更新日: 2021.06.25 その他老後

子なし夫婦の年金・老後資金についてFPが解説

子なし夫婦の年金・老後資金についてFPが解説
老後の年金や生活資金について話題になることはあっても、それが子なし夫婦にフォーカスされることはそう多くありません。そこで、今回は子なし夫婦の年金や老後の生活資金について考えていきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

子なし夫婦の年金収入はどれくらい?

令和3年4月分以降の年金額を基準とすると、65歳以降、夫婦が2人で受け取れる年金は下記のようになります(厚生年金は、日本年金機構が示す平均的な収入の場合を例にしています)。
 

令和3年4月以降の年金額(月額)
国民年金(満額) 約13万円
厚生年金(給与が月額換算43.9万円で40年間就業した夫と専業主婦の妻の場合) 約22万円
厚生年金(夫婦共働きでそれぞれの給与が月額換算43.9万円の場合) 約31万円

※日本年金機構 「令和3年4月分からの年金額等について」を基に筆者作成
 
夫婦共働きの場合、ある程度は十分な年金額を得られそうですが、自営業などで夫婦ともに国民年金に加入している場合、年金収入だけでは最低限の生活費を得るのも難しそうであることが分かります。
 

老後の生活費はいくらくらい?

公益財団法人 生命保険文化センターの調査(令和元年度)によれば、老後に日常生活を送る上で最低限必要な費用について、月額20万円から25万円未満と答えた夫婦が一番多く、次いで30万円から40万円と続きました。
 


出典:公益財団法人 生命保険文化センター 「老後の生活費はいくらくらい必要と考える?」
 
さらに、ゆとりある生活を送るための費用としていくら必要かという問いに対しては、月額30万円から35万円未満がトップに、続いて45万円から50万円未満という回答結果となっています。

出典:公益財団法人 生命保険文化センター 「老後の生活費はいくらくらい必要と考える?」
 
子なし夫婦については現役の間、夫婦のライフスタイルを大切にしており、老後もそのスタイルを続けていきたいと考えるケースも多いことから、最低限の日常生活費についてはゆとりある老後生活を送る費用と同等として、少なくとも30万円から35万円、余裕を持った場合は45万円から50万円程度はかかると考えて準備しておく必要があるでしょう。
 
どちらにせよ、日本年金機構のいう一般的な収入のある子なし夫婦が、老後に現役世代(夫婦それぞれ月収43.9万円程度)と同様の生活を送るのは公的年金だけでは難しそうです。
 

子なし夫婦の老後資金は1億円以上必要となることも

では、先に紹介したように最低限の日常生活費に月30万円から35万円ほど用意すればいいかといわれれば、そうではありません。
 
老後は日常の生活費以外にも、予想外の病気やケガで多額の医療費が必要となったり、加齢によって介護費用が必要になることもあるのです。子がある夫婦であれば、子や孫に支援してもらえるかもしれませんが、子なし夫婦ではそうはいきません。
 
こうした老後にかかる費用の中で、特に考えておきたいのが介護費用です。
 
健康寿命が延び、70歳や80歳を過ぎても元気な方が多くなったとはいえ、やはり若いころに比べると老いは否めないもの。また、これまで元気だった方が少しのケガで一気に介護を必要とする状況まで弱ることも珍しくありません。
 
公益財団法人 生命保険文化センターが過去3年間に介護経験のある方を対象に行った調査(平成30年度)では、介護期間の平均は4年7ヶ月という結果になりました。
 


出典:公益財団法人生命保険文化センター 「介護にはどれくらいの年数・費用がかかる?」
 
介護費用については一時的な費用で平均69万円、そこに毎月の費用で平均7.8万円が必要だったというデータも出ています。
 

出典:公益財団法人 生命保険文化センター 「介護にはどれくらいの年数・費用がかかる?」
 
この結果から、少なくとも子なし夫婦においては1人分の介護費(一時金と4年7ヶ月分の月額費用)として500万円程度を用意したいところです。
 
夫婦がともに65歳で現役を引退し、月額35万円の生活費で90歳まで生きると仮定とした場合、どちらか1人が平均的な状況で介護を必要とする状況になったとき、老後資金に必要な金額は公的年金を含め約1億1000万円という試算ができるのです。
 

子なし夫婦においては万全な老後の準備を

子なし夫婦は子の養育費が発生しない分、現役時代は自由に使えるお金が多くなりやすいです。一方で、何の準備もなく老後を迎えてしまうと、収入が落ち込むことで老後破産となってしまう恐れもあります。
 
子なし夫婦においては、今回の試算による老後資金(1億1000万円)も1つの目安になると考え、老後も夫婦で理想のライフプランが実現できるよう、現役時代の早いうちから準備をしておくようにしてください。
 
出典
日本年金機構 令和3年4月分からの年金額等について
公益財団法人 生命保険文化センター 老後の生活費はいくらくらい必要と考える?
公益財団法人 生命保険文化センター 介護にはどれくらいの年数・費用がかかる?
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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