「住宅ローン=1日でも早く完済すべき」はウソ!? SNS「利子がタダ同然なら借りるだけ借りて、利息だけ返すべき」投稿が話題…富裕層も実践する“経済合理的なふるまい”とは
そのような意識もあってか、先日SNSに
「昔『利子がただ同然なら借りられるだけ借りて、利息だけ払ってなるべく返済しないようにするのが原則』と言われた」
という趣旨の投稿があり、大きな話題になりました。
なぜこのような考え方は、「正しい」とされるのでしょうか。
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント
「利子がただ同然なら借りるだけ借りて~」という考え方は、「経済合理的」
借金に嫌悪感を持つ人からすれば、「金利が安いと行っても、お金を借りるだけ借りて返さないなんて、無責任だし危険ではないか」と、首をかしげたくなるかもしれません。しかし、今回話題となった投稿にある考え方は、単なる「借金のすすめ」というものではなく、富裕層や投資家が実践している「経済合理的なふるまい」だと言えます。
この考え方の背景には、「インフレ(物価上昇)」と「利回り」という2つの要素が関係しています。具体的な数字を使って考えてみましょう。
例えば、あなたが「固定金利1.0%で3000万円」の住宅ローンを借りていたとします(これは、インフレと基準金利の上昇が進んだ現代日本においては非常に好条件の借金ですが、かつてのデフレ時代においてはごく普通にありえた利率設定です)。
総務省の発表によると、2025年度平均の消費者物価指数は前年度比で「2.6%」上昇しています。物価が上がるということは、裏を返せば「おカネの価値が下がる」ということです。
特に近年、日本の都市部では不動産価格の上昇が顕著ですので、かつて3000万円で買えた家が、現在は3500万円の価格設定となり、近い将来は4000万円出さないと買えなくなる、ということも珍しくありません。しかし、あなたが銀行に返す借金の額面は「3000万円」のまま固定されています。
つまり、「物価上昇率(2.6%)」が「借金の金利(1.0%)」を上回っている限り、お金を借りてモノ(住宅や車など)に変えておいたほうが、将来的に実質的な借金の価値が目減りするため、「今借金をしてモノを買ったほうが、将来的に得になる」という現象が起きます。
また、借金をしながらも手元に100万円の余裕資金ができた場合、これを「住宅ローンの繰り上げ返済」に回すこともできますが、それで減らせる年間の負担(ローンの利息)は返済額の1.0%、「年間1万円」にとどまります。
一方、その100万円をローン返済に回さず、NISAを活用して手堅い投資信託などに投資し、年利4%で運用できたとすれば、受け取る利益は「年間4万円」となり、借金返済に回すよりも大きな利益を受けることができます。
つまり、SNSの投稿にあった「利子がただ同然なら借りられるだけ借りて、利息だけ払ってなるべく返済しないようにするのが原則」という考え方は、「低い利子であれば積極的に借金をして手元に余裕資金を残し、その余裕資金を高い利回りで運用すれば、結果的にトータルの資産は増える」という、「金利差(イールドギャップ)」を利用した資産形成のセオリーを言い換えたものだといえます。
「早く借金を返したい」という気持ちをどうあつかうか
とはいえ、「借金を背負っているのは精神的に気持ちが悪いため、早めに返したい」という感情が生まれるのも自然でしょう。
前記の通り、理屈の上では「低金利の借金ならば繰り上げ返済をせずに、余裕資金は運用に回す」のが最適だとしても、運用するものが株式などのリスク資産であるならば、何らかの理由で運用商品の価値が急落してしまう危険は常につきまといます。
一方、繰り上げ返済をするのであれば、手にすることができる利益は運用に比べて少なくなるものの、確実に利益を上げることができます。
要は、余裕資金の取り扱い方を「ローリスク・ローリターン(繰り上げ返済)」でよしとするか、「ハイリスク・ハイリターン(株式などのリスク資産で運用)」を求めるかの違いです。
これは、各自がおかれたリスク許容度や性格・価値観による違いも大きいため、一概にどちらが正解だと言い切ることはできません。自分の状況に不安がある場合は、ファイナンシャル・プランナーの助けを借りるなどして、第三者目線の意見をもらうことも考えましょう。
まとめ
SNSで話題になった「利子がただ同然なら借りられるだけ借りて、利息だけ払ってなるべく返済しないようにするのが原則」という意見は、インフレと金利差(イールドギャップ)を利用した「経済合理的」な考え方と言えます。
しかし、お金の取り扱い方に関する正解は、家計が置かれた状況や本人の価値観によって異なります。「借金が少しでもあると落ち着かない」と感じるなら、無理に「経済合理的」な行動をする必要はありません。
余裕資金ができたら、無理のない範囲で繰り上げ返済を進めることで「心の平穏」を買うことも、立派な経済行動だといえるでしょう。
出典
総務省 2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年度(令和7年度)平均 (2026年4月24日公表)
執筆者 : 山田圭佑
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント
