更新日: 2021.04.10 その他老後

60歳以降も働く人が知っておきたい! 高年齢雇用継続給付とは?

60歳以降も働く人が知っておきたい! 高年齢雇用継続給付とは?
日本には高年齢者雇用安定法という法律があり、企業が従業員に対して65歳までの雇用確保措置を取ることが義務化されています。さらに、2021年4月から施行されている改正高年齢者雇用安定法では、70歳までの雇用機会の確保などの努力義務が定められました。
 
しかし実際には会社の制度上、60歳で退職金が支給され、いったんは「定年」を迎える方は少なくありません。また、継続雇用や再雇用とはなったものの、「60歳以降もそれまで以上に仕事をしているのに収入が減ってしまった」という悩みを抱えている方も多くいます。
 
そのような方を支援するために、雇用保険には「高年齢雇用継続給付」という制度が設けられています。
遠藤功二

執筆者:遠藤功二(えんどう こうじ)

1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)CFP(R) MBA(経営学修士)

三菱UFJモルガン・スタンレー証券とオーストラリア・ニュージーランド銀行の勤務経験を生かし、お金の教室「FP君」を運営。
「お金のルールは学校では学べない」ということを危惧し、家庭で学べる金融教育サービスを展開。お金が理由で不幸になる人をなくすことを目指している。

高年齢雇用継続給付の内容

高年齢雇用継続給付は、60歳以降も働く方の収入の減少をカバーする制度です。本制度の給付金は「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」に分けられます。
 
「高年齢雇用継続基本給付金」は次の場合に支給されます。
 

●60歳以上65歳未満で雇用保険の一般被保険者として働いている
●被保険者であった期間が通算5年以上(※)ある
●毎月の賃金が60歳到達時に比べて75%未満に下がった

 
(※)離職してから雇用保険の基本手当や再就職手当を受け取らずに1年以内に再就職した場合は、通算して被保険者期間を計算するという意味です。
 
「高年齢再就職給付金」は次の場合に支給されます。
 

●60歳でいったん退職し、雇用保険の基本手当を受給した
●60以上65歳未満で再就職し、雇用保険の一般被保険者となった
●1年を超えて継続雇用されることが確実である
●基本手当の支給残日数を100日以上残している
●直前の離職時には被保険者期間が通算5年以上あった
●再就職手当を受け取っていない
●毎月の賃金が60歳到達時に比べて75%未満に下がった

 
いずれの給付金も支給額の計算方法は同じであり、最大で毎月の賃金の15%です。各月の賃金の低下率によって支給率は変わります。
 
高年齢雇用継続給付の支給額=支給対象月に支払われた賃金額×支給率(最大15%)
 
●賃金の低下率と支給率の目安
賃金の低下率(%)=支給対象月に支払われた賃金額÷60歳到達時点の賃金月額×100

 

出典:厚生労働省 「Q&A~高年齢雇用継続給付~」
 
なお、高年齢雇用継続給付の支給限度額は、2021年2月1日時点で36万5055円となっています。これは、毎月の賃金が36万5055円を超えると高年齢雇用継続給付は支給されず、支給される場合は「36万5055円-対象月に支払われた賃金額」で求められた金額が支給額になるということです。
 
一方で、高年齢雇用継続給付の最低限度額は2059円となっており、算式に当てはめて計算した金額がこの金額を下回るときは、給付金は支払われません。
 

支給される期間

高年齢雇用継続給付が支給される期間は、2つの給付金で異なります。
 
高年齢雇用継続基本給付金の支給対象期間は、60歳以降、受給資格を満たした月から65歳になる月までです。
 
一方、高年齢再就職給付金の支給対象期間は、基本手当の支給残日数が200日以上の場合、再就職日の翌日から2年間、残日数が100日以上200日未満の場合は1年間となっており、どちらも65歳になる月で打ち切られます。
 

手続きの方法

高年齢雇用継続給付の支給申請手続きは以下のとおりになります。
 

●高年齢雇用継続給付の場合(※60歳時点で継続雇用されている被保険者のケース)

<支給申請の概要>

提出者:事業主(やむを得ない場合、被保険者本人による提出も可能)
 
届出書類:高年齢雇用継続給付支給申請書(初回の支給申請は「高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書」を使用)、払渡希望金融機関指定届
 
添付書類:雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書、高年齢雇用継続給付受給資格確認票、支給申請書と賃金証明書の記載内容を確認できる書類(賃金台帳、出勤簿、労働者名簿、雇用契約書など)、被保険者の本人確認書類(運転免許証、住民票写し(コピー可))
 
提出期限:初回の支給申請は支給対象の月の初日から4ヶ月以内。2回目以降の支給申請は管轄の公共職業安定所長が指定する支給申請月の支給申請日
 
提出先:事業所の管轄の公共職業安定所(ハローワーク)※電子申請も可能

 

●高年齢再就職給付金の場合

<受給資格確認の概要>

提出者:事業主
 
届出書類:高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書、払渡希望金融機関指定届
 
提出期限:被保険者として雇用されたら雇用保険被保険者資格取得届と一緒にすぐに提出する
 
提出先:事業所の管轄の公共職業安定所(ハローワーク)、※電子申請も可能

 

<支給申請の概要>

提出者:事業主(やむを得ない場合、被保険者本人による提出も可能)
 
届出書類:高年齢雇用継続給付支給申請書
 
添付書類:支給申請書と賃金証明書の記載内容を確認できる書類(賃金台帳、出勤簿、労働者名簿、雇用契約書など)、被保険者の本人確認書類(運転免許証、住民票写し※コピー可)
 
提出期限:初回の支給申請は支給対象の月の初日から4ヶ月以内。2回目以降の支給申請は管轄の公共職業安定所長が指定する支給申請月の支給申請日
 
提出先:事業所の管轄の公共職業安定所(ハローワーク)※電子申請も可

 

60歳以降も仕事をすることが期待されている

60歳を過ぎても働くことは今や当たり前になったとはいえ、60歳以降に賃金が下落している方は多く存在します。少子高齢化により社会を支える働き手が不足する中、高齢者の方の働く意欲を促進するために、高年齢雇用継続給付の制度は存在しているのだと考えられます。
 
出典
厚生労働省 高年齢者雇用安定法改正の概要
厚生労働省 Q&A~高年齢雇用継続給付~
厚生労働省 都道府県労働局 公共職業安定所(ハローワーク)
高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続について

 
執筆者:遠藤功二
1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)CFP(R) MBA(経営学修士)

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