「年収300万円だから奨学金の返還は待ってもらえる」とタカをくくっていた息子。しかし実家暮らしだと“親の年収”も合算され、容赦なく「数十万円の一括返還」を迫られるって本当ですか?
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
猶予年限特例とは?
猶予年限特例は、学ぶ意欲と能力がある学生・生徒が経済的理由により学業を断念することのないよう、将来の返還の不安を軽減し、安心して修学できるようにすることを目的とした制度です。
JASSOによると、家計状況の厳しい世帯の学生・生徒が無利子奨学金である第一種奨学金(有利子の第二種奨学金は対象外)の貸与を受けた場合、本人が卒業後に一定の収入を得るまでの間は、願い出により、特例として猶予を受けることができる期間に制限のなく返還期限猶予を受けることができます。
猶予年限特例の審査は、第一種奨学金の選考時の際に同時に行われ、次の条件を満たす人が対象となります。また、収入・所得の上限額の目安は、一例として図表1のとおりです。
(1)第一種奨学金採用者(大学院を除く)であること
(2)貸与額算定基準額が2万4300円以下であること
図表1 収入・所得の上限額の目安
| 採用種別 | 想定する世帯構成(例) | 年間の収入金額 | 年間の所得金額 |
|---|---|---|---|
| 予約採用 | 親A、親B(無収入)、高校生、中学生 | 300万円 | 210万円 |
| 在学採用 | 親A、親B(無収入)、大学生、高校生 | 392万円 | 295万円 |
独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)「猶予年限特例」より筆者抜粋
図表1の金額はあくまでも目安であり、世帯構成、障害者の有無などにより異なります。
猶予年限特例の基準を満たす場合は、自動的に対象者として扱われます。その際、貸与開始時に交付される「奨学生証」と、貸与終了時に交付される「貸与奨学金返還確認票」の右上には、「猶予年限特例」と印字されます。特に、申し込み等の手続きは不要で、本人の制度利用希望の有無もありません。
そして、該当者は貸与終了後に通常の奨学生と同じように返還することができるとともに、JASSOが定める一定額の収入に達するまでの間、1年ごとに申請し、承認を得ることで期間の上限なく返還の猶予を受けることも可能です。
貸与額算定基準額の計算
世帯ごとの貸与額算定基準額は、マイナンバーにより生計維持者(原則として父母)の前年の収入に基づく住民税情報により算出されます。計算式は、以下のとおりです。
貸与額算定基準額=課税標準額×6%-市町村民税調整控除額-多子控除-ひとり親控除-私立自宅外控除(100円未満は切り捨て)
貸与額算定基準額の算定は、生計維持者および本人から提出されたマイナンバーにより第一種奨学金の選考と同時に審査されます。
まとめ
第一種奨学金の返還については、貸与終了後一定の収入を得るまでの間、猶予される制度があります。ただし、1年ごとにJASSOの承認が必要となり、本人の収入や被扶養者に関する要件によっては、猶予年限特例による猶予の対象外となる場合があります。
その際には、通常の返還が必要となりますが、タイトルのとおり、いきなり「容赦なく「数十万円の一括返還」を迫られる」ということはありません。一括返還を求められるのは、返還遅延等の理由で一括返還の請求を受けた場合となります。
計算式なども少々複雑となっており、将来の返還に少しでも不安のある方は、必ずJASSOの「進学資金シミュレーター」を利用して、事前に試算しておくことをお勧めいたします。
出典
独立行政法人日本学生支援機構 猶予年限特例
独立行政法人日本学生支援機構 進学資金シミュレーター
執筆者 : 高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
