「世帯年収1000万円」で“ペアローン”を組んだ夫婦。妻がパートになり「年収100万円」に激減したら、住宅ローン控除がムダになり“数百万円の大損”に!? 控除を夫に上乗せは不可?損失と対策を解説
しかし、出産や育児、ライフスタイルの変化を理由に妻がパート勤務に変わり、年収が「100万円」に激減した場合、見落としがちな問題が起きることがあります。
妻の年収が下がると「住宅ローン控除」の恩恵をほとんど受けられなくなり、世帯全体で数百万円規模の損失につながるリスクがあるのです。本記事では、ペアローンの落とし穴と損をしないための対策についてFPの視点から解説します。
2級ファイナンシャルプランナー技能士
年収100万円では「引くべき税金」がゼロになる! 控除が使えなくなる理由
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、年末のローン残高の0.7%相当額が、支払った税金から直接戻ってくる制度です。
ここで重要なのが、「自分が支払った所得税や住民税の金額」が還元額の上限になるという点です。妻がパート勤務になり年収が100万円に下がった場合、所得税は非課税(ゼロ円)となり、住民税はかからないか極めて少額に収まります。
つまり、国から返してもらうための「自分が払った税金」がほぼ存在しないため、どれだけローン残高が残っていても、住宅ローン控除で戻ってくるお金は実質的に「ゼロ円」になってしまうのです。
夫への「付け替え」は不可! 10年間で数百万円の損失に
「妻の控除が使えないなら、その分を夫の控除に上乗せしてもらえばいい」と考える人もいるかもしれません。しかし、ペアローンは、「夫は夫のローン」「妻は妻のローン」として別々に契約しているため、控除の枠を夫婦間でやり取りすることはできません。
仮に妻のローン残高が2000万円あったとしましょう。本来であれば2000万円の0.7%である「14万円」が毎年戻ってくるはずです。これが控除期間の13年間ずっと受けられなかった場合、14万円×13年=「約182万円」が受け取れずに消えてしまいます。これが「数百万円の損」の正体です。
悲劇を防ぐための「ペアローン」見直し策と対策
このような事態を防ぐには、事前の計画と見直しが大切です。
まだ家を購入する前であれば、ペアローンではなく、夫の単独ローンにしつつ妻の収入を合算する「収入合算(連帯保証型)」を選ぶのが1つの手です。この方法なら、ローン控除は夫だけが受けることになるため、妻の働き方が変わっても還付額に影響が出にくくなります。
すでにペアローンを組んでいる場合、夫の単独ローンへの「借り換え」を検討するのも1つの選択肢です。
ただし、夫単独の年収で審査に通る必要があるほか、妻の持ち分(所有権)を変更しないと妻から夫への「贈与」とみなされ、贈与税がかかる可能性があります。借り換えを進める際は、金融機関や税理士などの専門家に相談しながら慎重に進めてください。
まとめ
世帯年収1000万円の夫婦がペアローンを組むのは、希望の物件に手が届く有効な方法です。しかし、将来的に妻がパート勤務になって年収が100万円に下がると、妻の所得税がほぼゼロになり、せっかくの住宅ローン控除が数百万円単位で使えなくなる可能性があります。
「ずっと今の年収で働き続けられるか」という視点を持ち、ライフプランの変化にも対応できるローンの組み方や、いざというときの借り換えの選択肢を夫婦で話し合っておくことが、マイホームと家計を守ることにつながります。
出典
国税庁 No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)
国税庁 No.4411 共働きの夫婦が住宅を買ったとき
執筆者 : 高橋祐太
2級ファイナンシャルプランナー技能士