更新日: 2021.06.21 住宅ローン

見逃しがちな住宅ローンの諸費用。一体いくら用意すればいいの?

見逃しがちな住宅ローンの諸費用。一体いくら用意すればいいの?
マイホームの取得時に住宅ローンを利用する場合は諸費用が必要となります。本稿では、住宅ローン利用時に、どのような費用が発生し、どれくらいの金額が必要なのかなど基本的な事項を解説します。
 
※本稿にて紹介する住宅ローン商品に関する情報は2020年8月時点のものです。
廣岡伸昌

執筆者:廣岡伸昌(ひろおか のぶまさ)

ファイナンシャルプランナー(日本FP協会認定)
宅地建物取引士 ※試験合格
貸金業務取扱主任者 ※試験合格

大阪大学法学部卒。経済学修士(計量経済学)
地方銀行、コンサルティング会社を経て、現在、大手金融グループに勤務。その傍らでFPオフィスを運営して、お金に関する記事の執筆、相談業務を行っています。
専門分野は相続、資産運用、ローンなど個人向けのFP領域全般です。

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住宅ローンの諸費用って?

マイホームを取得する際には、住宅や土地の購入代金以外にも、手数料や保証料、火災保険料、登記費用など、さまざまな費用が発生します。これらは、まとめて諸費用と呼ばれます。
 
マイホーム取得の資金計画を立てる際には、この諸費用がどれくらいかかるかを把握しておくことが大切です。

住宅ローン諸費用、その目安は?

住宅ローンを利用してマイホームを購入する際の諸費用は、以下のとおりです。

1. 融資手数料

融資手数料は、住宅ローンを借り入れる際に、銀行などの金融機関に支払う手数料です。「融資事務手数料」、「事務取扱手数料」など名称は金融機関ごとに異なり、借入額にかかわらず金額が一定であるものと、借入額に対する比率で金額が決定するものに分かれます。
 
後者についてはネット銀行などを中心に借入額の2.2%(2%+消費税0.2%)としている金融機関が多く、その場合は、3000万円を借り入れると66万円が必要となります。

2. 保証料

保証料は、保証委託契約に基づいて住宅ローンを借りた人(債務者)が保証会社に対して支払うものです。万一、住宅ローンの返済が滞った場合は、保証会社が債務者に代わってローンの残額を支払います。この場合、以後、債務者は保証会社に対して返済することになります。
 
保証料の支払い形式には「一括前払い型」と「金利上乗せ型」があり、いずれかを選択できる場合が多いです。「一括前払い型」の場合、保証料は返済期間と借入額によって決まりますが、返済期間が35年の場合は、一般的に借入額1000万円あたり20万円程度が必要になります。
 
一方で、「金利上乗せ型」の場合は、借入時に一括して保証料を支払う必要はないものの、借入金利は年0.2%程度、上乗せされるかたちになります。
 
保証料は諸費用の中でも大きな金額を占めます。金額の目安は次の記事にまとめていますので、参考にしてみてください。
 
関連記事 住宅ローンの「保証料」ってなに?支払方法は?どれくらいかかるの?

3. 火災保険料

住宅ローンの借り入れに際して、通常、火災保険への加入を求められますので、火災保険料が必要になります。保険料については、建物の種類、構造、補償内容によってかなり幅がありますので、見積もりを取得して確認しましょう。

4. 登記費用<登録免許税(抵当権設定)/司法書士報酬>・税金

住宅ローンの利用に際して銀行などの金融機関や保証会社が抵当権を設定しますが、その登記の際に、登録免許税が課税されます。
 
税額は「債権金額(すなわち住宅ローンの借入金額)×税率」により算出しますが、マイホーム取得時の税率は0.10%となります。よって、3000万円を借り入れた場合は3万円の登録免許税が必要です。
 
また、通常は司法書士に対して登記手続きを委任するため、登録免許税と併せて司法書士に対する報酬も必要となります。報酬額は、依頼する司法書士にもよりますが、マイホーム取得時には、後述する土地の所有権移転登記や建物の所有権保存登記と併せて、少なくとも10万円以上は見込んでおきましょう。
 
他にも不動産取得税や印紙税が発生します。両親などから住宅取得のための資金援助を受けた場合は、贈与税が発生することもあります。
 
関連記事 住宅ローンの購入・新築にかかる登記費用・税金はどれくらいかかる?

5. その他費用

「フラット35」を利用する場合は、建設または購入する住宅が、住宅金融支援機構が定める技術基準に適合していることを証明する適合証明書の交付を受けることが必要です(ただし、条件によって省略できる場合あり)。
 
適合証明書の交付手数料は検査機関によって異なりますが、おおむね5万円程度は準備しておく必要があります。
 
また、団体信用生命の保険料については、一般的には金利に含まれており費用は発生しませんが、通常の団信に疾病特約などを付加する場合は特約料が必要となる場合があります。
 
以上がマイホーム取得時に住宅ローンを利用すると必要になる主な費用です。
 
なお、住宅ローンを利用しなくても、マイホームを購入すると以下のような費用がかかります。
 
●登記費用<登録免許税(所有権保存、所有権移転)/司法書士報酬>
建物の新築による登記(所有権保存登記)、中古住宅や土地の購入による登記(所有権移転登記)などに際して登録免許税が課されます。税額は「固定資産税評価額×税率」により求められます。
 
税率は、2022年3月末まで所有権保存登記が0.15%、住宅の売買による所有権移転登記が0.30%。2021年3月末まで土地の売買による所有権移転登記が0.15%です。なお、2022年3月末までは、新築、取得した住宅が、特定認定長期優良住宅または認定低炭素住宅に該当する場合は軽減措置が適用されます。
 
●不動産取得税
不動産を取得した人に対して課税されます。税額は、原則的には固定資産税評価額に税率(土地および住宅用建物については2021年3月末まで3%)を乗じた金額となります。なお、住宅用である一定の土地、建物を取得した場合は、軽減措置があります。
 
●固定資産税・都市計画税
固定資産税と都市計画税はその年の1月1日時点の所有者に対して1年分が課税されますが、不動産の売買にあたっては、日割り計算に基づいて売主と買主で負担し合うことが慣例になっていますので、清算金が必要となります。
 
●仲介手数料
中古住宅を購入する際は、通常、不動産業者が仲介するため、仲介手数料が発生します。この仲介手数料は購入価格が400万円超の場合は、次の計算式で算出される金額が上限となっています。
 
[ 購入価格×3% + 6万円 ](消費税別)
 
●その他費用
新居での生活を開始するにあたって、当然ながら引っ越し費用や家具代などを準備しておく必要があります。また、建売住宅を購入した場合などは、自治体に対して水道負担金が必要となることがあります。
 
一方で、新築マンションを購入したときは、購入時に修繕積立基金や管理準備金などが必要となる場合もあります。合わせて数十万円以上の比較的大きな金額になりますので注意が必要です。
 
これらを含めて、諸費用や手数料の合計は、購入する物件価格の5%~10%程度は必要になると考えておく必要があります。例えば、3000万円の物件を購入した場合は、諸費用として150万円~300万円程度は準備しておく必要があります。

諸費用はどのタイミングで支払う?

それでは、これらの諸費用はいつ支払うのでしょうか?以下で一般的な支払いタイミングをまとめまましたので、参考にしてみてください。

諸費用 一般的な支払いタイミング(例)
融資手数料 ■住宅ローン実行時
保証料 一括前払い型 ■住宅ローン実行時
保証料 金利上乗せ型 ■毎回の返済時
※保証料相当を返済額に上乗せする
火災保険料 ■物件の引き渡しまで
※支払い時期は契約による
登記費用 登録免許税(抵当権設定)、
司法書士報酬
■住宅ローン実行時(登記時)
登記費用 登録免許税(所有権保存・移転)、
司法書士報酬
■登記時
税金 不動産取得税 ■物件の取得後
※物件の取得後、都道府県より納税通知書が送付される
税金 印紙税 ■契約時(金銭消費貸借契約、売買契約)
税金 固定資産税・都市計画税 ■物件の引き渡し時
※日割り計算により、
売主と買主が按分して負担する
その他費用 仲介手数料 ■物件の引き渡し時
※売買契約時に2分の1、
残りの2分の1を引き渡し時に支払う場合もあり

諸費用を抑える方法は?

諸費用の中で大きな金額を占めるのが、「融資手数料」と「保証料」です。この両者については、一般的に「融資手数料」が低く抑えられている金融機関は「保証料」が比較的、高額になります。逆に保証会社がないなど「保証料」が不要の金融機関の場合は、「融資手数料」が大きくなります。これらは補完関係になっており、トータルで考える必要があります。
 
それでは、「融資手数料」や「保証料」を安く抑える方法はあるのでしょうか。これらの費用の支払い形態は、大きく(1)「融資手数料型」、(2)「保証料一括前払い型」、(3)「保証料金利上乗せ型」の3つに分けられます。これらについて、以下で解説します。

(1)融資手数料型

「保証料」が不要で「融資手数料」が比較的高額になるパターンです。このパターンは実行時の融資手数料の支払いにより完結するため、当初の予定通りに返済していく方針の方にはおすすめです。
 
一方で、繰上返済を考えている場合は、不利になる可能性もあります。また、融資手数料が定率ではなく定額の金融機関(楽天銀行など)の場合は、借入額が大きければ大きいほど有利になります。

(2)保証料一括前払い型

(1)については、あくまで手数料ですので繰上返済を行っても返戻はありませんが、こちらの場合は繰上返済を行って早期に完済すると、保証期間が短くなった部分についての保証料は返戻されます。
 
例えば、ある銀行の場合は、返済期間35年で、3000万円を借り入れたなどの条件で、10年後に全額を繰上返済した場合は、借入時に61万8000円支払った保証料のうち約22万円が戻し保証料として返戻されます。
 
繰上返済を積極的に行う予定がある、またはほかの金融機関への借り換えを想定している場合、このパターンを選択すると有利になる可能性があります。

(3)保証料金利上乗せ型

自己資金の都合で、初期費用をできるだけ抑えたい方におすすめの方法です。通常、(2)と比較すると、総支払額はこちらの方が多くなります。ただし、繰上返済によって、かなり早いタイミングで完済する予定がある場合は、そのタイミングによっては(2)よりも有利になる可能性があります。
 
一般的には、上記のとおりですが、借入期間や返済プラン、自己資金の状況などによって、最適なパターンは変わるため、シナリオに応じてシミュレーションしながらベストな金融機関と借入条件を決定しましょう。

諸費用が足りない場合の資金調達方法は?

これまで見てきたとおり、諸費用は大きな金額になることが分かると思います。それでは、自己資金で諸費用がまかなえない場合は、どうすればよいのでしょうか。これまでは住宅ローンといえば、諸費用は借り入れできないことがほとんどでした。
 
しかし、最近ではネット系銀行などを中心に、資金使途に諸費用を含めることができる、いわゆる「オーバーローン」が可能な住宅ローンが増えています。
 
例えば、ある銀行では、住宅ローンの資金使途は以下のとおり定められており、マイホームの購入代金に諸費用を加えた金額を住宅ローンとして借り入れることができます(もちろん審査に通ることが前提です)。
 
(1)本人居住用の土地・住宅の購入、住宅の新築・増築・改装、底地の買取資金
※賃貸の目的にはご利用できません。
(2)火災保険料、保証会社手数料・保証料、仲介手数料、担保関連費用、印紙税、引っ越し費用、修繕積立金、リフォーム費用、付帯工事費用、管理準備金、水道加入金
 
一方で、住宅ローンとは別に諸費用をまかなうための「住宅諸費用ローン」がラインアップされている銀行もあります。住宅ローンとは異なる返済期間や金利タイプなどを選ぶことができるといったメリットはありますが、金利は住宅ローンより高くなりますので、注意が必要です。
 
このように、諸費用に対する考え方は金融機関によってさまざまですので、借り入れを検討している金融機関に確認してみましょう。

まとめ

以上のように、住宅ローンを利用して、マイホームを購入する際の諸費用については、思いのほか高額になる場合がありますので、物件の価格だけでなく、諸費用も考慮して資金計画を立てることが重要になります。
 
※2020/9/11 内容を一部修正させていただきました。
 
執筆者:廣岡伸昌
ファイナンシャルプランナー(日本FP協会認定)
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