この記事では、公務員が住宅ローン金利を優遇される理由と、実際に優遇された場合とされない場合の総返済額の差について検証していきます。
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公務員が金利優遇される理由
公務員が金利優遇される理由は次の3つです。
●雇用が安定している
●年収が比較的高く、月給や賞与カットのリスクが少ない
●退職金がある
公務員に限らず、金融機関からローン返済が滞るリスクが少ないと見なされれば利率が低く、リスクがあると見なされれば利率が高く設定されます。それぞれの理由について、詳しく解説していきます。
雇用が安定している
公務員はよほどのことがなければ解雇されることはなく、倒産による失職リスクも考えられません。安定して働き続けられるうえ、ほとんどの公務員は60歳で定年後も再雇用で働けます。融資をしても貸し倒れになる心配が小さく、金融機関にとっても安心です。
年収が比較的高く、月給や賞与カットのリスクが少ない
人事院の調査によると2023年の国家公務員の平均年収は約680万円です。また、「令和4年度地方公務員給与の実態」によると、2022年の地方公務員の平均年収も同じく約680万円となっています。これに対し、民間企業の平均年収は、2022年の国税庁の調査によると458万円で、約200万円の差があります。
すべての国家公務員・地方公務員が年収600万円を超えているわけではありませんが、平均的には民間企業よりも年収が高い傾向があります。公務員の給与は民間企業の実態に合わせて毎年調整されるものの、大幅な給与カットや賞与の不支給があるとは考えにくいため、住宅ローンの計画的な返済に影響はほとんどないといえるのです。
退職金がある
近年、民間企業では退職金を廃止したり、縮小したりする動きが出てきました。公務員の退職金も減少傾向にありますが、2000万円近くもらえることは大きな安心材料です。万一、住宅ローンの返済終了時期を70歳など定年よりも後に設定していても、退職金で返済できます。
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実際に3000万円の住宅ローンを35年間の返済期間で借りたときに、公務員と民間企業勤務者でどのくらい返済額に差が出るのか検証してみましょう。2024年2月現在の変動金利、固定金利それぞれで試算し、返済方法は元利金等返済とします。
<変動金利の場合>
三井住友銀行を例にとると、2024年2月の変動金利は、2024年2月現在0.475%~0.725%です。一般の人が0.725%で借り入れ、公務員が0.475%で借り入れた場合は図表1のような結果になります。
図表1
三井住友銀行の住宅ローン金利より計算し筆者作成
金利差は0.25%と小さく思えますが、35年積み重ねると返済額の差は約140万円にもなります。140万円あれば、中古車が購入できたり、保険料にもよりますが火災保険を30年分契約できたりします。ただし、変動金利の場合は半年に1度利率の見直しがあることに注意しましょう。
<固定金利の場合>
三井住友銀行が2024年2月に提示している35年固定金利は、年2.19%~3.09%です。民間企業勤務者が3.09%で借り入れ、公務員が2.19%で借り入れた場合は図表2のような結果になります。
図表2
三井住友銀行の住宅ローン金利より計算し筆者作成
35年固定金利の場合は、変動金利に比べて金利差が0.9%と大きく、35年間で生まれる返済額の差は約614万円です。614万円あれば車の購入費や子どもの進学費用にも充てられ、生活に余裕も生まれるでしょう。
まとめ
公務員は「雇用が安定している」「年収が比較的高く、月給や賞与カットのリスクが少ない」「退職金がある」という理由から、返済が滞るリスクが少ないため、住宅ローン金利が優遇されます。
たった0.25%の金利差でも、住宅の価格が3000万円で借入期間が35年なら140万円もの差になります。固定金利ではさらに差は広がり、0.9%の金利差で600万円以上も総返済額に差が出る結果となりました。
しかし、公務員は金利が優遇されるために借り入れ可能額が上がり、ハウスメーカーに勧められるままに想定以上の高額な住宅ローンを組んでしまうケースもあるかもしれません。金利が優遇されるのはうらやましい限りですが、自分の置かれた環境の中でお金やローンと上手に付き合っていくことが何よりも大切だといえます。
出典
人事院 令和5年国家公務員給与等実態調査の結果
総務省 令和4年度 地方公務員給与の実態
国税庁 令和4年分民間給与実態統計調査
執筆者:古澤綾
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