更新日: 2021.06.28 老後

親の預金が引き出せない! 金融機関は認知症家族にきびしい?

執筆者 : 黒木達也 / 監修 : 中嶋正廣

親の預金が引き出せない! 金融機関は認知症家族にきびしい?
高齢者は貯蓄への愛着もあり、多くの人が金融機関に「定期預金」や「投資信託」などの口座を保有しています。
 
ところが本人が元気なときは良いのですが、体力が落ち認知症や歩行困難などの症状が表れたため、家族が代わりに解約しようとしても、「本人が来ないと払い戻せません」との返答が返ってきます。
 
預金者と金融機関との間で、トラブルになるケースも増えています。
 
黒木達也

執筆者:

執筆者:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

中嶋正廣

監修:

監修:中嶋正廣(なかじま まさひろ)

行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。

長野県松本市在住。

黒木達也

執筆者:

執筆者:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

中嶋正廣

執筆者:

監修:中嶋正廣(なかじま まさひろ)

行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。

長野県松本市在住。

親の介護費用を支払う目的でも

銀行や証券会社など金融機関の対応も一律ではありませんが、親の認知機能の低下や高度の障害のため介護施設に入居しており、その支払代金に充てるため、親の口座を解約しようとしても、なかなかできません。
 
まず言われるのが、「本人が来店できないか?」というセリフです。実際には、身体的に動くことができない、コロナ禍で外出自体ができない、といった状態でも聞き入れてもらえません。もちろん金融機関の側から出向き、本人の意思確認をすることもありません。
 
例えば、子どもなどの親族が定期預金の解約を申し出た際に、金融機関が受け付けない主な理由が、「本人の同意が取れない」「本人の不利益になることも予想される」という考えです。
 
預金の解約ができないために、介護に必要な費用を捻出するメドが立たず、子どもが借金をして高齢の親の面倒をみるケースも出ています。
 
例えば、親が入居する「老人ホームの費用を支払う」といった、明確な使用目的がある場合でさえも、なかなか解約には応じてもらえません。
 
解約に応じたことで、他の親族からクレームを受ける、解約した本人が自分のために流用する可能性がある、といった不安を理由にあげて、応じてもらえないケースが多くなっています。
 
金融機関により多少異なりますが、大手の金融機関ほど厳しい対応をする傾向が見られます。
 

定期預金や投資信託が凍結状態に

定期預金や投資信託など、特に対面販売の金融商品の解約が難しそうです。
 
金融庁の指示に基づき、銀行協会は2021年2月に、医療費や生活費などの支払いに限っては、親族の預金引き出しを認める指針を、加盟する金融機関に通達しました。
 
しかし、多くの金融機関が、その方針に沿って預金者本位で対応しているわけではありません。「具体的な対応策はこれから」と、金融機関が試行錯誤しているようです。
 
以前から厳しい対応をしてきた大手の銀行でも、代理人制度などを設け対応しているところもありますが、まだ十分ではありません。証券会社などでも、対面で販売した投資信託などの解約は容易ではありません。
 
認知症の人は今後ますます増えることは確実で、さらに認知症でなくても身体的自由が利かず十分な会話ができない人も増えます。
 
特に高齢世代には、「定期預金なら安心できる」「毎月分配のある投資信託だから」といった理由で購入した人も多く、こうした人たちが、最も解約しづらくなっているのです。
 
確かに民法の規定に従えば、意思能力のない人との取引行為は「無効」と判断されるため、明らかに認知症と判断されれば、それを理由に金融機関は口座を凍結する根拠になります。
 
金融機関の側でも、実際に「悪意をもった親族がいた」「解約に応じたくても当事者の意思確認ができない」といった声も出ています。そのため、解約することができず、親の死後、相続財産としてしか認定されない資金がかなり存在すると思われます。
 

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高齢者を抱える家族ができる対応策

銀行協会の指針に基づき、多くの金融機関が介護費用などの支払いに対し、柔軟に対応するようになるには、もう少し時間がかかりそうです。
 
将来認知症になることを想定して、成年後見人制度や家族信託制度といった仕組みを利用することは、確実な解決策の1つです。しかし、まだ制度の知名度が低く広く浸透していないことや、それなりの費用がかかることなどの理由で、あまり普及していません。
 
高齢の家族を抱える人にとって、何らかの自衛策が必要になります。親が亡くなるまで、「どのような金融資産を保有していたか知らなかった」では済まされないのです。
 
まず親が健康なうちに、金融資産をどの程度保有し、どう運用しているかを聞き出し、相続人同士が情報を共有し、できる対策を進めておくことです。親がこの仕組みを受け入れるような環境づくりも必要です。
 
親の保有資産を知ることができれば、早めの対策ができます。親が金融機関に勧められて投資信託などを購入した事実を、子どもには内緒にしていたということは、避けなければなりません。
 
親の金融資産を確認したうえで、まず株式や投資信託など証券会社と取引している投資型の金融商品は、ある程度減らす努力を依頼しましょう。
 
取引方法も、親の同意を得て、対面方式での取引ではなく、ネットを利用した資金移動が可能な方式に変更しましょう。
 
株式や投資信託などをネットで解約し、証券会社のカードで引き出せるようにしておけば、親の判断能力が落ちた際には、家族が代わりに金融商品をネットで解約し、資金の引き出しができます。
 
銀行では、定期預金や投資信託に代表される対面販売の商品には注意が必要です。銀行の窓口で投資信託などを購入しているときは、親を同行して解約しておくのが無難です。
 
また高齢者の中には定期預金を持っている方が多くいらっしゃいますが、認知症となり判断力が衰えると、簡単に解約ができない代表的商品です。
 
可能なかぎり定期預金は普通預金に移管し、親名義のキャッシュカードで引き出せるように変更しておきましょう。
 
親が認知症になったとしても、親と暗証番号を共有していれば、親に代わってキャッシュカードで引き出し、親の介護費用や生活費に充てることができます。
 
また、仮に親が亡くなった直後なら、それを引き出し葬儀費用などに利用することも可能です。
 
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
 
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者