定年時に「残高1200万円」の住宅ローンを“一気に返すべきか”悩み中…夫に「団信あるから意味ない」と言われますが“利息がもったいない”と感じます。本当に「返済しないほうが得」でしょうか?
夫から「団信に入っているのだから、急いで完済する意味はない」と言われると、一理あるようにも感じます。しかし、団信があるからといって、繰り上げ返済が必ず損になるわけではありません。
本記事では、夫が「団信があるから一括返済は意味がない」と話す意図や、本当に返済しないほうが得なのか解説します。
2級ファイナンシャルプランニング技能士/ITパスポート/日商簿記3級/第一種衛生管理者/証券外務員/英検2級など
目次
そもそも「団信」とは?
団信とは「団体信用生命保険」の略称で、住宅ローンの契約者に万一のことがあった場合などに、保険金によって住宅ローン残高が返済される仕組みです。つまり、1200万円の住宅ローンを残した状態で保障対象となる事由が発生すれば、一定の条件のもとで残債の返済が不要になります。
なお、保障内容は加入している団信によって異なります。死亡・所定の身体障害だけでなく、がんや3大疾病などを保障するタイプもあるため、自分の契約内容を確認することが重要です。
繰り上げ返済最大のメリットは利息を減らせること
住宅ローンを完済する大きなメリットは、その後に支払う予定だった利息をなくせることです。例えば、残高1200万円を今後も返済していく場合、元金だけでなく利息も支払います。
完済までの期間が長いほど、住宅ローン金利が高いほど、今後支払う利息は大きくなります。全額繰り上げ返済をすれば、この将来の利息負担を抑えられます。さらに、定年後に毎月の住宅ローン返済がなくなることもメリットです。
「返さない」という選択にもメリットがある
一方、1200万円を一気に返せるとしても、すぐに完済するのが必ずしも正解とは限りません。その大きな理由は、手元の現金を残せることです。例えば、預貯金1500万円から1200万円を返済すれば、単純計算で残るのは300万円です。
定年後には生活費だけでなく、医療・介護費、自宅のリフォーム、車の買い替えなど、まとまった支出が発生する可能性があります。住宅ローンはなくなっても、手元資金がほとんどなくなれば安心とはいえないでしょう。
また、住宅ローン金利が低ければ、手元の1200万円を運用し、ローン金利を上回る収益を得られる可能性はあります。ただし、投資による収益は保証されるわけではありません。
株式や投資信託なら元本割れする可能性もあるため、「住宅ローン金利より期待リターンが高い=返さないほうが必ず得」と考えるのは危険です。
「団信を残す」ことにも価値はある
夫の「団信があるから返さないほうがいい」という考えにも、一定の合理性があります。もし、1200万円を完済した直後に夫が亡くなった場合、当然ながら返済に使った1200万円が戻ってくるわけではありません。
一方、1200万円の住宅ローンと団信を残していれば、保障対象となる死亡などが発生した場合、ローン残高が保険で完済され、手元に残っていた資金は家族の生活費などに利用できます。
この意味では、住宅ローンを残すことで団信という保障を維持する考え方もあります。ただし、「いつか団信でローンがなくなるかもしれない」という理由だけで返済を続けるのも適切とはいえません。長生きして最後まで自分で返済すれば、当然ながら利息を含めた返済が必要です。
繰り上げ返済が向いている人・向いていない人
繰り上げ返済を検討しやすいのは、完済しても老後の生活費や緊急予備資金を十分に残せる人です。特に住宅ローン金利が比較的高い、定年後の毎月の返済負担をなくしたい、投資でリスクを取りたくないといった人なら、完済によるメリットを感じやすいでしょう。
反対に、1200万円を返すと預貯金がほとんどなくなる人や、住宅ローン金利が低く、手元資金を十分確保しておきたい人は、急いで全額返済しない選択肢もあります。
また、「全額返済するか、そのまま残すか」の二択にする必要もありません。例えば、500万円だけ繰り上げ返済し、残り700万円は手元に残すといった方法も考えられます。
まとめ
住宅ローンを完済すれば将来支払う利息を減らせるほか、定年後の毎月の返済負担がなくなり、家計や精神面で安心しやすくなります。一方、返済しなければ手元に資金を残せ、運用に回すこともできます。また、団信の保障を維持できることもメリットです。
重要なのは、住宅ローン金利だけでなく、完済後にいくら現金が残るのか、老後の生活費はいくら必要なのか、団信にどのような保障があるのかなどを確認することです。
定年後は現役時代より収入が減るケースが多いため、「借金をゼロにすること」だけを目的にせず、十分な手元資金を確保したうえで返済方法を決めることが大切でしょう。
執筆者 : 三浦大幸
2級ファイナンシャルプランニング技能士/ITパスポート/日商簿記3級/第一種衛生管理者/証券外務員/英検2級など
