夫は“夏ボーナス50万円”を「住宅ローンの繰り上げ返済に充てる」と言います。知人に「住宅ローン控除が減って損」と聞いたのですが“利息が減る”よりマイナスですか? 控除額減少の逆転現象とは
ただし、現在の住宅ローン控除の制度下では、この行動が必ずしも家計にとってプラスに働くとは限りません。本記事では、ボーナスを用いた繰り上げ返済が控除額の減少につながるメカニズムを解説します。
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
目次
住宅ローン控除の基本的な仕組みと計算方法
まずは、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の仕組みを見ていきましょう。住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用してマイホームを取得した際、年末のローン残高の一定割合が所得税や住民税から控除される制度です。
2022年度の税制改正以降に住宅を取得した場合、控除率は年末残高の0.7%です。例えば、年末のローン残高が3000万円ある場合、その0.7%にあたる21万円が所得税などから差し引かれます。納めた税金が還付されるため、手元に残る現金が増えることがメリットです。
繰り上げ返済がもたらす利息軽減効果
住宅ローンの繰り上げ返済は、借入元本の一部を前倒しで返済する手続きです。返済した金額がそのまま元本の減少に充てられるため、将来発生するはずだった利息負担を抑えられます。
具体的な利息軽減効果は、適用されている金利によって変わります。仮に、適用金利を年利0.5%の変動金利として50万円を繰り上げ返済した場合、1年間で約2500円(50万円×0.5%)の利息負担を軽減する効果が見込まれます。
50万円の繰り上げ返済で生じる「控除額減少」の逆転現象
しかし、住宅ローン控除の適用期間中に繰り上げ返済を行う場合、金利と控除率の関係によっては「逆転現象」が生じることがあります。適用金利0.5%、控除率0.7%の条件で、50万円を繰り上げ返済したケースを比較してみましょう。
元本減少による年間の利息軽減効果は、前記のとおり約2500円です。一方、年末のローン残高が50万円減るということは、控除の対象となる金額も50万円少なくなります。この減少分に対する控除額は、50万円の0.7%である3500円です。
つまり、繰り上げ返済によって利息を2500円減らしても、税金の還付額が3500円減ってしまうことになります。差し引きすると、年間で1000円のマイナスになる計算です。借入金利が控除率を下回っている場合、繰り上げ返済は家計全体で見ると不利になる構造といえます。
繰り上げ返済と住宅ローン控除のバランスを見極めるポイント
この逆転現象を避けるには、自身が契約している住宅ローンの適用金利と、住宅ローン控除の控除率を正確に比較することが重要です。
目安として、借入金利が控除率(0.7%)より高い場合は、繰り上げ返済をして利息を減らすほうが家計には有利です。反対に、借入金利が控除率を下回っている場合は、控除期間が終了するまで繰り上げ返済を見送るほうが経済的な合理性は高くなります。
現在の環境では、変動金利で0.5%以下の水準で借り入れているケースは少なくありません。そのような場合は、手元の50万円を急いで住宅ローンに充てるのではなく、控除期間中は預貯金などで確保しておく選択肢も検討すべきでしょう。
なお、繰り上げ返済によってローンの返済期間が10年未満になると、住宅ローン控除の適用自体が受けられなくなる点にも注意が必要です。
住宅ローンの繰り上げ返済は控除期間終了後を見越した計画的な実行を
住宅ローン控除の制度は、適用期間(新築住宅の場合は原則13年)が終了すると、翌年からは税金の還付が受けられません。控除期間が終了した後は残高に対する利息の支払いのみが発生するため、このタイミングが繰り上げ返済を検討する1つの区切りとなります。
夏のボーナスによる50万円は、住宅ローン控除適用期間中は口座などで貯蓄しておき、控除期間が終了したタイミングでまとめて繰り上げ返済に充当する方法が、合理的な資金計画の1つといえます。
目先の借入残高を減らすことだけに着目するのではなく、金利と税制優遇の両面から数字を確認したうえで、自分にとって有利なタイミングを選ぶことが大切です。
出典
国税庁 No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
