更新日: 2024.06.11 教育ローン
世帯年収500万円で子どもが3人います。返済不要の奨学金の対象者が拡大されるようですが、どのような人が対象になりますか?
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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現行の「高等教育の修学支援新制度」
まず、現行の「高等教育の修学支援新制度」についておさらいしましょう。
国等から確認を受けた大学・専門学校などに通う学生への新しい給付奨学金・授業料等減免制度が2020年4月からスタートしました。住民税非課税世帯・準ずる世帯の学生が対象です。
採用基準には「家計基準」と「学力基準」の両方を満たす必要があります。高校で申し込む予約採用の場合の採用基準は次のとおりです。
■家計基準
学生等本人と生計維持者(父母)が、次の「収入基準」および「資産基準」のいずれにも該当する必要があります。
■収入基準
<第1区分(住民税非課税世帯)>
学生等本人と生計維持者の市町村民税所得割が非課税であること。具体的には、学生等本人と生計維持者の支給額算定基準額の合計が、100円未満であること。
<第2区分>
学生等本人と生計維持者の支給額算定基準額の合計が100円以上2万5600円未満であること。
<第3区分>
学生等本人と生計維持者の支給額算定基準額の合計が2万5600円以上5万1300円未満であること。
※支給額算定基準額=課税標準額×6%-(市町村民税調整控除額+市町村民税調整額)(100円未満切り捨て)
夫(会社員)、妻(無収入)、本人(高校生)、中学生の4人家族の場合、世帯年収約380万円程度までが支援の対象となります。年収はあくまで目安です。実際の選考は上記のように住民税の課税標準額等に基づき判定されます。
■資産基準
申込日時点の学生等本人と生計維持者(2人)の資産額の合計が 2000万円未満(生計維持者が1人のときは1250万円未満)であること。
■学力基準
以下の1.もしくは2.のいずれかに該当する必要があります。
1.高等学校等における全履修科目の評定平均値が、5段階評価で3.5以上であること
2.将来、社会で自立し、および活躍する目標をもって、進学しようとする大学等における学修意欲を有すること
つまり、高校等の成績だけで判断をせず、レポートや面談により本人の学修意欲や進学目的等を重視します。
■支援内容
給付奨学金の支給額については、第1区分を満額(私大自宅外生約91万円)とすると、第2区分・第3区分の金額は、それぞれ第1区分の額の3分の2、3分の1の金額です。
さらに、給付奨学金の対象者は進学後申請することで、入学金と授業料の減免を受けることができます。減免額は、第1区分を満額(私大生:入学金26万円・授業料70万円)とすると、第2区分・第3区分の金額は、それぞれ第1区分の額の3分の2、3分の1の金額です。
2024年度から支援対象が拡大
2024年4月から、多子世帯と、私立理工農系への支援を拡大し、世帯年収600万円程度までが対象になります。収入基準以外の要件は、今までの給付奨学金と同じです。
多子世帯とは、次のうちいずれか小さいほうの数が3以上である場合をいいます。
・本人が奨学金申込時に申告した世帯情報にて、本人の生計維持者の子にあたる者(本人自身も含む)の数
・本人の生計維持者全員の市町村民税情報における、扶養親族の数の合計
扶養親族は各年度に課税される住民税において、その年度の前年の12月31日時点で判定されます。
対象拡大に伴い、新たに第4区分(学生等本人と生計維持者の支給額算定基準額の合計が5万1300円以上15万4500円未満であること)が設けられました。支給内容としては、多子世帯に対しては第1区分の4分の1の額の給付奨学金および授業料減免が行われます。
私立理工農系の学生に対しては、給付奨学金の支援はなく、文系との授業料の差額に着目した額が支給されます。対象となる私立理工農系の学科等は文部科学省のホームページに公表されていますので、ご確認ください。
多子世帯で私立理工農系の学科等へ進学した場合は、多子世帯への支援が適用されます。新入生だけでなく、すでに在学中の学生も対象で、4月以降に在籍校を通じての申請となります。
出典
文部科学省 奨学金事業の充実
日本学生支援機構 大学・短大・専修学校(専門課程)へ進学予定の方
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。