更新日: 2021.06.14 セカンドライフ
年金暮らしで知っておきたいこと。家を住み替えたい場合、どうする?
しかし、こうした施設の利用には敷金などで多額の一時金が必要となり、主な収入を年金に頼っている場合は実際には厳しく、また可能な場合でも預貯金を大きく減らしてしまって後々生じるリスクへの対応力が低下してしまう恐れがあります。
執筆者:菊原浩司(きくはらこうじ)
FPオフィス Conserve&Investment代表
2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級
製造業の品質・コスト・納期管理業務を経験し、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルを重視したコンサルタント業務を行っています。
特に人生で最も高額な買い物である不動産と各種保険は人生の資金計画に大きな影響を与えます。
資金計画やリスク管理の乱れは最終的に老後貧困・老後破たんとして表れます。
独立系ファイナンシャルプランナーとして顧客利益を最優先し、資金計画改善のお手伝いをしていきます。
年金暮らしのときは収支のバランスにより注意が必要
現役時代では、多額の支出に対しても労働によって収入を増やすなどし、家計を立て直す手段や時間がありますが、年金暮らしとなると一定額の収入と預貯金などの現役時代に貯めた資産を活用し、その中でやりくりする必要があります。
このため、預貯金を一度減らしてしまうとその後の回復が難しく、病気などで多額の出費が必要になったときに支出が困難となってしまう恐れもあります。
したがって、年金暮らしを安定的に送るためには、預貯金や株式・有価証券などの現金化しやすい流動資産をできるだけ温存していくことがポイントといえます。
家の住み替えは、マイホームの活用がポイント
家計の資産配分を見ると、多くの場合でマイホームが最も高額な資産となっていますが、不動産は資産の中でも比較的現金化しにくい固定資産に分類されています。
年金暮らしで、多額の支出に備えるには流動資産を温存し、固定資産を有効活用することが望ましいのですが、固定資産は現金化に時間がかかるため、緊急の支出に使用するのには適していません。預貯金などが無くなってからマイホームの活用を考えるのではく、事前に計画を立てて進めていきましょう。
売却だけではない、マイホームの活用の選択肢
マイホームの活用というと、まず思い浮かぶのが売却による現金化です。マイホームを売却し、賃貸住宅やより小サイズの住宅に住み替えることで住宅費を見直すことができるといったメリットがありますが、慣れ親しんだマイホームを手放すには抵抗を感じることも確かです。
そこでマイホームを売却し、そのまま賃貸住宅として利用を続けることができる「リースバック」や、マイホームを担保に融資を受けることができる「リバース・モーゲージ」といったサービスも登場しています。
これらの方法によって生活環境を変えることなく現金収入が得られるますが、売却するよりも調達額が抑えられてしまうというデメリットもありますので、年金暮らしで収入が少ない場合の選択肢のひとつとして慎重に検討してみてはいかがでしょう。
まとめ~介護開始後のマイホームの活用の注意点~
加齢により要介護状態となった場合、介護付き有料老人ホームなどへ転居することも考えられますが、その際には多額の一時金が必要となります。年金暮らしで収入が少ない場合、多額の支出を預貯金などの流動資産で支払ってしまうと、その後病気などで医療費が加算されるなどした場合、生活が立ち行かなくなるリスクがあります。
また、認知症などで後見が開始された場合はマイホームの売却や処分などを行う際に家庭裁判所の許可が必要になり、処分理由や売却金の使途に一定の制限が加えられることになります。
年金暮らしで転居などの大きな支出に対応する際は、流動資産を温存し、マイホームなどの固定資産を活用することが重要ですが、固定資産は現金化に時間がかかるため、万が一の場合に備えて事前に計画を立てておくことをおすすめします。
執筆者:菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表