更新日: 2023.12.26 教育ローン
奨学金を借りるときに知っておきたいこと。そもそも奨学金って? どこに申し込めばいいの?
家庭からの支援も期待できず、かといってアルバイトを増やすと授業に差し支えてしまうので、学生は奨学金を借りないと進学できない実態があります。この記事では、奨学金を借りるときに知っておきたいこととして奨学金の基礎知識を解説します。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
奨学金のタイプ
奨学金のタイプは大きくわけて、貸与型と給付型があります。ほとんどが貸与型です。貸与型は借りた金額を卒業後一定の据置期間を経て毎月返済するタイプの奨学金です。貸与型には、借りた金額(元金)だけを返済する無利子のものと、元金に利子を加えて返済する有利子のものがあります。
無利子の奨学金の中には、看護師や保育士など医療系・福祉系の国家資格をめざす学生を支援するものは、養成機関を卒業後指定された施設等で一定期間以上勤務すれば返済が免除になる修学資金もあります。
また、自治体の奨学金の中には、無利子で利用できるひとり親を対象とした「母子父子寡婦福祉資金」や、低所得者を対象と社会福祉協議会の「教育支援資金」もあります。貸与型奨学金の支給方法は、一定額の月額貸与が多いですが、入学準備金としてまとまった金額を支給するものもあります。
一方、給付型は所定の金額を支給するもので、原則、返済の必要はありません。
奨学金(貸与型・給付型)を受給するには、一般に家計基準と学力基準の両方を満たす必要があります。どちらの基準を重視するかは運営団体により異なります。家計基準では年収・所得の上限が決められています。一般に貸与型に比べて給付型のほうが選考基準は厳しくなっています。
採用人数、支給金額、支給期間もさまざまです。出身地や出身高校、学部など対象者が指定されているものもあります。他の奨学金と併用できるかもさまざまです。
奨学金の運営団体
奨学金の運営団体には主に次のものがあります。
●日本学生支援機構(国)
●地方自治体
●大学等
●民間育英団体
●新聞社
このうち最も利用されているのが日本学生支援機構の奨学金です。大学生のおおむね3人に1人がこの奨学金を利用しています。ここでは、運営団体ごとの奨学金の特徴を見てみましょう。
■日本学生支援機構の奨学金
奨学金には、返還不要の給付奨学金と返還が必要な貸与奨学金があります。貸与奨学金には無利子の第一種奨学金と有利子の第二種奨学金があります。さらに、これら毎月振り込まれる奨学金の上乗せとして、入学月の基本月額に増額して貸与を受ける有利子の入学時特別増額貸与奨学金があります。
有利子の奨学金の利率は貸与終了時(卒業など)に決まるので、年3%を超えないよう法令で定められています。在学中は無利息です。利率の算定方式には固定利率方式と利率見直し方式(おおむね5年ごとに利率を見直し)があり、令和5年3月貸与終了者の利率は利率固定方式が0.905%、利率見直し方式が0.300%と非常に低利です。
返還が困難な場合は、申請により救済措置として「減額返還制度」や「返還期限猶予制度」が利用できます。他の貸与型奨学金にない特長です。
日本学生支援機構の給付奨学金の対象者は、国または自治体から確認を受けた進学先または在学中の大学等へ申請することで授業料等の減免を受けられることが特徴です。ただし現在、家計基準は「住民税非課税世帯および準ずる世帯」となっており、低所得世帯しか利用できません。
■地方自治体の奨学金
本人または保護者がその地方自治体に居住している、あるいはその地方自治体の出身者だけが利用できるのが特徴です。支給形態は無利子による一定金額の月額貸与が多いです。
入学手続き時に必要な資金を、地元の信用金庫から低利で借りられるように、融資あっせん制度を実施している場合をあります。この場合、自治体が利子の一部を助成するとともに、信用保証保険料の全額を負担しています。
■大学等独自の奨学金
大学等では学校独自の奨学金制度を持っていることが多いです。スポーツ特待生などさまざまな奨学金があります。給付型が多いです。主に首都圏以外の学生を対象に、入学前に申請をして採用候補者を決定する「入学前予約型」の奨学金もあります。志望校の奨学金制度をパンフレットやホームページなどで調べましょう。
■民間育英団体の奨学金
財団法人やNPO法人などが奨学金事業を行っています。給付型が多いです。奨学金情報をまとめたプラットフォームも充実してきているので、これらを活用して自分に合った民間育英団体の奨学金を探すといいでしょう。
■新聞奨学生
新聞の販売店で新聞配達などをしながら学校に通う制度です。学費は新聞奨学会が立替えて学校に支払い、卒業まで勤め続ければ返済が全額免除になります。個室が与えられ、給料も支給されます。学費と生活費をまかなうことが可能です。
奨学金の基礎知識をご紹介しました。奨学金を検討している方は、各特長をふまえ、自分に合った奨学金を選択するようにしましょう。
出典
日本学生支援機構 令和2年度学生生活調査・高等専門学校生生活調査・専修学校生生活調査
国税庁 標本調査結果/民間給与実態統計調査結果(令和4年分)
文部科学省 国公私立大学の授業料等の推移
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。