更新日: 2020.07.03 住宅ローン
【相談】夫と離婚するけれど2人で借りた住宅ローンが残っています。どうすればいい?
不動産価格の上昇はマイホームの取得に大きな影響を及ぼします。近年は夫婦共働きの世帯も多く、夫婦共同で住宅ローン契約を行うことが増えています。
しかし、夫婦共同で住宅ローンを契約した後で離婚したとしたら、マイホームや住宅ローンはどうなってしまうのでしょうか? 今回は夫婦共同の住宅ローンの特徴について、説明させていただきます。
執筆者:菊原浩司(きくはらこうじ)
FPオフィス Conserve&Investment代表
2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級
製造業の品質・コスト・納期管理業務を経験し、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルを重視したコンサルタント業務を行っています。
特に人生で最も高額な買い物である不動産と各種保険は人生の資金計画に大きな影響を与えます。
資金計画やリスク管理の乱れは最終的に老後貧困・老後破たんとして表れます。
独立系ファイナンシャルプランナーとして顧客利益を最優先し、資金計画改善のお手伝いをしていきます。
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「夫婦共同で借りる住宅ローンとは? 」
夫婦共同の住宅ローンは、夫単独の借り入れでは希望する融資額に届かない場合の、選択肢となります。また、夫婦それぞれに収入がある場合は、それぞれが住宅ローン控除を受けることができるなど、税制面でも有利です。夫婦共同の住宅ローンには、以下の3つの形態があります。
(1)ペアローン
夫婦それぞれの収入に応じて別個にローン契約を行い、マイホームを出資額などに応じた割合でお互いに所有する方法(共有持分)です。
また、マイホームを夫、土地を妻という具合に別個の不動産を取得するために利用することもできます。前者の共有持分の場合は、夫婦それぞれが住宅ローン控除の適用を受けられたり、団体信用生命保険(団信)へ加入できたりするなどのメリットがあります。
デメリットとして、2重にローン契約を結ぶため、通常よりも融資の諸費用が高くなること、亡くなったどちらか一方の分しか保障を得られないので、団信によるリスクヘッジの効果が薄まってしまうことなどがあります。
(2)連帯保証契約
連帯保証契約は、主たる契約者が返済を行わない場合、連帯保証人が返済を肩代わりする仕組みです。夫婦それぞれの収入が合算され、ローン契約が締結されます。
住宅ローン契約と連帯保証契約は別の契約として扱われますので、住宅ローン控除の利用や団信への加入が行えるのは契約者のみとなります。
また、後述する理由によって離婚後に大きなトラブルになりやすい契約形態とも言えます。
(3)連帯債務契約
連帯保証人はあくまで「契約者が返済をしなかった場合の保証」となりますが、連帯債務は主従の関係がなく、1つのローン契約に関してお互いが等しく全額を返済する責任を負います。
連帯保証契約は契約者に請求してから連帯保証人に請求を行うことになりますが、連帯債務契約の場合、融資元である銀行は夫婦どちらに請求を行ってもよく、連帯保証よりも担保の効果が大きくできます。
すべての契約者が等しい返済義務を負っているため、住宅ローン減税や団信(フラット35の夫婦用団信利用)へ加入することができます。
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「離婚後のマイホームと住宅ローンの行方について」
離婚した場合でも、住宅ローンの返済義務は変わりません。離婚した後の住宅ローンとマイホームの取り扱いは、前述のどの契約形態をとっているかにより異なります。
ペアローンの場合は、夫婦それぞれが契約した住宅ローンの融資額を限度に返済を行えばよく、マイホームは「共有物」になります。共有物の使用に関しては民法が適用され、共有物のすべてを持分に応じて使用することができます。
仮に夫婦の持分が半分ずつであった場合は、1年のうち、半年間マイホームに居住できる権利を有することになります。しかし、転居を繰り返すのは現実的ではないため、引き続き居住する場合は、夫婦どちらか一方がマイホームのすべてを使用して居住し続けることになります。
こうした場合、後で「自分が住むから出て行ってもらいたい」と言っても、マイホームの明け渡しを要求することはできません。また、賃貸住宅としての貸し出しや売却などの行為は単独では行えないため、合意形成が必要になります。離婚後もコミュニケーションをとっていく必要がある点は、注意が必要です。
連帯保証契約や連帯債務契約は、マイホームの所有権が住宅ローンの「主たる契約者」になるので、マイホームの利用・管理・処分などに関しては行いやすくなります。
しかし、返済に関しては大きなリスクを抱えることになります。というのも、連帯債務・連帯保証契約は、返済に関して主たる契約者と同等の責任を負うため、「催告の抗弁権」や「検索の抗弁権」がありません。
つまり、主たる契約者に先に請求してほしいと反論(催告の抗弁権)できないことや、充分な財産を持っているのに故意に支払わない場合(検索の抗弁権)は返済を肩代わりしなければならないことを意味します(肩代わりした場合は、返済後、主たる契約者に求償することになります)。
また、連帯保証契約の解除は、金融機関の了解や、他の連帯保証人の設定などが必要となり、非常に難しい交渉となります。
「まとめ」
不動産価格の上昇や、夫婦共働き世帯の増加を背景に、夫婦共同で住宅ローンを借り、その後離婚に至るケースは珍しくなくなるかもしれません。
住宅ローンは、契約形態によって影響の範囲が異なります。ペアローンの場合は、マイホームの管理などを単独では行えない可能性があり、連帯保証・債務型は、相手方の住宅ローンの返済が滞った場合に、代わりに返済などをしなければならないというリスクが残ります。
離婚時に、収入面で住宅ローン締結時よりも余裕ができている場合は、共有持分の場合は相手方に売却すること、連帯債務・保証の場合は、単独名義での住宅ローンに借り換えることなどを検討することもできます。
しかし、そうでない場合には、マイホームは分割することが難しい財産となってしまいます。後々のトラブルの芽をしっかりと潰しておくために、離婚調停時に弁護士などの第三者を介在させたり、離婚に備えてあらかじめ財産の取り扱いを書面で残しておくことが大切です。
Text:菊原浩司(きくはらこうじ)
FPオフィス Conserve&Investment代表
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