奨学金の「減額返還制度」が、2024年度からさらに利用しやすくなったということですが、どのように利用しやすくなったのですか?
配信日: 2024.06.26 更新日: 2024.06.27
このような場合、減額返還や返還期限の猶予といった救済制度を利用できます。このうち、減額返還制度が2024年度から要件等が柔軟化されました。改正点のポイントを解説します。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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改正前の「減額返還制度」
減額返還制度は、傷病や災害、その他経済的理由によって奨学金の返還が困難な方の中で、当初約束した月々の返還額を2分の1または3分の1に減額して返還していく制度です。
この制度の1回の願い出につき適用期間は12ヶ月で、減額返還の事情のある限り最長15年(180ヶ月)まで延長可能です。
たとえば、当初の月々の返還額が3万円の方がこの制度の利用が認められると、2分の1を選べば適用期間中は1.5万円の返還でよく、3分の1を選べば1万円の返還になります。
返還総額は変わらないので、減額返還適用期間に応じた分の返還期間が延長されます。機関保証を選択した方は、保証期間は延長になりますが、保証料の追加徴収はありません。
減額返還中に当初の返還月額に戻すこともできます。この場合、当初の返還月額での返還再開を希望する月の前月末日までに「奨学金減額返還短縮願」を日本学生支援機構に提出する必要があります。
2024年度からの「減額返還制度」
次の2点が変更になりました。
1. 減額返還方法の追加
従来は、当初の返還月額を2分の1または3分の1に減額して返還する方法しかありませんでした。改正後はこれに加え、4分の1または3分の2に減額し返還する方法も選択可能になりました。
2. 収入基準の緩和
経済困難を理由とする減額返還制度を利用する場合、収入・所得金額の基準があります。従来、収入・所得金額の基準は、年間収入金額325万円以下(年間所得金額225万円以下)でした。
ただし,上記の収入(所得)基準額を超える場合でも、〔控除項目*〕に該当し,控除後の金額が収入(所得)基準額以下となる場合は、減額返還を願い出ることができます。
a. 返還者本人の被扶養者にかかる控除
b. 返還者本人の被扶養者でない親への援助
c. 返還者本人の被扶養者でない他の親族(2親等以内で配偶者・子を除く)への援助
d. 返還者本人にかかる医療費
e. 返還者本人の被扶養者にかかる医療費補助
f. (「災害」事由に限る)住宅取得経費、自宅修理費、車・家財購入経費
改正後は、収入・所得金額の基準が、年間収入金額400万円以下(年間所得金額300万円以下)に緩和されました。
さらに、本人が扶養している子どもの人数が2人の場合は、年間収入金額500万円以下(年間所得金額400万円以下)、3人以上の場合は年間収入金額600万円以下(年間所得金額500万円以下)まで緩和されます。
注意点
申請する際、すでに延滞している方は減額返還制度を利用できません。また、減額返還適用期間中に2回続けて振替不能となった場合は、延滞発生時にさかのぼって減額返還の適用が取り消され、減額返還適用前の当初返還月額に延滞金を加えた額を返還しなければなりません。振替不能には十分気を付けてください。
出典
日本学生支援機構 令和6年4月より減額返還がさらに利用しやすくなりました
日本学生支援機構 返還のてびき(令和5年度版)
※2024/6/27 記事を一部修正いたしました。
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。