更新日: 2021.08.16 住宅ローン

住宅ローン「一括返済」のベストタイミングっていつ? 注意点とあわせて解説

住宅ローン「一括返済」のベストタイミングっていつ? 注意点とあわせて解説
住宅ローンの一括返済とは、残債を繰り上げて一度に返済する方法です。返済後の利息分を削減できるので、返済総額を減らせるのがメリットです。
 
まとまった額を返済することになりますが、預貯金全額を返済に充てるのではなく、万が一に備えてある程度のお金を手元に残すようにしましょう。
 
一括返済のメリットとベストなタイミングについて詳しく解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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新井智美

監修:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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「一括返済」は住宅ローンの繰り上げ返済の方法のひとつ

住宅ローンの「一括返済」は繰り上げ返済の一種で、まとまった額を用立てられたときに残債をまとめて返済する方法をいいます。例えば、住宅ローンを組むときに退職金での一括返済の予定を組むこともひとつの方法です。
 
一括返済をすると住宅ローン契約と同時加入した団体信用生命保険(団信)の契約も終了してしまうので、生命保険に加入する、もしくは加入済みの生命保険の保障内容を見直すことをおすすめします。
 
加えて「抵当権抹消登記」を自分で行う必要がありますので、管轄の法務局で手続きを行いましょう。
 

一括返済をするとどんなメリットがある?

一括返済をすると返済後の利息がなくなり、返済総額を減らせることが大きなメリットです。また、月々の住宅ローンの支払いがなくなるので精神的な負担が軽減されるでしょう。加えて住宅ローンの契約時に保証会社へ前払いした保証料の一部が、返金される場合もあります。
 
繰り上げ返済には「一部返済」もありますが、一括返済の方がより高い利息の軽減効果が期待できます。
 

一括返済をするとどれくらいお得になるの?

一括返済をした場合、返済総額をどのくらい減らすことができるのでしょうか? ここでは借入金額2500万円で元利均等方式、金利は2%の固定金利、返済期間35年の場合を例にします。もしも途中で一括返済などの繰り上げ返済をしなければ、返済総額は3478万2404円です。
 
そして5年後に一括返済をすると返済総額は2741万1918円で737万円ほど、10年後では返済総額は2950万9105円で527万円ほど、20年後では返済総額は3276万6500円で202万円ほど軽減できます。
 
返済期間が長くなるほど利息額も増えていくので、早いタイミングで一括返済をした方が返済総額をより減らすことができます。
 

一括返済のベストタイミングはいつ?

一括返済は早い方が返済総額を減らせるのですが、ベストなタイミングはただ早いというだけでは決められません。
 
例えば今後子どもの進学などまとまった支出の予定がある場合や、現在の収入状況が不安定な場合は、すぐに一括返済をするのはおすすめできません。逆に子どもが社会人になっており、手元に貯蓄の余裕があるという場合でしたら、一括返済してしまった方がお得です。
 
住宅ローンは他の種類のローンよりも金利が安いのが特徴です。そのため、一括返済で貯金を減らしてしまうよりも、万が一に備えつつ段階的に一部繰上返済を利用した方が良い場合もあるかもしれません。
 

住宅ローン控除の額と軽減される利息額とを比較してみる

「住宅ローン控除」は一定条件を満たしていれば所得税が控除され、年末時点の住宅ローンの残債額の1%の還付金が受けられる制度をいいます。
 
住宅ローン控除は住宅購入後から10年間と決められているため、もしも購入後10年以内に一括返済をしてしまうと残債額がゼロになり、それ以降の住宅ローン控除が受けられなくなってしまいます。
 
住宅購入から10年以内に一括返済を考える方は、一括返済時に軽減される利息額と住宅ローン控除額とを比較してみましょう。特に住宅ローンの金利が1%未満であるなら10年間住宅ローン控除を利用した方がメリットになる可能性がありますので、一括返済のタイミングは慎重に検討されることをおすすめします。
 

一括返済をする際の注意点とは?

住宅ローンを一括返済するときには手数料がかかったり、一時的に手持ち資金が減るなど、注意しなくてはいけないことがいくつかあります。注意点を知っておくことで、一括返済後のトラブルを防ぐことができます。
 
ここでは、住宅ローンを一括返済する際の注意点を解説します。
 

手数料が発生することもある

住宅ローンの一括返済をすると、住宅ローンを利用し続けるのに比べ、利息の負担は少なく済みます。しかし金融機関や手続き方法によっては、一括返済をする場合に手数料が発生する場合もあります。
 
一括返済にかかる手数料は、銀行によってバラバラです。また、同じ銀行であっても、金利のタイプ(変動・固定)や手続き方法によって手数料の金額が異なる場合もあるので注意が必要です。
 
住宅ローンを組む時に一括返済のことも考えている場合は、一括返済にかかる手数料も判断材料として知っておくとよいでしょう。
 

手元資金が一時的に減少する

住宅ローンを一括返済すると、たとえ一括繰上返済手数料が上乗せされたとしても、返済総額の負担は少なく済むことが多いです。しかし、一括返済をするにはまとまった金額を用意する必要があり、手元資金が一時的に少なくなってしまいます。
 
お金のかかるライフイベントが控えている場合は住宅ローンの一括返済をするのではなく、手元にお金を残しておくことも大切です。
 
必要な資金を確保した上で、残った金額を一括返済または繰上返済に回すことで、利息を抑えつつ無理をせずに住宅ローンを返済できます。
 

手続きが必要になる

一括返済するにあたって、最終的な返済額を計算しなければならないことや、引落額の変更が必要なことなどが理由で、一括返済に変更するための手続きが必要です。
 
金融機関によってはインターネット上で一括返済の手続きが可能ですが、銀行などの窓口に出向かなければならない場合もあります。
 
また、退職金での住宅ローン完済の場合に限って、窓口で手続きが必要ない金融機関もあるなど、住宅ローンを借りた会社によって条件が異なる点に注意しましょう。
 
インターネットまたは窓口で、住宅ローンの一括返済に必要な手続きが完了したら、返済金額を確認のうえ、必要期日までに返済金額を銀行口座に用意してください。
 

生命保険が終了するので必要に応じて加入する

住宅ローンに加入するには、ほとんどの場合団体信用生命保険へ加入することが条件のひとつです。しかし、保険期間は住宅ローンの借入期間に連動しており、住宅ローンを一括返済すると、連動して団体信用生命保険の保険期間も終了します。
 
団体信用生命保険とは、住宅ローンの契約者が、ローンが残っている状態で万が一死亡したり高度障害状態になったりした場合に、住宅ローン残高の返済を肩代わりしてくれる、住宅ローン専用の生命保険です。
 
一括返済すると団体信用生命保険が解約扱いとなりますので、必要に応じて新たに生命保険への加入を検討しましょう。
 

抵当権抹消登記を忘れずに

住宅ローンを契約すると、通常購入した不動産に対して抵当権を設定します。
 
抵当権とは、万が一住宅ローンの返済ができなかった場合の担保となる権利のことで、法務局で登記されます。返済ができない場合には抵当権が実行され、不動産の所有権が金融機関もしくは保証会社に移転されることもあります。
 
住宅ローンを完済することで、抵当権の抹消が可能になります。抵当権抹消登記をしないと抵当権の記録が残ったままになり、トラブルの元になってしまいますので、必ず抵当権抹消登記を行いましょう。
 
住宅ローンの一括返済が完了すると、一般的に後日抵当権抹消登記に必要となる書類が住宅ローン契約者に送られてきます。抵当権抹消登記は司法書士などの専門家に依頼する方法と、債務者本人が行う方法があります。
 
抵当権抹消登記は司法書士へ依頼すると迅速に手続きしてくれますが、抵当権設定登記よりも簡単に手続きできることから、自分で手続きする人も少なくありません。
 

住宅ローンの一括返済はタイミングと状況をみて

住宅ローンを一括返済すると、その後の利息分がなくなり、返済総額が減らせるのが大きなメリットです。しかし、一時的に貯金を大きく減らすことになるので、万が一に備えられるだけの余裕資金は確保しておいてください。
 
一括返済は早ければ早いほど効果がありますが、家族の状況やライフプランを含めてタイミングを判断することが大切です。住宅購入から10年以内に一括返済すると、住宅ローン控除が受けられなくなることも合わせて覚えておきましょう。
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
 
監修:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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