更新日: 2023.12.16 教育ローン

第二種奨学金で借りた利子付きの250万円。無事就職したけれど、返済までどのくらいかかる?

第二種奨学金で借りた利子付きの250万円。無事就職したけれど、返済までどのくらいかかる?
大学などに通う学生の3人に1人が利用(※1)している奨学金ですが、貸与型の奨学金は卒業後に返済する必要があります。
 
今回は、日本学生支援機構が提供している奨学金について、制度の概要と、貸与型奨学金の返済方法について解説します。
辻章嗣

執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

第二種奨学金とは

日本学生支援機構が提供している奨学金には、大きく分けて、給付型と貸与型の2種類があります。そして貸与型の奨学金には、無利子の第一種奨学金と有利子の第二種奨学金があります(※1)。
       

1. 選考基準

それぞれの奨学金を利用する上では、利用する学生の学力と学生の生計を維持している世帯の収入に制限があります(※1)。
 
給付型の奨学金を利用できるのは、住民税非課税世帯およびそれに準ずる世帯で、一定の成績を修めている、または進学先で学ぶ意欲がある学生に限られます。
 
貸与型の奨学金に関する制限は、給付型に比べると緩和されています。特に第二種奨学金は、世帯収入の制限が緩やかで、学習成績も平均水準以上であれば利用することができます。このため、多くの学生が第二種奨学金を利用しています。
 

2. 奨学金の額

給付型と貸与型の第一種奨学金の額は、通学先(国公立または私立)や通学形態(自宅または自宅外)により定額、または上限が決まっています。一方、第二種奨学金にはその区別がなく、最大で月額12万円となっています。
 
図表1

区分 種類 利子 奨学金の月額(私立大学の例)
自宅通学 自宅外通学
給付型 給付奨学金 3万8300円 注 7万5800円 注
貸与型 第一種奨学金 無利子 2万~5万4000円 2万~6万4000円
第二種奨学金 有利子 2万~12万円
注:住民税非課税世帯(第Ⅰ区分)の場合

(※1を基に筆者作成)
 

第二種奨学金の返還

奨学金は、返済された奨学金が次世代の学生への奨学金の原資となることから、返済することを「返還する」と称しています(※1、2)。
 

1. 利率方式の選択

第二種奨学金の利率には、利率固定方式と利率見直し方式があり、奨学金を申し込む際にいずれか一方を選択します。なお、利率は、年3%が上限となっています。令和5年3月に卒業した学生に適用される利率は、利率方式ごとに図表2のとおりとなっています。
 
図表2

方式 内容 適用利率
利率固定方式 貸与終了時に決定した利率が、返済完了まで適用 0.905%
利率見直し方式 貸与終了時に決定した利率を、5年ごとに見直し 0.300%

(※2を基に筆者作成)
 

2. 返還方法と返還期間

第二種奨学金の返済方法は、定額返還となり、貸与を終了した翌月の1日から利子が発生します。返還期間は貸与総額(借用金額)により異なり、貸与総額を図表3の「奨学金返還年数算出表」に定める割賦金の基礎額で割った年数(少数点以下切り捨て)となります。
 
図表3

貸与総額 割賦金の基礎額
20万円以下 3万円
20万円超40万円以下 4万円
40万円超50万円以下 5万円
50万円超60万円以下 6万円
60万円超70万円以下 7万円
70万円超90万円以下 8万円
90万円超110万円以下 9万円
110万円超130万円以下 10万円
130万円超150万円以下 11万円
150万円超170万円以下 12万円
170万円超190万円以下 13万円
190万円超210万円以下 14万円
210万円超230万円以下 15万円
230万円超250万円以下 16万円
250万円超340万円以下 17万円
340万円以上 総額の20分の1

(※2を基に筆者作成)
 
例えば、貸与総額が250万円であった場合は、下式のとおり返還期間が15年となります。
 
貸与総額÷割賦金の基礎額=250万円÷16万円=15.625
 
従って、250万円貸与された場合の返還年数は、15年になります。
 

3. 返還方式と返還期日

第二種奨学金の割賦は、月賦返還または月賦・半年賦併用返還のいずれかを選択することができます。
 
返還は、貸与終了の翌月から数えて7ヶ月目の月(3月に貸与終了した場合は10月)の27日から始まり、毎月27日に月賦分が振替用口座から引き落とされます。併用返還の場合は、1月と7月の27日に、月賦分と半年賦分の合計額が引き落とされます。
 

4. 返還月額

月賦返済の場合は、貸与総額(借用金額)および貸与総額に応じた返還回数で元利均等計算して得た額に、据置期間(6ヶ月分)の利息を返還回数で割った額を上乗せした額を、毎月返還します。
 
なお、併用返還の場合は貸与総額(借用金額)を二分し、月賦分、半年賦分の返還月額を、それぞれの返還回数により算出します。
 
例えば貸与総額250万円、利率固定方式の利率0.905%、10月から15年間かけて返還した場合、返還月額は図表4のとおりとなります。
 
図表4

    

割賦方式 月額 返還期間:15年
通常月 最終月 返還回数 返還総額
月賦 1万4919円 1万4977円 180回 268万5478円
併用 月賦分 7459円 7533円 180回 268万5930円
半年賦分 4万4774円 4万4790円 30回

(※3を用いて筆者が算出して作成)
  

まとめ

日本学生支援機構が運営している奨学金には、給付型と貸与型があります。給付を受ける学生の学力と、学生の生計を維持している世帯の収入には、制限が設けられています。また、貸与型の奨学金で有利子の第二種奨学金は、利用制限が一番緩く、多くの学生が利用しています。
 
第二種奨学金の利率固定方式を選択し、総額250万円貸与された学生が2023年3月に卒業した場合、2023年10月から15年間かけて返還することになります。月賦で返還した場合の返還額は月額1万4919円で、返還完了時期は2038年9月になります。
 
奨学金は、経済的に進学が困難な学生にとってはなくてはならない制度ですが、貸与型の奨学金は学生本人が卒業後に長期間にわたり返済しなければなりません。特に第二種奨学金は、毎月最大12万円まで利用することができますが、返済時の負担を考慮して、必要最小限の金額に止めることをお勧めします。
 
なお、奨学金制度は、毎年のように見直されています。文部科学省(※4)や日本学生支援機構(※5)のホームページから最新情報を確認することをお勧めします。
 

出典

(※1)日本学生支援機構 奨学金事業への理解を深めていただくために
(※2)日本学生支援機構 2023年度返還のてびき 2023年10月から2024年9月貸与終了者用
(※3)日本学生支援機構 奨学金貸与・返還シミュレーション
(※4)文部科学省 大学・大学院、専門教育
(※5)日本学生支援機構 奨学金
 
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

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