有料老人ホームの基礎知識! どんな種類がある? 利用料は前払いなの?
配信日: 2021.08.03
執筆者:仁木康尋(にき やすひろ)
日本FP協会CFP(R)認定者、国家資格キャリアコンサルタント
人事部門で給与・社会保険、採用、労務、制度設計を担当、現在は人材会社のコンサルトとして様々な方のキャリア支援を行う。キャリア構築とファイナンシャル・プランの関係性を大切にしている。
シニア向け施設の類型
まずはシニア向け施設にはどのような種類があるか、全体像をつかんでおきましょう。運営主体の違いにより「公的施設」と「民間施設」に分類され、さらに「要介護者向け」と「自立したシニア向け」とに分類されます。
表にまとめると以下のとおりです。
民間の有料老人ホームは3タイプ
民間が運営主体となっている有料老人ホームは、「介護付」「住宅型」「健康型」の3つのタイプに分類されます。
【介護付有料老人ホーム】
介護サービスが付いた高齢者向けの居住施設です。都道府県から「特定施設入居者生活介護の指定」を受けている有料老人ホームだけが「介護付」と表示できることになっています。
【住宅型有料老人ホーム】
施設による介護サービスはつかず、生活支援などのサービスが付いた高齢者向けの居住施設です。介護が必要になった場合には、地域の訪問介護等の介護サービスを利用することになります。
当面は介護サービスまでは必要なく、生活支援サービスと安心を求める方に適しています。
【健康型有料老人ホーム】
介護等の必要がなく、自立したシニア向けの食事などのサービスが付いた高齢者向けの居住施設です。介護が必要になった場合には、契約を解除し退去しなければなりません。
費用の内訳
【入居一時金(前払い金)】
入居時に払う費用です。金額は施設によってさまざまです。入居一時金は一定期間で償却することになっています。償却期間途中に退去することになった場合の未償却分は返還されるのが一般的です。
※「一時金」:家賃やサービス費用の前払いによって構成されるという性格から、「前払い金」と表示されるようになってきています。
【月額利用料】
家賃、管理費、食費、介護費(介護保険自己負担分)※1などが含まれます。金額の相場は施設によりさまざまです。
※1:「住宅型有料老人ホーム」の場合は、外部サービスとの別契約になりますのでここには含まれず別途支払います。
【その他費用】
通信費、消耗品費(おむつ代など)、嗜好(しこう)品などが該当します。
契約方式
有料老人ホームの契約は、「利用権方式」「建物賃貸借方式」「終身建物賃貸借方式」があり、施設によって異なりますので注意が必要です。
【利用権方式】
有料老人ホームで多く採用されている方式です。部屋や共有スペースなどを利用する契約と、介護や生活支援などのサービスを受ける契約が一体になっているものです。入居者が亡くなると権利は消失します。家族などが相続権を得ることはできません。
【建物賃貸借方式】
賃貸住宅における居住の契約形態で、介護や生活支援などのサービスを受ける権利は別に契約します。
この方式は賃貸住宅のように部屋や共有スペースなどを利用するための住む権利の契約で、借地借家法により入居者の権利は守られます。入居者が亡くなった場合、住む権利は相続対象となります。
【終身建物賃貸借方式】
建物賃貸借方式の特例的なタイプで、入居者の死亡をもって契約が終了します。
利用料の支払い方式
【全額前払い方式】
終身にわたって支払うことになる家賃やサービス費用の全部を、前払い金として一括で支払う方式です。
【一部前払い・一部月払い方式】
終身にわたって支払うことになる家賃やサービス費用の一部を前払いとして一括で支払い、その他は月払いする方式です。
【月払い方式】
前払い金がなく月払いする方式です。
(*)「前払い方式」:従来は「一時金方式」と表示されていましたが、家賃やサービス費用の前払いによって構成されるという性格から「前払い方式」と表示されるようになってきています。
介護サービス体制
【有料老人ホームの職員が提供するタイプ】
介護が必要となった場合、有料老人ホームが提供する特定施設入居者生活介護サービスを利用できます。
介護サービスは有料老人ホームの職員が提供します。パンフレット等には「※※県(市)指定介護保険特定施設(一般型特定施設)」と表示されます。介護にかかわる職員体制は、要介護者3人に対して職員1が基準になっています。
【委託先が提供するタイプ】
介護が必要となった場合、有料老人ホームが提供する特定施設入居者生活介護サービスを利用することができます。
有料老人ホームの職員が安否確認や計画作成等を実施し、介護サービスは委託先の介護サービス事業所が提供します。パンフレット等には「※※県指定介護保険特定施設(外部サービス利用型特定施設)」と表示されます。
【在宅サービスを利用するタイプ】
介護が必要となった場合、介護保険の在宅サービスを利用するホームです。パンフレット等には「在宅サービス利用可」と表示されます。
まとめ
以上、シニア向け施設の全体像、そして民間の有料老人ホームを検討するときに必要になる基本的な知識を紹介しました。最後にチェックポイントをまとめておきます。重要事項説明書でも確認ができます。
1.類型の中のどれに分類されるのか
2.提供されるサービスの内容と立地
3.介護サービスの体制
4.費用
5.契約方式
6.利用料の支払い方式
7.前払い方式の場合にはその内訳と返還金の有無、返還金の算定方式およびその支払時期等
(参考・引用)
厚生労働省「有料老人ホームの設置運営標準指導指針について」
別添1:有料老人ホームの設置運営標準指導指針について[PDF形式:257KB]
別添2:重要事項説明書[PDF形式:332KB]
別添3:有料老人ホームの類型[PDF形式:100KB]
厚生労働省「有料老人ホームの概要」
執筆者:仁木康尋
日本FP協会CFP(R)認定者、国家資格キャリアコンサルタント