在宅介護で利用できる介護保険サービスって?夜間対応もあるものは?
配信日: 2021.04.06
在宅介護で利用できるサービスの種類と、地域による利用環境の違いを確認します。
執筆者:伊藤秀雄(いとう ひでお)
FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員
大手電機メーカーで人事労務の仕事に長く従事。社員のキャリアの節目やライフイベントに数多く立ち会うなかで、お金の問題に向き合わなくては解決につながらないと痛感。FP資格取得後はそれらの経験を仕事に活かすとともに、日本FP協会の無料相談室相談員、セミナー講師、執筆活動等を続けている。
在宅介護で利用できる介護保険サービス
介護保険には多数のサービスがありますが、今回は夜間の介護に利用できるサービスを取り上げます。居宅サービスの「訪問介護」、地域密着型サービスの「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」「夜間対応型訪問介護」の3つです。
はじめに、介護保険サービスの利用料について確認しておきます。以下の表は、縦がサービスごとの人件費割合、横が地域別の加算率を表しています。(1)70%のサービスには今回取り上げる3種類がいずれも該当します。
つまりこれらのサービスは、提供者側の負担が大きいということです。横軸の1級地は全国で東京23区だけです。品川区の住民が訪問介護を利用する場合、1単位あたりの単価は10円+(10円×70%×20%)=1万1140 円となり、地域間で一番高くなることがわかります。
例えば、要介護3の方が居宅サービスを利用する場合の利用限度額は月27万480円ですが、単価が10円とその14%増しでは受けられる利用サービスの総量が異なってきますね。ただ、単価が安くても提供可能なサービスが少ない地域もあるので、一概に損得はいえないのが現状です。
3つのサービス内容を比較
家族で高齢者を介護する場合、特に夜間、家族が休息の時間を確保できること、独り暮らしの場合ならトイレなど介助する人がいてくれることは、QOL(生活の質)の維持に欠かせません。
※1単価10円とし、介護以外のサービス、看護については省略。
1.訪問介護
食事、入浴、排泄等の介護が対象です。1回あたりの基本単価は、30分以上1時間未満の場合3950円ですが、日中以外は加算があり、22時~6時は50%割増です。例えば、平日を22日として毎日深夜に来てもらうと、3950円×1.5×22日=13万350円です。
1割負担だと自己負担は1万3035円ですが、要介護3の方ならこれで利用限度額の半分ほど使ってしまいます。なお、深夜も利用できますが、日中の利用が基本のサービスです。事業所数は多いですが、夜間利用可能なところは限定されるので十分な確認が必要です。
2.定期巡回・随時対応型訪問介護看護
このサービスと「夜間対応型訪問介護」は地域密着型と呼ばれ、居住する市区町村のサービスしか利用できません。
隣町に事業所があっても残念ながら使えないのです。内容は、定期的な巡回や、連絡を受けて行う食事、入浴、排泄等の介護が対象です。1日に何度も利用でき、滞在時間の設定も柔軟なのが特徴です。また、オペレータに通報することで駆けつけ対応も可能です。
24時間利用可能ですが、定額制なのであまり利用しない月は利用限度額に対し割高かもしれませんね。要介護3だと看護サービスなしの場合、月額1万6833円、要介護5だと月額2万5752円の自己負担です。
3.夜間対応型訪問介護
定期的な巡回や、連絡を受けて行う食事、入浴、排泄等の介護が対象で、深夜時間帯に対応してくれる事業所です。こちらは月額基本料金を抑える代わりに、利用回数ごとに料金が掛かる仕組みです。
オペレータがいる事業所の場合、月額基本料金が1013円、定期巡回サービス1回につき379円、通報による随時訪問サービスは、訪問者数により1回578円または778円となります。
夜間中心に利用する場合は、こちらのほうが使い勝手やコスパが良いかもしれません。ただ、事業所数が少ないのが難点です。これは次章でお伝えします。
この3つのサービスは併用できないため、ひとつに絞る必要があります。
3つのサービスの事業者数を比較
それぞれのサービスを扱う事業者はどの程度あるのでしょうか。厚労省のデータから都道府県別の事業者数を調べました。
・訪問介護:4612(大阪)、738153
大都市圏の都道府県では3桁の事業者数ですが、中でも大阪が断トツの1位でした。
・定期巡回・随時対応型:130(北海道)、24.1
北海道が突出した半面、事業者数がひと桁の県も17あります。
・夜間対応型:58(神奈川)、4.0
事業者が2桁あるのは5都道府県のみで、“1か0”の県が過半数でした。
夜間の訪問介護サービスを利用できる環境は、一部の都市圏以外は厳しい状況であることが読み取れます。訪問介護を軸に、民間介護サービスも比較検討しながらアンテナを高くして備えたいものです。
(出典)
厚生労働省「令和元年度介護報酬改定について」
厚生労働省「介護サービス情報公表システム」
公益財団法人生命保険文化センターホームページ
執筆者:伊藤秀雄
CFP(R)認定者、ファイナンシャルプランナー技能士1級、第1種証券外務員、終活アドバイザー協会会員、相続アドバイザー。