算との比較で分かることは、貸与型奨学金の貸与利率(無利子の貸与型奨学金であれば0%)よりも高い運用利回りで資産運用ができるのであれば、奨学金の返済にあてずに資産運用に回すほうが、メリットがあるということになります。
 
ただし、資産運用は必ずしも利益が出るとは限りません。投資対象によっては元本割れが起きる場合もあるので、その点を充分に理解した上で資産運用をすることが重要となります。
 

臨時収入は、返済と資産運用のどちらにあてたらよい?

臨時収入があったときに、奨学金の返済にあてる場合と、資産運用に回す場合とでの、メリットをみてきました。どちらがよいかはその人にもよりますが、安全を優先したい人であれば「奨学金の返済」、リスクを取ってでも資産を殖やすことを優先したい人であれば「資産運用」が選択肢となるでしょう。
 

まとめ

奨学金の返済と資産運用、どちらを実施するにしても、日々の家計に余裕があることがその前提になります。日々の家計に余裕がないような場合は、臨時収入といったある程度、自由になるお金は手元に置いておくようにすることで、急な出費が必要になった場合などの助けになります。
 
また、貸与型奨学金は借金ですので、損得で考えるよりも「借金を返してしまいたい」という気持ちから、臨時収入などを返済にあてようとすることもあるかと思います。いずれにしても、家計状況も踏まえて、臨時収入の使い道を考えるようにしましょう。
 

出典

独立行政法人日本学生支援機構 奨学金事業への理解を深めていただくために
労働者福祉中央協議会 2023年3月9日プレスリリース「奨学金や教育費負担に関するアンケート調査」の結果
 
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)

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