更新日: 2021.06.10 その他老後
有料老人ホームの費用にはどんなものがある? 家賃の支払い方法は?
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
有料老人ホームとは
「食事の提供」「介護」「家事」「健康管理」のいずれかを提供する高齢者施設を有料老人ホームといいます。このうち、「特定施設入居者生活介護」という介護保険サービスを利用できるのが「介護付有料老人ホーム」です。24時間、365日、職員から日常生活上の世話、機能訓練、療養上の世話を受けることができます。
一方、「住宅型有料老人ホーム」では、ホームに併設した事業所や外部の事業所から訪問介護やデイサービスなどがその都度利用できます。ほとんどの有料老人ホームの契約方式は、利用権方式です。入居一時金を支払うことで、介護サービスや居室、共用スペースの終身利用権を得ることができます。なお、この権利は相続できません。
有料老人ホームの費用
有料老人ホームで必要となる費用には、
(1)家賃
(2)管理費
(3)食費
(4)介護費
(5)その他
があります。
管理費は、事務管理部門の人件費、事務費、共有施設等の維持管理費などです。ホームによって管理費の内容が異なりますので、内訳を確認しておくことが大切です。
食費には、食材費のほか、厨房人件費、厨房維持費などが含まれます。そのため、食事をとらなくても毎月一定額を支払う必要がある場合がありますので、ホームに確認しましょう。
介護費について、職員が特定施設として24時間365日、介護保険サービス(定額制)を提供するホームと、自宅と同じように外部の事業者から居宅サービス(出来高払い)を受けるホームとでは、介護サービス利用時の自己負担額に違いがでてきます。
その他の費用には、光熱水費、通信費、通院介助などの生活支援サービス・介護保険外サービス、行事への参加費、おむつ等の介護関連費、医療費などがあります。
サービスの内容はホームにより異なりますので、しっかり確認しておくことが大切です。
家賃の支払い方法
家賃の支払い方法には、次の3通りがあります。
(1)全額前払い(入居一時金)方式
平均余命等を勘案した一定期間分(想定居住期間)の家賃を、入居時に全額一括して支払う方式です。家賃を入居時に一括して支払い、その他の費用は年金で賄うことができるように考えられた仕組みです。
長く住み続けることになった場合でも追加の家賃は必要ありませんが、早期に退去することになった場合、前払い金の一部が返還されない場合がありますので、結果として割高になります。
(2)月払い方式
家賃を毎月利用期間中支払う方式です。
(3)併用方式
入居時に家賃の一部を前払いし、残りを月払いで毎月利用期間中支払う方式です。
前払い方式は、毎月の支払額は月払い方式に比べて安価です。しかし、入居期間によって支払額の総額が違ってきます。また、前払い方式の場合、入居期間に応じて退去時の返還額も違いがでます。契約内容と入居期間を勘案してどちらの方式にするか慎重に検討しましょう。
前払い金(入居一時金)は退去の場合、返還される?
入居一時金には償却期間が定められており、償却期間前に退去した場合には未償却部分が返却されます。ただし、90日以内に退去した場合には、日割り家賃に相当する額を除いた残りの全額が返還されます(90日ルール)。
なお、相続時に返還される場合は、被相続人が負担した部分については相続税の対象になります。
前払い金(入居一時金)の保全措置
有料老人ホームが倒産したとき、2006年4月以降に設置届出されたホームは、前払い金(入居一時金)の保全義務が定められています。銀行や損害保険会社などが500万円を上限に未償却分を支払います。
全国有料老人ホーム協会に加盟しているホームなら、入居者保証制度もあります。ホームが倒産し、かつ、入居者全員の退所が条件でしたが、2020年10月以降の入居者に対して、全員退去の要件を失くして、任意に退去した方も保証の対象となるなどの新制度がスタートしています。入所するホームの保全方法や内容を確認しましょう。
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。