更新日: 2024.10.28 教育ローン
私立大学の学費が4年で「700万円」! 貯金がない場合、親が「国の教育ローン」を組む・子どもに「奨学金」を申し込んでもらうのとどちらがおすすめ? 併用もありなの? 違いを解説
日本政策金融公庫の令和3年度「教育費負担の実態調査結果」によれば、高校入学から大学卒業までにかかる費用は、進学先が国公立大学なら743万円、私立大学文系で951万6000円、私立大学理系では1083万4000円です。
これだけの金額を用意するのは、どの家庭にとっても簡単ではないでしょう。そこで、「奨学金」の検討をする家庭は多いでしょう。ただ、ほかの選択肢として「国の教育ローン」もあります。
本記事では、国の教育ローンと奨学金の概要や制度の違い、それぞれに向いている人の特徴を紹介します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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国の教育ローン(教育一般貸付け)とは
国の教育ローンは、独立行政法人日本政策金融公庫が取り扱う教育資金の融資制度です。利用限度額は進学する子ども1人につき350万円まで、一定の要件に該当する場合には450万円まで借入することができます。金利は固定金利で、2024年6月時点で年2.40%です。
奨学金との違いは、学生ではなく親(保護者)が主契約者になって借りる点です。大人がお金の問題を解消することで、子どもは借金を背負うことなく大学の勉強に集中できます。ただ、図表1のような所得制限がある点は知っておきたいところです。
図表1
子どもの数 | 世帯年収(個人事業主の場合の所得の上限額) |
---|---|
1人 | 790万円(600万円) |
2人 | 890万円(690万円) |
3人 | 990万円(790万円) |
4人 | 1090万円(890万円) |
5人 | 1190万円(990万円) |
日本政策金融公庫 教育ローン用返済シミュレーション を基に作成
奨学金
奨学金は、経済的な理由が原因で進学が困難な学生に、企業や自治体、団体などから教育費用の貸与を受けられる制度です。
中でも日本で多く利用されているのが「JASSO(独立行政法人日本学生支援機構)」の奨学金です。返済の必要がない給付型と、将来的に返済が必要になる「貸与型」に分類できます。
有利子の貸与型の場合には元金と利息を支払うことになりますが、国の教育ローンよりも低金利です。
例えば、令和6年4月分の基本月額に対する利率固定方式の金利は1.140%で、国の教育ローンの固定金利2.40%を大きく下回ります。卒業後に子どもが返済義務を負うリスクはありますが、金利が低い分だけ返済総額は安く済む可能性があります。
また、有利子の第二種奨学金なら月額2~12万円で毎月定額を借りられるので、上限が350万円~450万円と決まっている国の教育ローンではカバーできない高額な授業料でも対応できます。
国の教育ローンと奨学金の違い
国の教育ローンとJASSOの奨学金の違いをまとめると、図表2のとおりです。
図表2
国の教育ローン | JASSOの奨学金 | |
---|---|---|
借入れ主体 | 子どもの親(保護者) | 子ども自身 |
申込み方法 | いつでも可能
日本政策金融公庫の各支店に申込書類を |
決まった募集時期に在学している学校を 通じて応募する |
資金の受け取り方 | 申込み毎に一括 | 毎月1回 |
金利 | 年2.40% | 0.5~1.5%前後
※利率固定方式か利率見直し方式かで |
借入可能額 | 子ども1人あたり350万円以内
一定要件を満たす場合は450万円以内 |
毎月12万円まで
※有利子の第二種奨学金の場合 |
繰上返済 | 随時可能 | 事前の申込みが必要 |
日本政策金融公庫 教育一般貸付(国の教育ローン)、独立行政法人日本学生支援機構 奨学金 を基に作成
国の教育ローンと奨学金に向いている人の特徴
国の教育ローンが向いているのは、奨学金という借金を子どもに背負わせたくない人です。奨学金は4年間借り続けると数百万円の借金になることも少なくありません。国の教育ローンは、子ども1人あたり350万円以内(一定要件を満たす場合は450万円以内)で、親(保護者)が返済します。
また、学力基準や収入基準が合わず、奨学金を利用できない人でも、学力に関して無審査の国の教育ローンなら借りられるケースがあります。
一方、「給付型奨学金」を受け取る条件を満たせる人は、奨学金に申し込むほうが良いでしょう。将来は子どもの負担になる奨学金ですが、給付型なら返済の必要はありません。
また、一括で借りるのではなく、毎月一定額を借りたい人も、奨学金が選択肢になります。
4年間の学費全額を借りるなら併用するという方法もある
日本政策金融公庫が令和3年度に実施した「教育費負担の実態調査結果」によると、大学4年間の平均的な費用は680万7000円です。全額を借りようとした場合、国の教育ローンでは上限額の450万円でもカバーできません。
奨学金も同様で、毎月12万円を4年間借りても576万円が上限であり、平均的な4年間の学費680万円を奨学金だけでカバーするのは難しいです。
どうしても預貯金が用意できない場合、国の教育ローンと奨学金を併用するという方法もあります。実際、国の教育ローンを利用している人のうち約半数が、奨学金との併用をしています。
まとめ
契約する主体が誰かは異なるものの、国の教育ローンも奨学金も借金を背負うことになるのは変わりません。
子どもに借金を背負わせたくないなら親が国の教育ローンからお金を借りるのがおすすめです。ただ、「借入できる金額に制限がある」「金銭の受け取りは一括が基本」など、デメリットに感じることもあります。
国の教育ローンと奨学金の特徴やメリット・デメリットを把握し、家庭ごとに最適な選択ができるように制度の理解を深めましょう。
出典
日本政策金融公庫 令和3年度「教育費負担の実態調査結果」
日本政策金融公庫 教育一般貸付(国の教育ローン)
独立行政法人日本学生支援機構 奨学金
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー