更新日: 2023.10.25 教育ローン
手取りが下がって奨学金の返還が「苦しい」です。一時的にでも返還を止められませんか?
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
◆お問い合わせはこちら
https://www.secure-cloud.jp/sf/1611279407LKVRaLQD/
2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
奨学金の返還は一時的に止めることができる
奨学金の返還は定められた返還計画に沿って行うことが必要です。しかし、人は意図しないタイミングで手取りが減少したり、収入が途絶えたりすることもあります。
もし奨学金の返還が難しくなった場合は、奨学金の返還方法を変更することを検討してみてください。日本学生支援機構の奨学金の場合、「減額返還制度」と「返還期限猶予」という制度によって、返還を一時的に止めたり、月々の返還額を減らしたりすることができます。
減額返還制度
減額返還制度とは、経済的な理由から奨学金の返還が困難な場合に、月々の返還額を減少させるものです。とはいえ、奨学金の返還が必要な残高自体が減少するわけではありません。月々の返還額が減少した分、返還期間は長くなります。
具体的には、1回当たりの返還月額を2分の1ないし3分の1に減額することができ、最長15年間それを続けられるものになります。
例えば、毎月1万2000円程度を返還している方であれば、それを6000円程度から4000円程度に減らし、その分返還期間を延ばす、という具合です。詳細については日本学生支援機構へ問い合わせてください。
返還期限猶予
減額しても返還自体が難しいという場合は、返還自体を止めることもできます。この仕組みを「返還期限猶予」といいます。返還期限猶予は通算で120ヶ月まで行うことができます。
減額返還制度と同様に奨学金の残高自体は減らないため、猶予を受けた分、完済までの月日は長くなります。
例えば、毎月約1万2000円返済していた方が、12ヶ月の返還期限猶予を受けた場合は、完済のタイミングが12ヶ月先になるという具合です。
なお、元金や利子が免除されるわけではないため、減額返還制度と比較した上で検討するといいでしょう。手続きの方法や詳細については、日本学生支援機構へ問い合わせてください。
奨学金の支払いが滞るとどうなる?
奨学金の支払いが滞ると、本人だけでなく保証人や連帯保証人に対しても、その旨の連絡が送られます。そして、最終的には本人や保証人、連帯保証人の財産が差し押さえられ、強制執行がなされることもあります。
加えて、延滞している期間に応じた延滞金も課されます。参考までに延滞金は、令和2年3月28日以降は年3%の割合で生じるとされています(第二種奨学金の場合)。仮にこの間に20万円分延滞したとすれば、1年当たり6000円の延滞金が生じることになります。
また、延滞している事実は信用情報機関にも登録される可能性があります。信用情報機関に一度登録されると、住宅ローンをはじめお金を借りる際の審査に影響し、ライフプランを変更せざるを得ない可能性もあります。
※一度登録された情報は、延滞中はもちろんのこと、延滞を解消しても一般のクレジットカードと同様に約束どおり返済している人の情報として登録され続け、返還完了の5年後に削除されます。
それに対して、所定の手続きを経て返還を一時的に止める場合や、減額して返還する場合は、信用情報機関に延滞として登録されることがありません。返済を滞らせる前に、必ず手続きをするべきです。
まとめ
手取りが下がって奨学金の返還が苦しくなった場合、減額返還制度ないし返還期限猶予の手続きをするべきです。返還期限猶予であれば、返還そのものを一時的に止めることもできるため、返済に困っている場合は特に有効です。
手続きを経ないまま奨学金の返済が滞ると、年3%の割合で延滞金が生じる、場合によっては信用情報機関に登録されるなどの不利益が生じます。各制度の詳細など奨学金についての疑問があれば、日本学生支援機構へ相談してみてください。
出典
独立行政法人日本学生支援機構 月々の返還額を少なくする(減額返還制度)
独立行政法人日本学生支援機構 返還を待ってもらう(返還期限猶予)
独立行政法人日本学生支援機構 延滞した場合
※2023/10/25 記事を一部修正いたしました。
執筆者:柘植輝
行政書士